第2話 どこかで見た場所
「ねー、ウィルー。遊ぼうよー」
「アリス! ダメだよっ! ウィルさんは、身体が弱いんだから」
「ウィルは平気だよね? リアムがちょっと大げさなんだよね?」
二人の子供の会話から察すると、俺に抱きつく女の子がアリスなんだろうけど……誰だ? 随分と親しげだけど、俺には娘どころか、妻や彼女すらいないからな?
「ほら、ウィルさんが困っているじゃないか。アリス、ウィルさんは、僕たちの為に頑張ってくれているんだから、ちゃんと休ませてあげないとダメだよ」
「むー。仕方が無いなぁ。じゃあ、もう少し休んだら、いっぱい遊んでねー!」
そう言って、アリスがリアムと呼ばれていた少年と共に、先程の大きな扉から出て行った。
「何だったんだ? だけど、あの二人はどこかで見た事がある気がする。それに、アリスとリアム。そしてウィル……って、ちょっと待った! まさかとは思うけど……マジかっ!?」
慌てて自分の格好を見てみると、いつも着ているヨレヨレのスーツではなく、ゴワゴワとした質の悪い、元の色が分からない程に薄汚れたローブを着ている。
これが俺の創造した通りの場所だとしたら……と、ステンドグラスに向かって左側の扉を開け、通路を右に曲がると、思った通り小さな炊事場があった。
「……嘘だろ!? ここは、ストレングス・クエストの世界なのかよっ!」
どこかで見た事のある場所と子供たちのはずだ。
オープニングムービーで、何百回とお目に掛かっている。
先程の話からすると、俺がウィル――勇者の育ての親であり師匠である、元英雄の現牧師で孤児院を運営しているイベントキャラ――なのだろう。
一応、夢という可能性もあるので、顔をつねってみたけれど、ただただ痛いだけだった。
「メニューオープン! ……は、無理なのか」
俺がデバッグしていたゲームの世界に居るのは間違いなさそうだが、便利なメニュー画面やアイテムインベントリなんかは使えないらしい。
あれが使えるのなら、無制限でアイテム持ち放題になり、それだけでチートだったのだが、そんなに甘くはないようだ。
「ん……待てよ。こっちはどうだ? デバッグコマンド……ステータス。対象、俺」
念のためと、一応開発専用コマンドを口にしてみると、
『ウィル=サンチェス 二十四歳 男
元英雄の牧師 Lv32
STR:200(S)
VIT: 30(G)
AGI:200(S)
MAG:200(S)
MEN:200(S)
DEX:200(S)
スキル:剣技(S)、神聖魔法(S)、精霊魔法:土(B)』
目の前に、見慣れた半透明のステータス画面が表示された。
「やっぱり、ウィルなのか。というか、このキャラって二十四歳だったのかよ。日本だと大学を卒業して、社会人二、三年目ってところか。若いな」
元々の俺、斉藤隆史は三十四歳なので、十歳も若返った事になる。
しかし、それにしてもだ。この極端過ぎるステータスはどうなのだろうか。
元英雄という設定だけあって、一般男性の能力を100としているステータスの値が、STR(筋力)、AGI(敏捷性)、MAG(魔力)、MEN(精神力)、DEX(器用さ)の五つで倍になっているのは、とても優れていると思う。
数値の後ろにあるカッコ――素質もほぼ全てが最高のSだし。
だだ、VIT(生命力)が30しかなく、素質も最低のGっていうのは、リアムの言う通り身体が弱過ぎだ。
とりあえずステータス画面でLv(レベル)を変更して……って、出来ないのかよっ!
これだと、何かあったら、すぐに死んじゃうじゃないか。
どうにか出来ないのか……とステータス画面を触っていると、レベルは変更出来ないものの、直接ステータスの値を変える事は出来た。
とは言っても、ステータスの合計値と素質は変えられないみたいなので、
『STR:160(S)
VIT:200(G)
AGI:160(S)
MAG:200(S)
MEN:150(S)
DEX:160(S)
スキル:剣技(S)、神聖魔法(S)、精霊魔法:土(B)』
割り振りを変え、VITとMAGを高めにしておいた。
健康最優先っていうのと、やっぱりファンタジーの世界なら魔法を使いたいからね。
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