6

 ユウトはあたしのリクエストに応えて、次々にポーズを変えてくれた。


 それにしても、見事な肉体だ。惚れ惚れしてしまう。


 鉛筆をスケブの上に走らせながら、あたしはユウトの体に見とれていた。


 いつしか、時計の針は0時を回っていた。


「こんなもんかな。よし、終わり。ユウト、協力ありがとう」


 あたしはユウトに笑いかける。


「そんな……いいって。大したことしてないし」


「いや、大したことだよ。普段、男の裸の上半身なんか見る機会全くないからさ」


「あおい……彼氏、いないのか」


 クリティカルヒット!


「う、う、うるせえな! だからどうだってんだよ!」


「いや、結構美人なのに、いないのかな、と思ってさ」


 え……?


 あたし、美人って言われた……?


 ヤバい。顔が赤くなっちまう。


 だけど……実は、あたしにも自覚はあった。


 自分でも割と整った顔立ちだと思う。実際、今まで三人の男に告られた。その内の二人とは、あたしもOKして付き合った……のだが……


 深い付き合いになる前に、あたしの言動とマンガ描きっていうオタク趣味にドン引きされて……それっきりだ。


 でも……ユウトは、昔からあたしの男言葉になじんでいた。それに……マンガ描きにも理解を示してくれそうだ……


「そういうユウトは……どうなんだよ。彼女とか……いるのか?」


「彼女はいないけど……好きな人はいる。片思いだけど」


 いるのかよ……


「でも、その子には彼氏がいるんだ。だから……僕は……」


「好きだったら、奪っちまえばいいじゃねえか」


「僕がそんなことが出来るような人間だと思う?」


「……思えない。でもさ」


「でも?」


「あたしは……ユウトのそういうとこ……嫌いじゃない……」


「……」


 ユウトは顔を赤くして下を向いてしまった。


 あ……


 なに、この甘酸っぱい雰囲気……


 しかも、今気づいた。


 あたしとユウト、こんな真夜中に、部屋で、二人っきりだ……


 それに、ユウト、上半身裸なんだけど……


 ……。


 ユウト、あたしのこと……美人って、言ってくれたよね……


 あたしも……ユウトなら……

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