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あたしが帰宅し自分の部屋に戻っても、相変わらずあたしには「ユウト」が見えていた。
「あんたさあ、何で今さら出てくんのよ」
あたしが「ユウト」に問いかけると、「彼」はキョトンとした顔つきになる。
『え、あおいが僕を呼んだんじゃないの?』
……へ?
「べ、別に……あたしは……あんたなんか呼んだ覚えないんだけど……」
なんだかツンデレぽくなってしまった。
『でもさ……あおい、なんだか、辛そうだよ』
「!」
思わずあたしは「ユウト」を見つめ返す。
『あおいはさ、なんか辛いこととか悲しいことがあると、いつも僕を呼んだよね。で、いつも僕が慰めてた。覚えてる?』
……覚えてるよ。そうか……そういうことか……
新人賞落選がかなりショックだったんだ。そりゃそうだ。最高傑作って思ってた作品が、箸にも棒にもかからなかったんだもんな……
『ねえ、あおい。何が辛いの? 僕で良かったら、話、聴くけど……』
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『でもさ、すごいよ、あおい』
あたしの話を聴き終わると、「ユウト」はそう言いながら微笑む。
「何がだよ? あたしは落選したんだぞ? 何にもすごくなんかねえよ」
『だって、将来マンガ家になりたいんだろ? そのためにずっとマンガ描き続けてきたんだろ? 僕にはそういうはっきりした夢はないからさ。目標に向かって真っ直ぐ突き進んでいる姿を見ると……やっぱすごいと思う』
「結果が出てればな」あたしは吐き捨てるように言う。「しかも今回で応募したの3度目なんだ。最高傑作だった、って手応えがあったのに……ダメだったんだ……」
『ねえ、あおい』
「なに?」
『そのマンガ、僕に見せてくれる?』
「え、ええ?」
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