お前、誰の部下なんだ……?
そういえば、中尉もこの騎士のような格好はただの扮装だったか。
だから思うところあるのだろうかと思うアキの前で二人は揉めていた。
「お前、アンブリッジローズの何処がいいのだ」
と王子がまたアントンに訊いている。
「見たことも聞いたこともない何処か面妖な女だからだ」
「そんなのいいと思うのは俺くらいだと思ってた」
「……二人とも断りたい感じだわ」
とアキがもらすと、
「じゃあ、断ったらいいじゃないですか」
とラロック中尉があっさりと言う。
……まあ、そうなんだが、と思いながら、アキはまだ自分を
ところで、王子、名前はなんなんですか。
結局、名乗っていないようだが……と思いながら。
「それにしても、王様のあの小物感はなんなんですかね?」
横を歩くラロック中尉がアキに訊いてきた。
王子たちはまだ揉めているので、二人を置いて、ラロックとアキだけが大食堂に案内されていたのだ。
外廊下から見える手入れの行き届いた庭を眺めながらアキは王が王となった経緯を説明する。
「なるほど。
まあ、王として暮らしているうちに、だんだん王様らしくなると思いますけどね。
人は良さそうだし、悪くない王様になるんじゃないですか?」
「そうね」
と言っているうちに大食堂に着いた。
すでに長いテーブルは美しくセッティングされている。
ちょこまかと現れ、自らもてなしてくれようとする王様を見ながらアキは言った。
「あ、わかった」
なんですか?
と王様とラロックがアキを見る。
「王様のその服とカツラの借り物感が問題なんじゃないですか?」
まだ自分の好みというものが確立していないらしい王様はありがちな王様の服とマント。
そして、カツラを身につけていた。
うーむ、と王様は唸る。
「なにをどう着てよいかわからぬのだ」
「やはりそうでしたか。
では、ご馳走になるお礼に王様に服を差し上げたいのですが。
よろしいでしょうか」
「いやいや。
息子がさらってきた貴女にそのようなことまでしていただいては」
と王様は何故かへりくだるが、アキはラロックを振り向き、言った。
「でも、私もそのようなセンスは持ち合わせていないので。
ラロック中尉に用意してもらわねばならないのですが」
「ほう。
貴殿が。
すまない。
よろしく頼む」
と王様がラロックに言うと、ラロックはアキと王様の前にひざまずいて言った。
「自信はありませんが。
王様に似合う装束を用意してみます」
「ありがとう、ラロック中尉」
とアキが微笑むと、彼女の前にひざまずいたままラロックは言った。
「いえ。
お仕えしているアンブリッジローズ様のためならば」
そのとき、大扉から入ってきた王子がラロックに向かい、言った。
「……いや、お前が仕えてるの、俺だよな?」
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