第七話【山嵐】
その夜、坊っちゃんと山嵐はこの不浄なシコクを離れた。船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした。神戸から東京までは直行で、新橋へ着いた時には、ようやく娑婆へ出たような気がした。山嵐とはすぐ分れたぎり今日まで逢う機会がない。
おかしい。『神戸』『東京』『新橋』とはまともに日本各所の地名である。なぜ突然こうした記憶が現れたものか。
それに〝山嵐〟とはいったい誰のことだ。突然記憶の中に現れたヤマアラシ。これまでの記憶の上に山嵐が積み上がるとしたらそれは供回りの中に居る者に違いない、と坊ちゃんは考えた。
どうやら坊ちゃんは〝シコク〟で生き残るか消えるかという恐怖の体験を強いられ、這々の体でシコクを逃げ出したらしかった。
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