第14話

バンシーからもらっていた画像と同じガイノイドが何体も映っている。


もちろん女性型のアンドロイドとして売られているヒューマノイドなのだから、バンシーの捜しているガイノイドと同じ型がいてもおかしくはない。


だが、まるで軍隊の行進のように統制のとれた動きのガイノイドたちを見て、ランレイはただ混乱するしかなかった。


そのガイノイドたちの格好もあったのだろう。


バンシーに見せてもらった画像では、きらびやかなドレス姿だったガイノイド。


だが、今彼女たちが見ているのは、顔以外の人工皮膚を取った剥き出しの機械の体をしていていた。


「こんなの意味がわからないよ。それに、これだけの集団が街を歩いていたら、誰か怪しむと思うんだけど」


「ああ、どうもそのガイノイドたちは人目を避けているみたいでな。それと何故かはわかんねえけど、アタシが調べていくうちに数もドンドン増えていったんだ」


シェンリアが言うには、最初にガイノイドを見つけたときは五体くらいだったそうだ。


それが次第に集まり始め、今のような集団になったらしい。


「シェンリアにはなんでガイノイドたちが集まっているかわからないの?」


「わかるわけねえだろ。ただ……」


「ただ……なに?」


「そいつらの目的地はわかってる」


それからシェンリアは、自分が計算したガイノイドたちの道筋を話し始めた。


ガイノイドたちは同型の仲間がすべてそろってから、ローフロアでもう破棄されている工場を探してさまよっていると言う。


だが、見つけても次へ次へと工場をまた探すので目的地はわかっても、その目的まではわからない。


「アタシの役目はここまで。あとはお前の仕事だ。さあ、早く報酬をよこせよ」


メイユウはダルそうにベッドをゴソゴソとし始めると、そこから瓶詰めの粗挽きマスタードを出した。


そして、出した四個の瓶詰めをシェンリアへと手渡す。


「どこに隠してんだよッ!?」


「いやだってあれでしょ。いつでも不法侵入できる人間との取引なんだから、一番安全なところに隠したほうが良いに決まっているじゃん」


「だからってお前が寝ている体の下ってのは保存方法としてどうなんだッ!?」


怒鳴るシェンリアにメイユウは、別に温めていたわけではないし、ましてや開封もしていないのだから問題はないと返事をした。


気持ちの問題だと言葉を返したシェンリアは、粗挽きマスタードを受け取るとさっさと出ていこうとする。


「ありがとうね、シェンリア」


「お~つ、マスタード女」


ランレイの快活な声とメイユウのやる気のない声を聞いたシェンリアは、表情を歪めてその場を去った。


「なんにしてもガイノイドのストライキってやつかねぇ。機械が文句いうくらい働かせるなんて。あ~イヤだイヤだ。わたしは断固労働反対。それでも賃金は多く、自分の時間はより多く」


「さりげなく怠け者宣言しないでくれる……」


ガイノイドの集団を見たメイユウがようやく口を出し始めたかと思えば、やはりランレイを呆れさせるだけであった。


「はぁ~ガイノイドの集団といい、メイユウといい。あたし、頭が痛くなって来たよぉ」


「なら一生機械猫でいいんだね?」


メイユウのその一言に――。


ランレイは今にも泣きそうな顔をして睨み返した。


「意地悪だなんて人聞きが悪い。あっ、今ちょっと韻を踏んでダジャレみたいになっちゃったけど。狙ってないから」


「いちいち言わなくていいよ……」


ランレイはまたも呆れると、次に自分の顔を自分の手――肉球を向けてバシッと叩いた。


そして、彼女はガッツポーズをとる。


「考えるのは大事だけど、じっと悩んで何もしないのはダメだよ。うん、ともかくガイノイドたちのところへ行ってみよう」


「猫がガッツポーズとってる……。くくく、かわいい……」


「人が気持ちを切り替えたところに水を差すなッ!」


猫の姿で感情の浮き沈みを体で表現したランレイを見たメイユウは、つい笑ってしまった。


当然ランレイはからかわれたと思い、怒鳴りあげる。


「さてと、じゃあ準備するか」


そして、メイユウは喚くランレイを無視して、部屋着からチャイナドレスへと着替え始めるのだった。

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