第10話

※周視点


私は陽キャラだ。


陽気なキャラ、陽気キャラの略語。

外交的で明るく人見知りをしない。もしくはスクールカースト上位に属する人たちの事を指す言葉はとして使われる。


意味はこんな感じ。


そう、私は陽キャラだ。笑いが絶えず雰囲気をが沈むことなんてなく無限に動きが続ける。遊びの誘いは全て乗り、バイトの稼ぎもすぐ溶かす。


そんな世界。


私だって分かんない。


その世界に疲れたのか、呆れたのかはたまた、怖くなったのか。


木綿で首を絞められるように息詰まり、声はか細く、気分は削がれていく。


アレルギーみたいだ。


そう自覚した時、心に穴があいた。


自分の世界に疑問をを持つことなんてなかったのに。


一滴の墨が私の心にに広がって崩れて、穴になったの。


穴を埋めたくて、癒したくて頑張ったんだよ、いちおう。川辺でバーベキューをしたり、そこで一泊して駄弁りまくったり。


つらかっただけで何も解決しなかったけど。苦しい先に必ず何かあるわけじゃないんだね。ちょっと漫画の見すぎだったみたい。恥ずかしいな、もう!


彼氏も作った。友達としては性格も顔を良くて優良物件だった。彼氏を作るのはたしか一年ぶりで友達には驚かれたっけ。


水族館とか遊園地とかベタな所も行って手繋いで綺麗な景色も見た。当然、男女で恋人だもん何回も体を交わした。人肌の温もりは私の不安を加速させていくだけだった。


これだけしても穴は埋まらない。


人と一緒にいたくなかった。無邪気に話しかけてくる奴らが憎くなってくる。あの能天気さが目についてくると止まらない。嫌なところがいっぱい見つかっていく。


何の当てもなく大学内を彷徨う。知らないところのほうがいい。


そして、自分も嫌いになってく。こんなに自分って嫌な人間なんだと、性格が悪いって自覚はしていた気がするんだけど。いつまでも付き合っていけばいい?こんな自分と自己嫌悪と。


図書館に入ったのはただの気まぐれ。いつもの自分とは違うことをしたかっただけ。


怜がそこにいたのは必然。


横顔からでも分かる十分な美貌。その顔を真っ正面に向けられなかった。


文字列を見るだけで理解はせず、本棚たちを蛇のように歩いていく。本を見たかったわけじゃなかったから。


「ミステリーが好きなんですか?」


引き返そうか迷っていた時いきなり声をかけられた。さっきの横顔イケメン。本棚の上にはミステリー特集と書かれている。


私を見下ろす何の感情も持っていない冷徹な目。


彼は私の隣でいきなりしゃがみこんだ。 動物的本能からびくっと警戒する私に対して彼は自分の本を本棚にしまった。


何とも気まずい状況を崩したのは怜の方からだった。


「これとかどう?」


怜は本を差し出してくる。現代文とか化学とかを思い出させる分厚い本。題名も熟語だけで難しそうだ。ははっ、と苦笑いするしかなかった。


「これにします!」


絵柄も良く、題名も事件手帳と書いてあって王道の香りがする。


怜は頷いてまた一つ本を持って立ち去っていった。


彼の目には喜び、安堵の感情が宿っていた。私の映像では彼の瞳は柔らかく私を包み込むように見ていた。





















































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