第46話 ステータス

「ウィルさん? 何故、剣を!?」

「リアム。今から俺があの魔族の動きを止める。その隙な、手にした光の剣で斬れ! 分かったな!?」

「ふっ……どんな魔法を使う気かは知りませんが、私にその手の魔法は効きませんがね。まぁ好きにどうぞ」

 

 サミュエルは状態異常に耐性があるため、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

 だが、誰が魔法を使うなんて言った? 剣を捨てたのは、魔法使う為じゃない。

 デバッグコマンドでステータスを表示させると、敏捷性極振りのステータスに変え、ダッシュでサミュエルの背後を取る。


「なっ!? まだ速くなるのかっ!?」

「あぁ。だが、速さなんてどうでも良いんだ」

「どういう意味……な、何をするんだっ!」


 驚くサミュエルを、圧倒的スピードで背後から羽交い締めにすると、再びデバッグコマンドを用いてステータスを変更し、


『ウィル=サンチェス 二十四歳 男

 公爵令嬢の夫 Lv43

 STR:400(S)

 VIT:364(G)

 AGI: 20(S)

 MAG: 20(S)

 MEN:360(S)

 DEX: 20(S)

 スキル:剣技(S)、神聖魔法(S)、精霊魔法:土(B)』


 筋力と生命力、精神力にステータスを集めて、状態異常ではなく、筋力による拘束で動けなくした。


「リアム! 今だ! その光の剣で、俺を巻き込んでも構わないから斬るんだ!」

「えっ!? む、無理です! そんな事をしたら、ウィルさんまで……」

「光の剣は悪魔の弱点である光属性だ! 俺には大したダメージにならない! だから、早くっ!」


 リアムに俺ごと斬る様に伝えるが、リアムは戸惑うばかりで動かない。

 器用さが高ければ、この状態でもサミュエルだけを斬る事は容易いが、今のリアムにそれを求めるのは酷だし、そんな事は求めていない。

 それに、悪魔に物凄く効くが、人間には普通のダメージだというのも本当だ。

 だから、早く……サミュエルが魔法攻撃に気付く前に!

 アリスが居るので範囲魔法攻撃は使わないだろうが、単体攻撃魔法の一撃で、今のリアムは簡単に死んでしまうステータスだからな。


「リアム! 頼むから早く……」

「でも……」

「でもじゃない! アリスを助けたくはないのか!? いいから斬るんだっ!」


 ジタバタもがくサミュエルを高い筋力で動けなくしている所へ、ようやく決心したリアムが剣を振るう。

 光の剣が、硬いサミュエルの肌を易々と斬り裂き、背中を取る俺にも剣先が触れそうになった所で、


『デバッグコマンド……テレポート。設定、この小屋の隅』


 テレポートを使って剣を避ける。

 いや、いくら弱点ではないと言ったって、ゲーム内最強武器で斬られたくはないしね。

 一方で、光の剣を振り切ったリアムの前に、苦しむサミュエルの姿がある。

 流石は、悪魔の弱点である光属性持ちで、かつ最強の攻撃力の剣といった所か。

 ステータスの低いリアムの一撃でも、サミュエルに大ダメージを与えたようだ。

 だが、


「貴様ら……よくもやってくれたな! 全員まとめて死ぬがいいっ!」


 怒りに震えるサミュエルが、倒れたまま魔法を使おうとしている。それも、おそらく範囲魔法だろう。


「リアムっ! ヤバい! とにかく斬れっ!」


 だが、リアムがサミュエルの身体を斬るものの、止まる様子は無い。

 それなりにダメージは与えられるが、やはりステータスが低すぎるのか!

 どうする!? 今から逃げるにしても、運べるのはせいぜい一人。

 時間も無さそうなので、強力な攻撃一発で止めを刺したいが、俺が光の剣を使おうとすると、重くて振れない。


「いや……だったら、無理矢理振ろう」


 デバッグコマンドでステータスを変更し、筋力極振りに。

 デバッグコマンドで光の剣を生み出し、倒れたサミュエルのすぐそばへ移動すると、


「うらぁぁぁっ!」


 アイテムインベントリから光の剣を取り出し、素手でオークロードを倒した筋力を使い、剣の重さに逆らう事なく、真下へと振り下ろす。


―― ッ!


 声にならない断末魔と共に、サミュエルの体が千切れ飛んだので、何とか乗り切ったと思った所で、


「ウィルっ! 何か、黒いのが……黒いのが私を……」


 闇色の何かが、アリスを包み込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る