第2話

 仙台にある折絵の実家に墓参りに出かけた。

 遺影の彼女は微笑んでいた。線香をあげ、合掌した。

『折絵、ゴメンな?恋人が出来たんだ、許してくれよ』

 心の中で彼女に謝った。

「阿部さん、もう来てもらわんでもいいですよ?娘は成仏したはずです」

 折絵の母はそう言って、冷や麦と麦茶を出してくれた。網戸越しに風が入って来て、風鈴がチリンと鳴った。ジージーとアブラゼミが鳴いていた。

 

 スマホが鳴ってる。相手は同じく、在宅ワークをしてる勝浦恭也だ。所属は仙台署刑事課だ。階級は僕と同じく巡査部長。

「ちょっと、すみません」

 縁側で電話をかけ直した。子供の頃、ここで折絵とスイカを食べて、種の飛ばしっ子をした。🍉

「勝浦君、どうしたんだ?」

《あっ、先輩?大変ッス!青葉城で銃撃事件発生ッス》

 おそらく彼はモニターを見てるんだろう。

 詳細をメモして、ニッポンレンタカーで借りたスカイラインGT-Rを疾駆して現場に向かった。向日葵畑の中で少年たちが蝶々を追いかけている。🌻

「僕にもあんな頃があったなぁ」なんて、呑気なことを言ってる場合じゃない。銃はおろか、手錠も所持していなかった。まっ、僕には魔法が使える。敵はどれくらいの強さだろうか?不安で仕方がない。

 被害者はクォン・ケイメイって中国人だ。脳幹を撃たれて即死だった。折絵を殺した犯人だろうか?もしかしたら、犯人は僕が狙いだったんじゃないか?クォンは脇櫓の前で撃たれた。大手門隅櫓ともいい、大手門と共に1931年(昭和6年)国宝に指定されたが、大手門と共に戦災により焼失。1967年(昭和42年)に民間の寄付により外観復元され、現在は唯一復元された建造物である。

 コロナの影響もあり、青葉城も封鎖されていた。

 犯人は意外な人間だった。小杉三郎っていうライフル選手だ。オリンピックの延期により、自暴自棄になっていたそうだ。

「コロナさえなければ順調にいっていた、中国人なら誰でもよかった」

 取調室で小杉はそう語った。

 

 青葉城は、慶長年間に伊達政宗が築城してから、廃藩置県・廃城令までの約270年に渡り伊達氏代々の居城であり、仙台藩の政庁であった。 二代藩主伊達忠宗の代に完成した仙台城は約2万坪で、大藩にふさわしい大規模な城であった。


 東京に戻る為に仙台駅にやって来た。

「向こうに行ってもお元気で」

 ロータリーで勝浦と別れの握手を交わした次の瞬間、爆音がした。

「何だ?」

 僕は体が強ばるのを覚えた。

 

 国防軍は、世界各国でテロを扇動している武器商人の島津涼香に対するドローン攻撃を行った。折絵を殺したのも彼女だった。


 世羅総司首相の妻である高絵は出産を前に、危険な今の仕事を辞めようと考えていた。彼女はボディーガードをしていた。

  そのおり、千葉国防長官が急逝したとの一報が首相官邸に入る。世羅総司は葬儀に参列する為、高絵を伴い、仙台に向かった。


 厳重な警戒体勢が敷かれている仙台だったが、葬儀会場に向かっていた世羅首相と高絵を乗せた車が突如、爆発した。

 それと同時に、他の政治家たちも警官や救急隊に紛れていた涼香の手下らによって一斉に攻撃を受ける。

 僕たちも攻撃を受け、応戦しつつロータリーから勝浦の車で逃走する。

 追跡してくる敵と銃撃戦を繰り広げた末、ヘリに乗り込み、空港へと向かう。しかし、今度は仙台上空にて、ビルの屋上にいたテロリストから、スティンガーミサイルによる攻撃を受ける。ヘリは墜落し、勝浦は致命傷を受けて死亡する。

 僕は前日にヘリに乗る夢を見た。正夢になった為に『不滅』って魔法を覚えた。

「ハッハッハッ!」

 高笑いしていた島津涼香の首を僕はナイフで掻き切った。

 

 チャペルが鳴っている。僕はウサギの頬に口づけた。これは夢か?

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インソムニアラブ 鷹山トシキ @1982

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