第14話 チキンハートな王子様
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戻ってこない!!!
こういうときとか基本、マイナスに考えてしまう俺。
(俺、騙されたんじゃね!?)
真っ先に頭を
いやいや、まさか。あの久住さんが俺を夢中にさせた後に、ポイッと捨てるように俺を置いて帰るなんてことは……。ていうかそれが本当だったら、久住さんは小悪魔とかリリスとかそんなんじゃない──悪女だ!!
「いやいや、さすがに考えすぎだろ! 俺!!」
首を横に振って……、さっきのことは忘れよう! じゃないと久住さんに不信感を抱いてしまう。
とはいえ彼女が戻ってこないのは変だ。
頭の良い久住さんが迷子になるなんてありえないし……。
久住さんが戻ってこない理由を探るべく頭を回して
(もしかして、何かあったんじゃ!?)
久住さんに抱く思いが不信感から心配へと変わりゾッとした俺は、こうしちゃいられないと立ち上がり、久住さんが向かった方角へ走り出した。
〇
「ふんふんふ〜ん♪」
御手洗を済ませ、ハミングを
初めてのデートに気持ちがかなり高なっている様子だ。
けれどそこから一転。美唯の元にハプニングが起こる。
「ふふっ、さっきのウタくん、オドオドしてて可愛かったなぁ──」
「ねぇキミ、一人?」
後ろから突然、金髪の男が美唯の手首を掴んで声をかけてきた。
後ろにはその連れの男が三人ほどいて──全員が『遊び人』の如く見た目で、表情は平然を装っている。
「あの、私……」
「今から俺たちと遊ばない?」
男たちに囲まれ、美唯は萎縮する。
表情からはこの状況に、純粋に恐怖していることが伺える。
「てかキミ可愛いね? どこの子?」
「高校生?」
迫る男たちに、美唯は不安に駆られていた。
どうしよう? どうすればいいの?
そんな中、彼女は叫びたがっていた──誰か、助けて……。
『もしなんかトラブルがあったら私に連絡してちょうだい』
そうだ、舞香ちゃんに連絡しよう。
そう思って携帯電話を出そうとするが──。
(嘘? 圏外?? ってことはまさか……)
電波が届かない所にいるとわかったと同時に、彼らの魂胆が垣間見えた。
きっと彼らはこうなることを見越して、平気で私にこのようなマネをしているのだと。
(誰か……、ウタくん……)
再び助けが来ることを願う美唯。その『誰か』の中に、ウタの名前が出てきて──
(ウタくん、助けに来て……)
やがて、美唯はウタの助けを求めた。
(ウタくんなら、心配してここに来てくれるよね?)
そう思い、ウタが来るのを待つが……
『いい? 『
また舞香の言葉が頭を
「ねぇ、シカト?」
「ほらほら、早く行こ?」
「ボウリングしに行かない??」
どうしよう、早く戻らなきゃ。ウタくんが待ってるのに……。
そう思いながらも、逃げようにも逃げらない状況に、美唯はなにも出来ずに黙り込むしか無かった。
舞香の助けは呼べない。ウタは怯えて、この状況下の自分を助けに来ないかもしれない。
そう思っていた、そのときだ──。
「すっ、すみません!!」
聞き覚えのある引きつった声が聞こえてきた。
「ウタくん!」
なんと、ウタがここまでやってきたのだ。
いつも美唯に見せる以上のテンパリ具合を見せるウタ──きっと、相当の勇気を振り絞って来たのだろう。
「えっ? なになに?」
「すみません、この子。俺の……なんで!」
そしてウタは焦りながらも口を走らせ、美唯の手を掴んで男たちの元へ離れて行った。
「なんだよ、彼氏持ちかよ」
「つまんねぇの」
男たちはウタたちを追いかけず、うんざりした顔でどこかへ去って行った。
これにて美唯は救われて一件落着、なのだが──
(バカか? バカなのか? 俺!『俺の……』の後に何か言えよ! 『俺の女』って言ってるみたいで誤解されるじゃん!!)
ウタはついさっきの失言(?)を思い出し、ひどく赤面していた。
「ごめん、久住さん!」
さっき美唯を待っていた場所にまで走って戻ったウタは、即座に美唯に頭を下げた。
「ううん。むしろ助けてくれてありがとうだよ?」
「いや、ごめん。俺、久住さんが心配で見に来たんだけど……、ビビってすぐに助けられなかったんだ……」
実はウタ、美唯が男たちに怯えているのを影から見ていたのだ。
そのことを正直に明かすウタだが、申し訳なさで頭がいっぱいだからか、頭をずっと下げ続けている。
そんなウタを見て、美唯はクスリと笑ってこう言った。
「
「えっ? 何をいきなり!?」
突然の言葉に、ウタは動揺して頭をガバッと上げた。
「てかそれ、誰が言ってたの!?」
「ふふっ、舞香ちゃんから聞いたよ? 『アイツは頼りないダメダメ。
「マジか。そこまでボロくそに……」
「うそうそ、そこまでは言ってないよ?」
「だとしても、その言葉が出てきたことにはさすがにヘコむわ……」
「あっ、それはごめんなさい……」
さすがに言いすぎたか。そう思った美唯は苦笑しながらぺこりと謝罪。
「でも、久住さんの言う通りだ。ホントにごめん……」
顔を上げ、面と向かって真面目な表情でウタはまた謝った。けれど美唯は「ううん」と首を振り、こう続けた。
「それでもウタくん、助けてくれたじゃない?」
「そりゃあ、そうでもしないといけないという使命感に駆られたといいますか……」
気恥ずかしくなって、頬を掻くウタ。そんな彼の片手を両手で掴んで──
「さっきのウタくん、王子様みたいでかっこよかったよ」
満面の笑みでこう言った。
これにはウタも照れざるを得ず。顔から首の下まで、トマトのように真っ赤になっていた。
「だから、ごほうび♪」
「ちょっ、えっ? ま??」
美唯はウタの腕にがっちりしがみついた。
「あの、さっきより近いんですが!?」
「こうやって恋人アピールしないと、またさっきみたいになっちゃうからね?」
「いや、たとえそうだとしても……。その、当たってますよ? むっ、むむっ!!!」
「ほらほら、次はショッピング行こ♪」
「むむむっ、むむむむむむむぅぅ…………」
この後、ボウリングに行く時間が無くなるまでショッピングをした二人。
美唯はたくさんの服を身につけ、たくさんのモノが買えて……、そして初めてのデートに大満足。
「さぁ、帰ろ?」
「ほ……ほひ…………」
一方、かなりのアプローチを迫られるだけでなく、いろいろな服を身にまとった可愛い美唯をたくさん見たウタの頭の中はもはやピンク色に染まったお花畑。
もうウタの理性は、抹消されていた。
これにて二人の初デートは終了。
だが同じ学校の生徒がいるかもしれないショッピングモールにて、あそこまで恋人らしくイチャイチャしていたものだから──。
「なぁ久住さんと藤澤、付き合ってるらしいよ?」
「この前、二人が腕組んで歩いてる姿を見た人がいるんだって!」
学校で「二人が付き合っている」というウワサが流れるのは、無理もない話であった。
【後書き】
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