第2話 五穀豊穣2
この「
「何を思うておる」
栗拾いを諦めた
「なに、むこうの丘には、家々が立てられる前のことを思い出していてな。覚えておるか」
「忘れたな」
「大きな養豚場があってな」
「ああ、思い出した。どこぞの大企業が開発するというて、大枚はたいて、土地買ったというやつか」
「そうそう。もともと羽振りのよい業者のオヤジが、大枚もろうて、養豚場を畳んで、
「で、どうした。幸せに暮らしとるのか」
死んだわ、と苛立ったように案山子が言うと、驚いて八咫烏は大きく羽を広げた。その広さは案山子を覆い隠してしまえるほどだった。
「『
それに養豚場を畳んで、急速に身体を動かさなくなったので、オヤジの体調は変調を来した。そうして養豚場を売っ払った三年後には死んでしまった。
さて、それからが大変じゃわ。残り金を争って骨肉同士が
「そうか」
八咫烏はその大きなくちばしを、地に向けて傾けた。
外国はいざ知らず、日本の神々には、絆とか、人にとっての家族のような感覚はないのかもしれない。生まれ出た順序は存在する。一番最初のカミは尊ばれている。記紀にあるように、序列というのは希薄だ。神々も
くっつくも別れるもない。ましてや消滅しそうもない。
きっと人はいずれ消えてしまう存在だから、家族の意味が重くなるのだと案山子は思った。そう八咫烏に考えを聞かせた。
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