序章 花嫁は中学生?

結婚式は卒業式の日に・・・の時間 

 梅の香りが桃の花びらに変わりそうな、とある春の日のここは黒百合女学院山手校隣接のホーリネス希望教会。無論、黒百合女学院牧師の牧会する教会である。

 その礼拝堂の厳かなる美しさに目を奪われていると、重厚なる扉が開いた。中から漏れる美しい合唱と共に、そこから出てきた新婦は・・・。


「中学生の女の子の結婚なんて違法だろが!💢」


と誰もがそう勘違いしそうな程に新婦の背はかなり低く、女性らしさの象徴の胸の膨らみも全く無く、顔までかなり幼い。

 まだメイクされてるから、大人に憧れ背伸びしてお化粧した中学生程度には辛うじて見えているものの、彼女の普段のすっぴんは誰がどう見ても、少し背の高い小学生。

 それでも彼女は、黒百合女学院の山手校高等部を今朝のさっき卒業したばかりの、そしてこの春に同じ黒百合女学院の中央校大学部に入学する予定の、十八歳なのである。




世の中に存在する、ロリコン男性諸氏が


「羨まし・・・いやいや怪しからんっ!💢ゆるせない!💢」


と花婿に対し羨みと妬みで怒りだしそうな程に幼く見え、その幼さが清楚清純さを際立たせ、これぞ名門お嬢様学校卒業生と見える花嫁。でも実はその花嫁の内面は、とんでも悪魔なのだけれど・・・それは、いずれ。




 ともあれ、そんな新婦と手を繋ぐ新郎。今日誕生した新しい夫婦が礼拝堂から出てくる。その背後から聴こえるのは


🎵掴まれた腕に振り向いて

 抱きすくめられて動けなくなる

 俯いた頬を手のひらで掬って

 唇を重ねた 狂おしいほど


 車を停めて海岸線歩いた

 細い月が蒼く照らしてた

 あなたの歩幅に合わせて歩いてみた

 泣きたいほど しあわせだった


 愛することは温かいこと

 この気持ち初めてあなただけがくれたの


 言葉には出さなくていいから

 このまま黙って抱き締めていて

 たとえ他の誰かを傷つけてでも

 引き返せないほど 恋に落ちた


 数えきれないほど 曲がり角くぐり抜け

 そして今 あなたへと着いた

 優しい背中にそっと寄り添ってみた

 ねえ きっとあなたで良かった


 愛する瞳 曇らぬように

 あなたの笑顔をずっと守り続けたい


 敗けないで どんな哀しみにも

 輝くあしたが来ると信じて

 せつなさも喜びも あなたとならば

 分かち合えるの そう永遠に


 愛することは 生きていくこと

 あなたの隣をずっと歩き続けたい


 掴まれた腕に振り向いて

 抱きすくめられて動けなくなる

 俯いた頬を手のひらで掬って

 唇を重ねた 狂おしいほど

 このまま永遠に抱き締めていて🎵


 クリスチャンスクールらしく教会らしくクリスチャンらしく、結婚式では聖歌を皆で讚美した。でも送り出しだけは、新婦が小学生時代からずっと聖歌隊に参加し協力してきた故の、またお嬢様だからとかクリスチャンだからとかでの堅苦しいのが嫌いな新婦に合わせ、新婦の好みの


「谷村有美」の「恋に落ちた」


での祝福の送り出しなのである。




 そして、その聖歌隊の合唱が終わった瞬間、花嫁がプーケを青空高くに放り投げる。そのプーケを・・・ 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る