重なるくちびる? 告白されちゃう時間 2
「剛くん、どうしたの?。楽にしてていいのよ
あー!、あおいを意識しちゃってるのかな?」
入院中のあおいを見舞いに来ている、あおいに片想いな剛くんにそんな軽口を言いながら、持ってきたタオルやらシャンプーやらをあおいに渡す、あおいの従姉の青蘭お姉ちゃん。
が、絶対に持って来なくてはならない、あおいのキャミソールやパンツなど下着の替えを忘れてることに気付く。
あおいが入院した一昨日も、昨日も、下着を持って来るのを忘れたから、あおいは実は今、浴衣タイプの病室着の中に下着を身につけていないのに。
「あっ!・・・」
「青蘭お姉ちゃん、どうしたの」
「い、いやね、大した事ないのよ」
あおいに誤魔化す青蘭。しかし、青蘭お姉ちゃんが忘れ物ばかりのドジっ子なのは知っているあおい。言いわけを考え中の青蘭の、その全く落ち着きのない目の動きで
「まさかお姉ちゃん」
『忘れたのバレてる』
カンの鋭いあおいは誤魔化せないと思う青蘭。
「あおいゴメンっ!。あんたのパン・・・じゃなかった
あんたが食べたがってた、あのお店のパン買うの忘れたの」
「もうっ!。青蘭お姉ちゃんは忘れん坊なんだから💢
今すぐパン・・・買ってきて!
履い・・・う、ううん、剛くん、なんでもないの」
剛くんがいることに気付き、なんとか誤魔化すあおい。
「はいはい。すぐ行くから
それからね、あんたのママから預かった、あんたのお小遣い
テレビ試聴代とか漫画ばかりに使わないのよ。
まあ、あんたは無駄遣いしない子だけどね」
「うるさーい!。さっさと買いに行けぇ!
剛くんにパ・・・どうすんのっ!💢。
あ、何でもないの、剛くんは気にしないで・・・
・・・
ウエストじゃなくて、西町50番デパートのやつよ!」
「わかった、わかったから物投げないの
今すぐ行くからね」
パタパタと、廊下にスリッパ音をさせて病院売店に走る青蘭。あおいも青蘭もあおいLOVEな剛くんが見舞いに来てるから
『わたしね、実は今ね、ノーパンなの。
ねえ、剛くん、見せ合いっこしたい?
わたしはいいわよ。』
『実はね剛くん、あおいは下着つけてないの。
愛しのあおいとリアルお医者さんごっこしちゃうなら
今が最高のチャンスよ』
トカナントカな剛くんによる勘違い事態を避けようと、あおいも青蘭も話をボカして誤魔化していたものの。もし剛くんに妹がいたりして女児下着のサイズに詳しかったら、全く誤魔化しになっていなかっただろう。
「剛くんにあそこを見られたらどうするのっ」
と、ついついそう言いかけたあおい。
『ダメダメ、剛くんの特技と趣味はスカートめくり。
パンツ履いてないのバレたら、剛くんのことだから・・・』
いやいや、剛くんは確かにスカートめくりが趣味と特技かのように、女の子のスカートをめくりまくっていたのだけど、それは主に彼が小学生の低学年時代までのことなのだが。
それでも実は、あおいは剛くんには少なからず好意は持っている。それは剛くんが思いやりある優しい少年だから。
それで初等部卒業するまでのつい最近まで、ホラーな映画やテレビ番組を見た日の夜などは、あおいはお化けが苦手で怖がる剛くんとお風呂を一緒にしていたのだ。もちろん年頃のあおいはタオル巻いてなのだけど。
『剛くんが最近スカートめくりして来なくても
わたし、剛くんとお風呂一緒してたから・・・
男の子の剛くん、隙見て絶対わたしの見てたはず』
つい最近までお化けに怯えていた剛くんだから、ボーイフレンドというよりは守ってあげたい弟、いや便利な家来みたいな気がしていた、そんなあおいだけれど・・・。
暑がりな剛くんが学生ズボンの裾を膝下まで捲り上げた、その脛が見えちゃったけど、いつの間にか脛毛が生えていて・・・気のせいか声も少し低くなったみたい・・・。
入院したその日から三日連続でお見舞いしてくれて、小柄すぎるあおいを妹のように抱っこしてベッドから車イスに移してくれて、一緒に院内散歩してくれたりとか・・・。
それに、いたずら大好きなあおいだが、そのいたずらがバレちゃった時は叱られないようにと、あおい達をいつもいつも庇ってくれていた剛くん。
「ラジカセ男」
「VHS野郎」
「レコードマン」
なんて呼ばれてるのだけど。
それでも剛くんは誠実が信条で、あおいの内面の秘密だけは守り抜いた。あおいが何を悩んでいるトカ、あおいは誰が好きかトカ、あおいは誰を忌み嫌ってるかトカ、あおいは何を怒っているかトカ。
あおいはそれを知っているから、剛くんに毎日のようにスカートめくりされても、最近まで一緒にお風呂するほどの好意は持っている。
しかし、それはあおいにとって剛くんは同い年なのに、守ってあげたい弟。いや、便利な家来扱いだったけど。
だけど今、剛くんを男の子として初めて意識するあおい。ううん、いつの間にか、男の子から男の人になりつつあるように意識しちゃうあおい。そうなると、あおいの目に映る剛くんは「残念な、ややイケメン」ではなく、なんだか「頼もしいイケメン」でカッコイイ。
『バレンタインに慰めてくれた時、一瞬そう思ったけど
わたし剛くんを見直してみようかな?』
「ねえねえ剛くん、椅子なんか座ってないでここ来ない?
ほら、わたしたち年長さんの頃からの仲良しなんだよ?
ほらぁ、ここ座って。
何を離れて座って遠慮してんの?」
ニコニコ笑顔で、ベッドのマットをポンポン叩いて、剛くんに手招きするあおい。今のあおいは怪我人だからと、応じる剛くん。
ベッドに座ろうとしたとき、わざとじゃないのに自分の手があおいの手に触れてしまって、偶然に重なってしまう。
そんなつもりないのに、それであおいを女の子だと、ついつい意識してしまう剛くん。あおいも剛くんの事を更に意識しちゃって。慌てて、照れて、互いの手を引っ込める二人。しばらくして
「ねえ、剛くん、二人っきりだね」
あおいの言葉をどう解釈すべきか最早わからない、女の子とはカレカノの意味では交際経験の全くない剛くん。
それでも、今日こそはあおいに告白しようと、その意味でも見舞いに来た剛くんなのだ。互いが互いを意識する沈黙の時間。
その短い沈黙を破った、ブラウン系のブレザーに緑のリボンそして白のブラウスに、細い緑の格子柄の黒いミニな巻きスカートの制服の足音は
「あおい~青蘭来なかった?。あの子あんたのパン・・・」
その声は青蘭と双子の姉、あおいの四つ上の従姉の赤井紫蘭だ。青蘭を追い掛けて来て「あんたのパンツ、青蘭が忘れてるから」そう言いかけて、あおいにLOVEの剛くんがいることに気づいてやめたのだ。
その声に救われた思いのした、あおいに照れて、あおいに恥ずかしくて、一生懸命の試行錯誤した、あおいへの告白の言葉を出せなかった剛くん。
「お、オ、オレ、俺ちょっとトイレ行ってくる!」
『剛くん何あわててんの?』そう剛くんの後ろ姿を目で追いかけるあおいに、青蘭が忘れて行った、あおいのキャミソールとかパンツとか持って来た紫蘭は
「あおい、今のうちにこれ、パンツ履きなさい
ピジョンって水に薄めておしぼりにするの使う?
使うんなら水汲んで来ようか?」
「ううん、汗かいてないからいい
でも、もしかしてわたし、汗臭い?」
「ん?、全くにおわないよ。
あんたがいつもつけてるコロンしか
そうだ、キャミ着る?」
「いや、今はいいや。ちょっと暑いし
それにペタンコだもん、誰も胸見ないよ」
「パジャマどうする?
その浴衣みたいなのと着替える?」
「今日入浴日だから、それからでいいよ
それにこれ、もう一着借りてるの
こっちが楽だもん」
「そうだ、ねえねえ紫蘭お姉ちゃん
男の子意識したことある?
紫蘭お姉ちゃんも青蘭お姉ちゃんも
うちの緑お姉ちゃんも昔死んじゃった藍子お姉ちゃんも
赤井の家系の女はみんなが、お胸ぺたんこだよね。
わたしも育たないのかなぁ。」
「どうかしらね?
うちの場合はママが貧乳だからかもだし
でも、あんたのママ巨乳じゃん
赤井家が貧乳家系でも あんたは育つ可能性あるわよ。
それにさ、仮に貧乳のままでもさ
見知らぬ男に胸揉まれる痴漢されるよりいいじゃないの」
そんなころ、さっき偶然あおいの手に触れてしまい、あおいを意識して照れまくってしまった頭をトイレで冷やしていた剛くんは、あおいの病室に戻りつつあった。
「紫蘭お姉さん、あおい
病室入っていいですか?」
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