結婚式は卒業式の日に・・・の時間 2

 いま誕生した新しい夫婦が手を繋いで礼拝堂から出てくる。その二人の背後の礼拝堂からは、新郎新婦を祝福し送り出す『谷村有美の恋に落ちた』の聖歌隊合唱が聴こえてくる。


 その合唱が終わった瞬間、しあわせのプーケを青空高く放り投げる花嫁。そのしあわせのプーケを二人同時に掴んでしまい、睨み合い火花を散らしてプーケを奪い合う二人は花嫁と一緒に今朝、黒百合女学院山手校の高等部を卒業した梅宮サナと住吉初菜。




 新婦、赤井あおいへの二人の六年余りの百合の初恋は結局は実らず、あおいは十二年越しの交際の、一回り歳上の男性との初恋を実らせてしまった。

 しかも、そのあおいの彼氏・・・一回り歳上の男性は、自分たちの教師でありながら、あおいを巡る二人の百合な初恋のお邪魔者な、この二人の恋敵。この二人にとって今日は、決して来ては欲しくなかった、まさに悪夢の日。なのに決断すれば行動は極めて早くて、猪突猛進を絵に書いたような、また竹を割ったかのような些細なことに拘らない・・・。

 そんな男の子っぽい性格のあおいは「急がば回れ」ではなく「善は急げ」とでも言わんばかりに、卒業式の今日、憧れのお兄ちゃんである黒百合女学院高等部教師の真鍋瞬先生と、結婚式を挙げたのである。


 それでもサナも初菜もあおいが大好きで、卒業式から結婚式に向かうあおいの、ウェディングドレスへの着替えからメイクから受付から、結婚式の全てを手伝っていたのだけれど・・・。


「サナっ!てめえはお嬢様なんだから

 花くらい幾らでも好きなだけ買えるんだろうがっ!。

 何でお嬢様のくせに

 庶民ぶりっ子してプーケトスに参加してんだよっ!💢」


とヒステリックにサナにぶつけられる、初菜の罵声。初菜は大のお嬢様嫌いなのである。

 もし黒百合に派閥があるなら、彼女は良く言えば単刀直入で悪く言えば何事にもヒステリーな直情型の、でもそれでも一応は人望もある、庶民グループの番格とでも言うべき存在なのだけれど・・・初菜のライバルのサナが『初菜には負けじ』と・・・。このサナは人心配慮型の言葉使いに慎重なタイプ。だがブラックなサナになってしまうと、かなりのお転婆娘。

 しかも「近県九県ナンバー1のお嬢様の中のスーパーお嬢様のサナがお世話して差し上げますわ」と、自ら名乗ってしまうほどのお嬢様グループの代表格である。 あおいやゆかりもお嬢様だけど万人平等に人に接するのに、鼻につく部分がサナの場合は時として出るのだ。

 そのサナが『負けじ!』と初菜に対抗してくる。すでに嫌味たっぷりな、ブラックなサナになってしまっている。


「あらぁ初菜ちゃん

 あなたのいつもの「国民平等!差別反対!」は

 口先だけ綺麗事の嘘八百だったのかしらぁ?。

 二枚舌な心にもない美辞麗句は逆に見苦しくてよ。

 お嬢様でも欲しい物は欲しいのっ!。

 お嬢様差別、断固絶対反対っ!💢💢」


 それを聞いて、ヒステリックな炎が一気に着火された初菜。さっきまでは、あおいの投げたしあわせのプーケを半分こして、二人で分けるつもりもあったのに、親友サナに譲る気は消え失せてしまったのだ。

 火花を散らして大好きなあおいとの、あおいのバージン最後の思い出の品となるプーケを奪い合う二人。



 昨夜も結婚式の最後の打ち合わせに、あおいのお家に二人は来ていたのだけれど、そこでこの二人は・・・

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