第4話
※悠斗視点
俺はしがない苦学生、悠斗だ。
バイトを二つ掛け持ちし、家賃以外の生活費は全部自分で賄ってる。俺ってえらい。
この後もバイトがしっかり入ってる。割のいい家庭教師のバイトのほうだ。かわいいJKとかを担当できれば、法に触れかねない禁断の恋も始まるかもしれないが簡単には当たってくれない。
生意気な短髪の男どもばっかだ。たぶん、かわいい女にはそれに見合った彼氏もいるんだろうけど。ハンカチ噛み切りたくなってきた。
まぁ、そんな俺だが想い人がいる。
恥ずかしながら一目惚れってやつだ。惚れちまったもんはしょうがない。自分の心に嘘はつけないってことよ。
澪さん。この学科、いや学部一有名な人でもある。
その理由はいくつかあるが、俺が一目惚れしたのも納得の美貌だ。人間の奥底を刺激する具現化された美、顔のすべてが黄金比でできていると思わせられる。白磁を思わせる白い肌、鼻筋は一点を見つめるかのように通り、耳の曲線すらいつまでも眺めてられる。
魔性だ。美しさとは人間が本能で求めるものとは魔性だ。それがどんなに清廉に見えても裏には泥沼が待っている。魅入られたやつがどれだけいるかなんて想像に難くない。一緒に入る同士であり否定も同情もしない。ただ必然だったと共感しあうだけだ。
ほら、もう沼に入り込んでいる。彼女に底はない。
きっと彼女が美貌だけだったら脳裏にこびりついて離れない光はきっと跡形もなく消え去っていった。けれども澪は違かった。天は彼女に一物もニ物も与えていた。
家は会社を経営し娘、イコール澪にマンションの一室を買い与えることが簡単にできるほどの裕福な家庭だ。きっと彼女の静謐で貞淑な姿は庭付きで大型犬のいる家で育ってできたんだろう。
そして、この大学の首席合格者だ。決してこの大学の偏差値は低くない。むしろ国公立大でその中でも高く、合格したら手放しで褒められるくらいには頭がいい。その主席合格は将来のずっと続くステータスだ。
銀色に輝く三日月を思わせるその横顔は今日はうつむきがちだ。彼女の顔を見られるだけでラッキーデーへと変わるが笑顔のほうがいいに決まってる。想い人ならなおさらだ。
「何を見てるの?」
「えっ!」
画面へと光が吸い込まれる最中にパチっと音を立ててスマホカバーをした。そんなに焦らなくてもよくないか。一つ一つの仕草だって気になってしまう。男心が繊細なんよ。
澪は講義が終わってもなお下を俯きスマホを見ていた。ゾロゾロと蟻の行列のようにほかの学生は扉から出ていく。
「バレてた?」
「当然、バレてた」
そのプルプルな唇から舌でも出てきそうだ。・・・やってもらってもいいですけど。ここまで澪がスマホに熱中しているのは初めてだ。
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