恋のエスケープの時間 6

 そして物語の時空間は、クラスの皆がエロ同人誌をクラスの机に隠していたのが、偶然に待った先生に見つかり


「わたしの初恋さん さようなら」


と、ゆかりがくずおれるかのように真っ青になって、机に突っ伏して固まってしまったシーンに戻る。




 くしゃみに鼻水と咳そしてお腹の不調に、あおいは一度は


『今日はしんどいからお休みしようかな?』


そう思ったのだけれど


『せっかくテスト勉強したのに

 テスト休むなんて考えられない!』


と気を取り直してあおいが登校してみれば、姉のせいでエロ同人誌が待った先生に見つかり、皆がピンチどころか、学生会初等部総代と児童会副会長に副級長を兼務する自分自身の大ピンチになっているではないか!。


 それどころか、真鍋のお兄ちゃんへの自分の恋心までが、怪しい雲行きになりかねない。と、言うのも・・・


『わたしは緑お姉ちゃんと違って

 エロ馬鹿女じゃ ありませーん

 エッチなんて、わたし興味ありませーん』


との差別化で、緑お姉ちゃんに取られた愛しの真鍋のお兄ちゃんを取り返す作戦の真っ最中なあおいだからである。



 あの日は親友ゆかりの誕生日。お誕生会のお泊まりでゆかりが困り果てた顔であおいに見せたのが、緑お姉ちゃんが置き忘れたエロ同人誌とアダルトな本の数々・・・。

 緑お姉ちゃんがエロ馬鹿女な事は、ゆかりたちには、ひた隠しに隠していたあおいにとって、それは文字通りの顔から火が出る赤面物で。でも


『バレちゃったものは仕方ないから

 また姉のお尻拭きをしてやろう』


そう思い、仕方ないから翌日に学校に持って行って、とりあえず、あおいと美佐とゆかりの三人の教室のロッカーに保管して、学校から姉の大学部に電話して初等部に姉に取りに来させて・・・の計画だったのだけれど


その日、体操服を忘れてきた三組の子が


「美佐ちゃん 予備の体操服貸して!」


「ロッカーにあるから持って行って!」


三組の子が勢いよく美佐のロッカー開けた瞬間に、バラバラとロッカーの棚から落ちるエッチな数々の本。騒ぎにならないわけはなく、一組のエッチ魔女ちはるが表装のビニールを破いて本を開いてしまった。エッチな本に群がるクラスメートたち・・・


と、なると元々の性格が男の子っぽくて、下ネタ歓迎!な面もあるあおいは、そちらの好奇心もやはり年頃で持っているゆえに、ついついクラスの皆と姉の書いた同人誌を読破してしまったのだ。


「わぁーエッチだぁ」


「お姉ちゃんはこんな恋が希望なのか・・・」


「タキシード仮面さまに

 こんなエッチな事させないで

 夢が壊れちゃう」


とかなんとか皆とワイワイしながら。


 だが校内放送が流れ、副級長として級長のカネコと先生のお手伝いしなきゃいけないのを忘れていたあおいは、お手伝いに呼び出されてしまうのだけれども、その校内放送で我に帰るあおい。


『わたしがこれ読んだなんて・・・

 もし待った先生に気付かれて何かの世間話の弾みにでも

 「なあ、真鍋、あおいはな

  緑の書いたエロ同人読んでたぞ」

 なんて話を瞬お兄ちゃんにされた日には・・・

 は、恥ずかしすぎるぅ!。

 緑お姉ちゃんは絶対に自分でエロな地雷踏むから

 わたしは別路線な差別化の作戦だったのに』


 実はあおいは大好きな瞬お兄ちゃんを姉の緑に奪われた今も、ひそかに恋し続けていて。


「お兄ちゃん大好き!♥️」


と、緑の目を盗んでは瞬お兄ちゃんに纏わり続けているうちに、互いが黒川学院で先輩後輩の関係で、あおいのお爺ちゃんの道場では互いが優勝候補のライバルな、そんな瞬お兄ちゃんと担任の待った先生は今や親友どころか、互いが女三姉妹の下の末っ子の共通点があり、趣味も料理と同じなこの二人、兄弟並みに親しいのを知っている。だから


「なあ、真鍋

 緑はエロ馬鹿女だけど

 実は妹のあおいもエロ女なんだぞ」


『なんて事態になったらどうしよう?』


と、あおいの六歳の幼稚部の年長さんだったときからの、あおいの初恋が、今まさに絶体絶命の大ピンチなのである。慌ててあおいは


「美佐っ ゆかりっ ちはるっ みずきっ!

 これ今日中に緑お姉ちゃんに届けて返しなさいよっ!

 そうでないと、わたしの恋が・・・

 あんたら、そうなったらどうなるか

 わかってるわね💢

 わたしは緑お姉ちゃんとは違う良い子です路線

 絶対に邪魔するんじゃないわよ!」


そう言葉を残し、あおいは職員室にお手伝いに行ったのに・・・と思い出しながら、このピンチを覆す作戦をあおいが練っていると、待った先生の今朝の訓示は話題が変わっているし、時計を見るとかなり時間が経っている。




 待った先生はお話している。


「先週、黒百合近くの市立小学校では

 痴漢が女子トイレに侵入して逮捕されました。

 噂になってましたし、朝礼でも話が出ましたから

 皆さんは知ってますね。


 世の中には

 エッチな意味で小さい子どもが好きな

 そんな大人もたくさんいます。

 皆さん、そんな人に話しかけられても

 いくら優しそうでも

 絶対について行ってはいけません。

 必ず大人を呼ぶか逃げましょう。とくに・・・」


上の空で話を聞き流していた、そんなあおいは、待った先生に名指しで注意されてしまった。


「とくに、そこの赤井

 お前がいちばんに危ない

 絶対にロリコンについて行くなよ!」


「なんでロリコンについて行く女が

 このわたしっていう前提なのよっ!💢」


「お前、水泳大会も運動会も

 水着やブルマの写真、撮られまくり

 いや、撮らせまくりしてたよな!

 ああいう奴らがロリコンだから危ない

 そう教えてやってるんだよ!


 それにな

 初等部校内が関係者以外の立ち入り禁止になった

 これはな、お前ら三人組のせいなんだよ。

 いいか、ロリコンには近づくなよ。」


と、待った先生。すかさずおませな美佐が茶々する。


「えー!待った先生

 わたしら三人にではなく

 あおちゃんだけに名指し注意って

 あおちゃん人気にぃ、もしかしてぇ

 先生、ヤキモチですかぁ

 この美佐ちんも写真

 撮らせてあげてたんですよぉ!。

 だってわたし、モデルだからファンサービスで」


あおいまで


「えっ? 待った先生も・・・・だったの?

 先生は優しいからお願いしてくれたら

 ヌードだって撮らせてあげたのにぃ。

 今からでも撮らせてあげるわよ。

 でも写真だけね!

 だってわたし、好きな人いるもん!


 それにわたし

 待った先生みたいなエッチな意味じゃなくて

 真面目な意味で子ども好きな瞬お兄ちゃんのほうが

 好きなんだもん。


 だから、お世話してあげるけど

 写真撮るだけだよ!」


そうふざけつつも、これはチャンス到来!とあおいは指差しつつ、ちはるにウィンクして見せる。すると、ちはるは待った先生の机に引っ掛けられたブレザーからタバコをすり抜くとポケットに。


 あおいの悪魔本性の脳内悪魔コンピューターが叩き出した論理計算。待った先生を利用してピンチを覆す!。これを知る由もない待った先生は、あおいのふざけた逆セクハラ紛いの発言に


「お前らふざけるんじゃねえ!

 俺は真面目な話をしているんだ。

 それに俺はロリコンじゃねえ

 歳上がいいんだ!」


「あー!待った先生

 マザコン発言していいのぉ?

 顔が残念なんだから

 優しくしてたら初等部ならモテるのに

 人気なくなっちゃうわよ?」


「うるせえ!」


ついに怒った待った先生は、出席簿の角であおいと美佐の頭を強かに叩くのだが、これはあおい得意の怒らせて冷静な判断を奪い人を操る作戦なのである。そして悪魔なあおいは、さらに待った先生に怒りの火をつける。


「痛~い!

 何も角で叩くことないでしょっ💢

 何よ 童貞のくせに生意気ね」


『お前らだって処女だろが!

 女なのに逆セクハラしやがって!💢』


辛うじてそう叫びたいのを堪えた待った先生は


「学級会が長くなってしまいました。

 このまま二時間目の国語に移ります。

 トイレ行きたい人は行って構いませんが

 他クラスの邪魔にならないよう

 静かに行って、すぐ戻ってくださいね。

 では教科書の・・・」




つづく・・・

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