第11話

数日後私はまた図書館を訪れた。読み終わった本を片手に持って。ただ図書室に返すだけのつもりだった。元々読書になんてキャラじゃないし。


そしたらまた横顔イケメンがいた。怜は講義と講義の間が空いてると十中八九ここに来てるし、一年生のときは私と怜はほぼ同じ講義取ってたから当然だったんだけど。


「これ、続編。気になったら読んでみて」


渡された一冊の本。言いたいことだけ勝手に言って後は無反応。めっちゃくちゃ自己中みたいな行動だったな、今思えば。


けどターニングポイントはここだ。ここで私は沼に一歩入ってしまったのかのしれない。


だって、続編を持っていつ来るか分からない私を待っていたなんて少しは期待してもいいじゃん?私にちょっと好意があるのかなっみたいな。


怜にとっては何の意味も持たない行動だったみたいだけど。怜はああ見えても気分屋って今なら分かるんだけどね。


それから私は図書室に通うようになっていった。本なんて持っていなくても怜がいれば十分なだったから。


後で知った彼の名前は『怜』


彼に怜なんて名前は似合わない。

冷たくなんてないしただちょっと感情の出し方が下手くそなだけ。だって陽キャは空気とか感情を読むのがうまいからね!


冷たくないのはマジの本当。たしかに彼は氷かもしれない。けど氷みたいに触れてみれば溶けるように感情を見せてくれるようになるの。ただのシャイボーイってこと!つつらみたいに誰かを傷つけることもないし。


彼の心の芯まで私は溶かせるまで待つ。私の体温で心臓で好意で胸に包み込んで溶かしていくの。氷の味を味わいながら。


それが違う人に溶かされていたなんてほんと笑えるよね。


私の体温はあの女より怜を深くまで溶かせるの?


私は怜をあの女より大きな愛で包み込めるの?


私は勝てるの?


図書室で見せてくれた怜の感情があの女に潰されていく。私の大切な思い出だったはずなのに幽霊みたいにあの女が這い出てくる。お前はいらない、必要なのは怜だけなのに。


ねぇ、怜?怜はあいつの唇を知ってるの?温度は?味は?


ねぇ、怜!?体を重ねたの?興奮した?気持ちよかった?


・・・怜、好き。


怜の目、匂い、仕草。全部好きなの。近くにいるだけで十分だったのに。好きで怜が埋め尽くされてたのにな・・・。


柔軟剤はあいつと同じ?シャンプーは?服は誰が選んだの?もしかしてあいつの好みだったりするの?


嫌いになる準備だってできた。


もう近寄らない。図書館にだって行かない。本を読むなんてキャラ違い。


これで最後だから、マジで最後だから。


ささいな願いみたいなもの。


「怜、ご飯行かない?」


「・・・いいよ」


スマホの電源を落として怜は答えた。

















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