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 結局ベッドはあおいが使うことになり、僕は部屋の床に座布団を並べてそこで寝ることにした。あおいは「別にあたしが床で寝てもいいけど」と言ってくれたのだが、買物から帰って来たとき、彼女は少し息切れしていて辛そうだったのだ。やはり、いきなり大きくなった体がそれなりに負担になってるのかもしれない。とすれば、彼女がベッドで寝るべきだろう。


 互いに「おやすみ」を言って、僕は部屋の灯りを消し、並べた座布団に体を伸ばして毛布をその上に被せる。


 「……」


 眠れなかった。もちろん、寝床が変わったことも大きい。あおいのことも気になる。だけど……


 こうして自分を見つめなおす時間が出来てしまうと、どうしても、瀬川さんの面影が脳裏に蘇ってきてしまう。


 1年の時から同じクラスだった。一目見ただけで僕は心を奪われた。しかも彼女はルックスがいいだけじゃなく、すごく優秀で、数学のテストはいつも百点。さらに明るくて気さくで、いつもたくさんの友だちに囲まれてて……


 もちろんクラスメイトだから僕も彼女と挨拶くらいはするし、目が合っただけでも嬉しかった。でも、彼女と付き合うなんて絶対無理だと思っていた。


 だけど……そんな彼女を射止めたのは、僕とそんなに変わらない平凡な男子の、平良だ。そう考えると……僕も頑張っていれば……なんて思ってしまう。つくづく平良が羨ましいし、妬ましい。


 やっぱり、思ったより僕は彼女のこと……好きだったんだな……悔しくて、悲しくて……たまらない……


 ふと、ベッドの上であおいが起き上がる気配があった。そして彼女は立ち上がる。トイレかな、と思ったのだが……


 いきなり、彼女は僕の真横に腰を下ろし、そのまま身を横たえた。


「ユウト……辛いんだろ?」


「!」


 彼女の顔が、目の前にあった。


「ユウトはいつもそうだ。何か悲しいことや辛いことがあると、あたしを呼び出す。昔からそうだったろ? そして、いつもあたしが慰めてやってたよな」


「……」


 彼女の言う通りだった。


「瀬川……って言ったな。あの子が好きなんだろ? 確かに綺麗な子だったな。だけど彼氏がいる。あんたは振られたんだ」


「違うよ」僕は首を横に振る。「振られてもいない。告白もしてなかったから」


「そうか。でも……本当に、好きだったんだよな」


「うるさいな……」


 少し涙声になってしまった。


「ほら、ユウト」


「え……!」


 その後起こったことを理解するまでに、僕はかなり時間がかかった気がする。


 一気に毛布がはぎ取られた、かと思うと、僕は彼女に抱きすくめられていた。


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