第34話 愛の力!?
「ハッ!」
グレイスの一撃で、オークが倒れる。
「エィッ!」
別のオークのもとへと掛けて行ったかと思うと、走る勢いを剣に込め、オークの身体を剣が貫く。
……俺がグレイスに上げた戦士の指輪は、ステータスの向上値がそんなに高くなかったはずなんだけどな。
まぁ何にせよ、グレイスが絶好調で、俺のフォローが無くてもオークを倒しまくっているので、さぞかしストレス発散になっているだろう。
ただ、飛ばし過ぎな気もするので、そろそろ休憩か、もしくは帰還を促してみるか。
「グレイスー! 結構な数のオークを倒したし、一旦休憩にしないかー?」
「はいっ! 旦那様っ!」
……旦那様?
んん? どういう訳か、グレイスの俺の呼び方が変な言葉に変わった。
何を言っているんだろう。
それじゃあ、まるでグレイスが俺のメイドさんみたいじゃないか。
金髪ドジっ娘メイドというのは悪くないが、グレイスには聖騎士が一番適しているからな。
「グレイス。かなりハイペースだから、まだ続けるなら水分補給をしっかりしておこうか」
「はいっ! ……ありがとうございます」
「それから、グレイスが満足するまでオークを倒したら、一旦街へ戻ろうと思うんだが、あとどれくらい倒したい?」
「……その、街へ戻ったら、な、何をします?」
「んー、時間次第だな。今から街へ戻るなら、ギルドで報酬を貰って、アネイスの街へ――教会へ一度戻ろうと思う。夕方くらいまでオークを倒すなら、今日は街で一泊して、明日教会へ戻るかな」
「わかりました。では、夕方まで倒すので、その……今日はここの街の宿で一泊……しましょう」
「あぁ、わかった。ただ、無理はし過ぎないようにな」
オークが倒せるようになったのが嬉しいのか、グレイスがかなり舞い上がっているように見えるので、一応釘を刺したつもりなのだが、
「も、もちろんです。その……よ、夜も体力を使いますしね。じゃ、じゃあ、行って来ますっ!」
何故か顔を赤らめながら、グレイスが俺から逃げるように走り去って行った。
顔が赤いという事は、かなりオーバーワークだという事なのか?
だけど、物凄く元気そうに走り回って、オークを倒しまくっているし……判断が難しい所だな。
調子が良いようだし、止めずに今の調子が良い時の感覚を身体に覚え込ませたいという想いと、無理をして思わぬミスをしでかさないかという心配が天秤に乗って揺れている。
レベル10の防御魔法を掛けておいたので、余程の事が無い限り、今のグレイスが怪我を負う事は無いと思うのだが……まぁ要らぬ心配だったかな。
グレイスの快進撃が続き、オークだけに留まらず、オークの上位種であるオーク・ウォーリアや、ハイ・オークにまで戦いを挑み、剣と盾を上手く使って倒していた。
「あれ? もしかして、グレイス……スポーツ漫画とかにあるゾーンとか、そういう奴に入っているのか!? 何だか、覚醒したみたいに凄いんだが」
かなりの数のオークを倒しているので、今の状態のステータスを確認してみる事にした。
『グレイス=ベネット 十六歳 女
新妻 Lv25 冒険者:E
STR: 76(E)+20
VIT:151(A)
AGI:106(C)
MAG:114(B)
MEN:156(A)
DEX: 43(F)+30
スキル:耐闇属性(S)、神聖魔法(A)、剣技(D)、護る力(S)』
レベル25!? 今日一日でレベルが10も上がっているのか!
いやこれは、調子が良いというか、グレイスが戦い続けたくなる気持ちも分かる。
装備品のおかげで、筋力が一般男性並みになっていて、器用さも大きく改善されているので、今は戦うのが楽しくて仕方ないだろう。
「……って、あれ? スキルが増えているし、素質が上がってる!?」
今までのグレイスには「護る力(S)」なんてスキルは無かったはずだし、神聖魔法はCランクで、剣技もFランクだったはずだ。
十年掛かって修得した剣技(F)が一日で剣技(D)になるなんて……やはり人間は、きっかけさえあれば、大きく成長するという事なのだろう。
護る力っていうのは何か分からないが、おそらく聖騎士系のスキルに違いない。
これがきっかけとなって、盾の……防御スキルがもっと修得出来れば言う事なしだ。
ただ、俺が知らない護る力っていうのが、どんなスキルなのかだけは確認しておこう。
知らずに使う事は出来ないし、知らずに使ってしまうのも怖いからな。
護る力(S)の文字をタッチすし、その詳細が表示された。
『護る力(S)
ディヴォーションLv3
サクリファイスLv5
パッシブ:パワーオブラブLv10
……』
んんっ!? 俺の知らないスキルがあるんだが。
先ず、ディヴォーションは献身スキル――要は誰かが受けたダメージを肩代わりするスキルで、生命力の低い後衛職などを護る時に使うスキルだ。これはまぁいい。
次にサクリファイスは犠牲って意味で、自身の体力を誰かに分け与えるスキルだ。魔法力が尽きた時や、魔法が使えないなどといった、活躍する場所が限られるスキルなんだが、まぁこれも良しとしよう。
問題は、次のパワーオブラブというスキルだ。
言葉の意味からすると、愛の力……だけど、どういう事だ? しかも、パッシブスキルだから、グレイスはこのスキルが常に発動している事になる。
未知のスキルが発動しているというのは、なかなか怖いので、一先ず変な事が起きないか暫く様子見する事にした所で、グレイスが戻ってきた。
「あ、あの、旦那様。そ、そろそろ日も暮れてきましたし、街へ戻って宿……宿へ行きませんか?」
「ん、そうだな。それにしてもグレイスは凄いな。今日一日で、一気に急成長したよな」
「え、えへへ……あ、愛の力かもしれません」
ん? グレイスはパワーオブラブのスキルの事を知っているのか?
後で夕食でも食べながら、スキルの事を聞いてみようと思いながら、俺とグレイスは帰路に就いた。
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