第5話 そして孤独。
遠慮・忍耐・準備と覚えて、その後、患者は孤独を感じることでしょう。
病気の進行と共に、患者の外出準備は、大変になっていきます。
また、病気に恐怖するあまりに、自宅でも、極力訪問系のプロに任せようとします。
当たり前です。
自宅に訪問して、患者のケアをしてくれる業者や制度が充実しているので、家族が介護する必要が少なくなっていきます。
難病福祉・障害福祉・介護福祉等、福祉の制度を上手く使えば、患者にとって、病院よりはるかに快適な空間を作れてしまいます。
患者は、病気が進行しているため、車イスへの移乗すら嫌がる人が増えます。
特に、筋萎縮する難病では、体幹に障害が出て、座っていることすらツラくなっていきます。
中でも、筋萎縮性側索硬化症(ALS)・脊髄性筋萎縮症(SMA)・球脊髄性筋萎縮症(SBMA)をはじめとするMNDと呼ばれる難病は脳に障害が出ないので、患者本人がしっかり考え、健常者である家族に遠慮して、団欒の場に加わらなくなります。
その頃には、病気の進行は、かなりのところまで進んでいるため、毎日入浴できなくなっています。
中には、毎日更衣できなくなっている患者も多くいます。
入浴していない、着たきりの服装では、体臭がとんでもないことになっているものです。
いくら家族といえど、同室することは、できれば断りたくなります。
そうすると、患者は精神的に萎縮して、自分から家族との距離を取るようになります。
患者の孤独は、家族や友人に責任はありません。
家族の変な勘ぐりから、患者自身が逃げて、殻に閉じこもることが原因です。
次に患者から近づこうとしても、無理です。
この頃には、患者の病状は、身体障害者2級以上、障害者自立支援区分5以上。
要介護度4以上になっていると思います。
つまり、ほぼほぼ寝たきりになっています。
自分自身で、車イスへの移乗準備をして移乗できる患者は、ほとんどいません。
家族の誰かが、気にして連れ出そうとしても、患者本人が遠慮するのです。
筆者も、もう自分で更衣することはできなくなってしまいました。
車イスへの移乗動作と車イスから病床への戻りの動作は単独でやってますが、更衣は、週に2回の入浴の時に着替えさせていただくだけで、リセッシュ・ファブリーズの臭いでごまかしております。
尿器は、1日1回身体介護のヘルパーさんに廃棄して洗浄していただいてますが、
大便も病床で訪問看護師さんに、浣腸してもらって、寝たきり用の便器や紙オムツに排泄する形で処理していただくようになっているのです。
当然ながら、部屋の臭いは、ひどいことになっています。
もちろん、部屋の扉は、基本的に閉め切りにしてます。
そうならないようにしなさいと、主治医や看護師からは、教えていただいてましたが。
いろいろ、生活の工夫をしている中で、一般的でない方法とか、自分だけの特殊な方法を作ってしまい、看護師さんは、ほとんどの方が、なるほどと理解して、実施していただけるのですが。
残念ながら、身体介助のヘルパーさんの中には、何度説明してもできない方がおられます。
そうなると、できない方の担当の日には、頼まなくなります。
そして、また殻に閉じこもることになります。
患者本人が元気なら、ヘルパーさんが不器用でも、少しの手伝いだけで、なんとかなることもありますが。
訪問介護ヘルパーとして、単独で行動する以上は、もう少し、勉強と努力をしてほしい方がおられることは否定できません。
そんなことが重なって、難病患者は、どんどん殻に閉じこもっていきます。
自分から、家族や社会から逃げるようになることで、どんどん孤独になっていきます。
もちろん、患者の自己責任です。
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