第6話 パワースポット(お題『マフラー』)
山道を歩いていたら、
「何だい、あんたもかい。」
「あんたもって、いったい、どういう事です。」
「あれだよ、あれ。近頃はやりの。えーと、何て言ったかな。タワースポーツ。」
「もしかして、パワースポットですか。」
「そうそう、それだよ、それ。まったく迷惑なんだよ。あんた、もしそうだったら勘弁しとくれ。」
爺さんは洗濯物を入れるような大きな袋を手に提げていた。
「どういう話を聞いたか知らんが、あそこは何もないんだ。こんなもん結んだって、願いなんか叶うもんかね。おい。」
俺は爺さんが止めるのを振り切り、あわてて駆け出した。山道を登り、記憶をたどり、それらしき場所にたどり着いた。
爺さんの袋の中身は大量のマフラーだった。あちこちの枝に鈴なりに結ばれていたマフラーはどこにもなかった。無論、俺のもだ。どうやら、爺さんが全部回収したらしい。
数日前、ここが「恋愛成就のパワースポット」として写真入りで拡散されているのに気づいて、慌てて来て見ればこれだ。
俺はがっくりと肩を落とした。埋めておいた金塊の行方は永遠に分からなくなった。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます