結婚式は卒業式の日に・・・の時間 4
あおいの結婚式前夜、大好きなあおいを、あおいの恋し愛する真鍋先生から取り返し、自分たち百合のものにする最後の告白の機会だったのに、あおいの目前で喧嘩してしまった、サナと初菜の二人。それでも、あおいのお家に向かう道すがら・・・。
「ねえねえ初菜ちゃん
わたくし達あおちゃんを取り合って喧嘩ばかりでしたけど
あおちゃんの結婚式ね、素直にお祝いしてあげましょうよ。
わたくし達ふたりの、大好きで大切なお友達なんですもの。」
「そうだよね。
何てったって十二年越しの恋だもんね。
想いが叶わないのは、わかってたんだよ。
あの二人、赤い糸どころか鉄の鎖で最初から繋がってたんだから。
それにさ」
何かを振り払うかのように深呼吸した初菜
「それに昼休みにあたし、美佐とゆかりに呼び出されてさぁ
言われちゃったんだよね。
「あおいの結婚式の邪魔したら絶交だからね!。
てか、ぶん殴る!💢」トカナントカ。
あおい並に強い美佐に言われるんならまだしも
いつもあおいの背後に隠れてる、弱っちいゆかりにさ。」
そう応える初菜。賢いサナはそれを聞くと、初菜が思い出しヒステリーを起こさないように、微妙に話題を変える。
「そうそう初菜ちゃん
ゆかりちゃんと待った先生の結婚式も
あおちゃんと真鍋先生の結婚式のすぐ後よねぇ。
ふたつのカップルが同じ日に同じ場所で結婚して
同じ船で同じ場所に仲良く新婚旅行なんて
なんだか素敵だけど前代未聞ね。
教え子と教師の、しかも二組のカップルが学校挙げて結婚式。」
「そだね。黒百合女学院始まって以来の前代未聞らしいよ。
よく学長や校長が認めたよ。
まあ、サナほどスーパーお嬢様でなくても
あおいもゆかりも高額寄付家庭だからさ。
しかも、あおいのパパは黒百合の理事。
さらに黒百合の母体を維新で創った面々の一人の子孫。
学長も逆らい辛いのは当たり前よ。」
「そうよねぇ
清楚清純が売り?の黒百合で二度と起きないわよね。」
「あおいによる、黒百合恋愛自由化革命も
あたしらが卒業したら終わりだろうし。
ほら、後輩たち不甲斐ない腰抜けばかりだから。
紫蘭先輩やしおり先輩がいた頃は元気いっぱいだったのに。」
道々そんな事を話しながら、あおいが超気まぐれの超気分屋だから「やっぱり結婚式やめた!」とならないように念押しで今日、あおいのお家に結婚式の最後の打ち合わせに来たというのに・・・。
明日が結婚式のあおいと真鍋先生、そしてゆかりと待った先生こと松田先生の目前で、自分たちの知らない、あおいの幼い日々の写真のアルバムを奪い合い殴り合いしてしまった、サナと初菜の二人。
当然の事ながら、極めて短気なるあおい。自分たちより背は低くても武術家の孫娘。いや、あおいの祖父はすでに亡くなり当主が代替りしてるから、武術家の娘。代々続く道場娘ゆえに、二人よりはるかに強いあおいを激怒させてしまって。
「うるさーいっ!
あんたたち、いー加減にしなさいよっ!
何度も言ってるでしょ。わたしはノーマルだぁ!。
あんたたち、前もって言っとくけどね
明日のわたしの結婚式、もし邪魔したら
あんたたち名前が土左衛門に変わって浮かぶよ?
わたしが武門の女だ!ってコト忘れてないでしょーね💢。」
ここまでのマジ切れは久し振りながらも、ついに激怒したあおい。でも怒りながらも、優しいあおいは二人に気を遣う。
「写真ちゃんと焼き増しして二人にあげるから。
わたしのこと、そんなにしてまで・・・
サナちゃん、初菜ちゃん
こんな悪魔なわたしを好きになってくれて、本当にありがとね。
わたしも二人が大大大大好きっ!。
でも、わたしノーマルなの。ごめんね。
それに真鍋先生が好きなの。
あの日のあんなわたしを守って寄り添ってくれた・・・
温かい気持ちを初めてわたしにくれた人
わたしを守ってくれたみたいに、わたしも先生を・・・
だって温かい気持ちをくれたんだもん。
真鍋先生は、大切で素敵な、わたしの一緒に歩きたい人。
でもサナちゃんも初菜ちゃんも大好きだから
今日だけ特別に。
ごめんね、昔よくふざけてた恋人ごっこみたいには
もう、くちびるには出来ないけど
最後のキスしてあげるね。
二人とも大切で大好きな、かけがえない、わたしのお友達!。」
大好きなあおいに、長いこと長いことハグされ、ほっぺにだけどキスして貰った初菜とサナ。そうして泣きながら、百合の初恋を終わらせるかのように少し微笑んだ二人は
「あおちゃんと真鍋先生
結婚おめでとう!。しあわせになるのよ。
ゆかりちゃんと松田先生も、結婚おめでとう!。」
それで『あおちゃんの結婚式が終わるまでは』と、あおいのメイクから、卒業式の制服からウェディングドレスへの着替えから、受付から、結婚式の全てを大人しく手伝っていたサナと初菜だったのだが。
大好きなあおいとの、あおいがバージンを真鍋先生に捧げる前の、最後の思い出の品。あおいの投げるプーケを思い出のドライフラワーにしようと決めていた、この二人。 あおいの手を離れたプーケを、火花を散らして睨み合い怒鳴り合い、奪い合うサナと初菜。殴り合いになるのも時間の問題。
それを、しあわせいっぱいな微笑みで見つめるあおい。
「ハレの結婚式で殴り合いはダメっ!」
サナと初菜のプーケ争奪戦をやめさせようとする美佐・ゆかり・みずき・千春・カネコと敦子。騒いでる皆があおいの仲よしグループ、あおい組の面々である。結婚式直前の朝卒業した、黒百合女学院山手校での楽しかった日々が、あおいの目に鮮やかに甦り浮かび上がる。
高等部でのあれは楽しかったね。
中等部でのあれは何月だったかしら?
初等部のあれは何年前だったかしら?・・・
みんなみんな、全部全部、わたしの大切な大切な、たからもの。
恋物語は過去に遡る。
『わたしの夢
黒百合女学院山手校 初等部
一年一組 赤井あおい
わたしは藍子お姉ちゃんのお兄ちゃんが大好きです。真鍋の瞬お兄ちゃんはいつもわたしを守ってくれます。それに毎日遊んでくれて、それから、いつもお風呂に入れてくれる、優しいお兄ちゃんです。
また、わたしが元気な女の子になれるように、空手や拳法も教えてくれる強いお兄ちゃんだし、勉強も見てくれる賢いお兄ちゃんです。
だから、わたしはお兄ちゃんのために頭が良くなって、元気な女の子になって、そして可愛いお嫁さんになって、お兄ちゃんにおいしい料理を、たくさんたくさん作ってあげたいです。そのためにわたしは・・・』
初等部一年生時代の作文を思い出している、あおい。
時間は流れ、中等部入学寸前の春休みに、黒百合女学院高等部教師になった瞬お兄ちゃんに再会したあおい。早速、愛情弁当を拵えて春休み中の高等部に押しかけて、前任者から部活指導を引き継ぎ中の真鍋先生を誘う。
「ねえー お兄ちゃん
弁当作って来たよ!
体育館の桜の下で食べよー!」
高等部二年生になり瞬お兄ちゃんとは既に、学校公認の教師と生徒の恋なのだけれど、根が真面目な真鍋先生は、あおいの誘惑にはノッてくれなくて・・・シビレを切らしたあおいはデート中に・・・
「うふ♥️
ねえー お兄ちゃん
ハグしてくれるだけなの?
ちゅーはしてくれないの?
わたしたち恋人なんだよ・・・♥️」
「赤井、俺たちは教師と生徒だぞ」
「ダメっ!
名字の赤井じゃなくて
あおいって呼んでくれなきゃ
ゆるしてあげない!」
🎵キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
幼稚部のチャイムが微かに届いてるのは、初等部の体育館だ。明後日が初等部卒業式のあおいたち六年生。この日は初等部に隣接の中等部、その風紀教師の白井良子先生が内部入学組のあおいたち初等部六年生のため、入学までの手続きや春休みの生活指導に来ているのだが・・・
白井先生が鬼教師なのを忘れて、しあわせな結婚式の夢のなかのあおい。隣に座る初菜があおいの制服の袖を引っ張り起こそうとしたのを、白井先生に見つかってしまった。
「住吉!バケツに水汲んできなさい!」
「先生・・・それはやめてあげて」
「いいから汲んできなさい!」
しぶしぶ初菜が汲んで来た水を、あおいの頭からぶっかける白井先生。
「キャー!
つ、つめたーい!
このあおい様のしあわせなデートを妨げ
しかも水ぶっかけるとは、いい度胸だ!
誰だよっ? 出て来なっ!💢💢💢💢」
激怒モードで立ち上がるあおいだが、初菜があおいの背後を指差しながらささやく。振り替えるあおい
「あおい、まずいよ
入学説明でよりによって
白井先生の前で居眠りなんて・・・」
「あ・・・」
しまった!と、ベロを出して頭を掻くあおいだが
「赤井さん、「うふ♥️」って何なのかしら?
あなたがキスをおねだりしていたのは、誰かしら?
入学前からやらかしてくれるとは・・・
校庭10周、走って来なさい!」
初等部卒業を明後日に控えた放課後のあおい組の仲良し七人娘たちは、初等部体育館の傍の桜を見上げている。
「あー!
つぼみ見っけ!
中等部入学の頃には咲くね!」
つぼみを見つけた美佐。
「この桜、早咲きだからね
春休み中には満開でしょ」
そう言いつつも
「藍子お姉ちゃんの桜さん、そろそろお別れね」
そう名残を惜しむあおい。
「あおちゃんがまた喋れるようになった
そのきっかけが、この桜だよね!」
初菜が懐かしそうにあおいと初めて出逢った日の事を話しだす。あおい組の思い出のエトセトラ・・・時空はあおいの幼稚園時代へ
《序章 花嫁は中学生?篇 完》
次ページは《恋の始まり篇 年長さんあおいの冬と春》の章で
《あおい6歳 戻らないクリスマスの時間》です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます