7
「う……」
突然、ユウトがこめかみを右手で押さえた。そしてそのまま両膝を床に付けてうなだれる。
「どうしたの?」
「わからない……けど、なんか、クラクラするんだ……」
そう言うユウトの顔は真っ青に変わっていた。心なしか呼吸も荒くなっている。
そうか……やっぱり、急に体が大きくなった負担が、彼に押し寄せているんだ……
「ごめん。元の世界に帰りな、ユウト」
あたしは言ってしまった。
「やっぱあんたがこの世界に居続けるのは無理があるんだよ。ほら、その鏡台から自分の世界に戻りなよ。肩、貸してやるから」
「……ありがとう」
あたしは彼の右手を自分の肩に回して立ち上がる。彼の重み、ぬくもりが伝わる。
本当はもっと一緒にいたかった。だけど、文字通り、あたしと彼は住む世界が違うんだ……この気持ち、絶対に言えない……
「ね、あおい……」と、ユウト。
「無理して喋らなくていいよ」
「ううん。これだけは言わせて」
「なんだ?」
「僕、きっとまた、会いに来るからさ……絶対に……だから、その時は……」
嬉しかった。彼もあたしと同じ気持ちだったんだ……
「分かった。期待しないで待ってるから」
「……ありがとう」
ユウトはそう言って、笑った。あたしは泣きそうだった。
「ほら、鏡台だ。じゃあな」
「うん。ありがとう……それじゃ、またね」
「ああ、またな」
這うようにして、ユウトは鏡台の向こうに消えていった。
だけど、それっきり、ユウトはあたしの想像にも現れなくなってしまった。
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