ようやく、城に……

 

「私のお母さんは異世界人だったのですかね?」


 ぱかぱか歩く馬に揺られながら、アキは呟く。


 マダム・マダムヴィオレ。


 その人が本当に私の母なのだろうか……?


 彼女を知るアンブリッジローズも、湖の女神もそのマダムヴィオレに私が似ているというが。


「何者なのだろうな、マダムヴィオレ。

 お前が滅多に会ったことがないということは、もしかしたら、普段はこの世界にいるんじゃないのか?」

と王子が言ってきた。


「……そうかもしれませんね」


「アンブリッジローズの1000年前の記憶は適当だが。


 彼女が時の洞窟に入る前、普通に姫として過ごしていた頃、出会った知り合いならば、マダムヴィオレもそれなりの地位にある人物である可能性もある。


 湖に寄ったあと、一度、城に戻った方が詳しいことを調べられるかもしれないな」


 城に戻るか、と王子は言った。


 アンブリッジローズの塔を出て、城に向かうと出発してから、この辺りをぐるぐる回っていたが、ついにそのときが来たようだった。


「大丈夫ですかね?

 こんなもの連れて帰って、とか王子、怒られませんかね?」


 王子は少し考え、

「お前をアンブリッジローズとして紹介するつもりだったが。

 もしかしたら、お前も地位のある者の娘やもしれぬ。


 ならば、アンブリッジローズ様の紹介で連れて帰った娘だと説明しようか」

と言ってきた。


「いやー、まだ何者かもわかりませんしね。

 意外とお尋ね者とかかもしれませんし」


 そう言う自分を王子がちょっと笑って見ていた。


「……なんです?」

と見上げると、


「いや、心配するな。

 お前の親がお尋ね者であっても、お前との結婚、反対させはせん」

と言ってくる。


 ちょっと赤くなりかけたとき、ラロックの馬が追いつき、言ってきた。


「私もお守りいたします。

 私は今まで名ばかりの騎士でしたが。


 アンブリッジローズ様、あなたのために、本物の騎士となりましょう」


 その言葉にむっとしたように王子が言い返していた。


「じゃあ、俺はアンブリッジローズのために、本物の王子となろう」


 ……今までニセモノの王子だったんですかね?

と思ったとき、湖に着いていた。






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