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僕の顔は彼女の深い胸の谷間に埋もれていた。石けんの香り。Tシャツの上からでも、あたたかくて柔らかい感触が伝わってくる。
「泣きな。泣きたいんだろ。胸、貸してやるからさ。ちょうどいいことに、今、あたし史上最大のサイズになってっから」
あおいの声は、優しかった。
「お、おい……」それ以上何も言えず、僕はただ、狼狽するだけだった。
「ほら。遠慮しなくていい。泣いていいんだぞ。ただし……それだけだ。それ以上のことをしようとしたら……分かってるな?」
僕は小さくうなずく。
「よし。それじゃ、このまま……泣いちまえ……」
しかし、そう言われると……なんか、情けなくて、恥ずかしい気持ちになってしまい、かえって泣けなくなってしまう……が……
心が弱っているときに、人のぬくもりを直接感じられることが、こんなにありがたいものだったなんて……なんだろう、癒やされるというか、すごく安心するような……
いつの間にか、嗚咽が込み上げてきた。
「う……ううっ……」
そのまま、彼女の胸で僕は泣き続けた。
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気がつくと、窓から朝日が差し込んでいた。
あおいは姿を消していた。
「あおい……?」
部屋の中の、どこにもいない。
まさか……全て夢だったのか?
だが、ベッドの上を見た瞬間、僕は愕然とする。
「!」
そこに置かれていたのは、きちんと畳まれた僕のジャージとTシャツだった……
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その後、美咲にはきっちりプリンを奢らされた。あいつもあおいを見たことを覚えていた。やはりあの時、彼女は本当に実在したようだ。
だけど……
それからはもう、あおいは僕の想像の中にも現れなくなってしまった。
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