登場と嫉妬
救護室は受付や更衣室があった近くにあり、僕は救護室を出た後、とりあえずプールの方へと向かった。
プールは相変わらずと言っていいほど、全く混んでおらず、ガラガラだった。
さてと、二人……いや、倉田さんはどこかな。
それにしても、まさかこんな所であの人に会うなんてな……
本業はこっちって言ってたけど、そういう資格でも持っているのだろうか。
そんなことを考えながら、売店の近くにあるテーブルイスが設置された場所までやってくると、見知った姿を見つけた。
向こうも僕に気づいたようで、急いでイスから立ち上がり、慌ててこっちに駆け寄ってきた。
「大丈夫だった!?」
ものすごく、心配した様子でそう尋ねてくる。
「うん。どこにも異常はないよ」
「そう、ならよかったわ……それより、ごめんなさい。私のせいで……」
「気にしないでよ。わざとじゃないんだし。とにかく、何もなくてよかったよ」
不安を取り除くように僕は笑みを浮かべてみる。
そんな僕を見て、倉田さんも少しだけ微笑んだ。
「って、あれ……?」
僕は倉田さんが立ち上がったイスの隣に座っている人物に目が止まった。
あれはその……そうだよな?
それを確かめるようにゆっくりと近づいていく。
「桐谷さん……」
「……」
桐谷さんは何も言わず、顔を赤らめながら、カップに入ったジュースを飲んでいた。
「その……似合ってるよ……?」
「ゴプッ……!」
僕のその言葉を聞いた瞬間、飲んでいたジュースを盛大に拭いた。
い、言っちゃいけないセリフだったかな……
というのも、桐谷さんは倉田さんと同じくビキニを着ていた。
しかも、黒のビキニ。色白な肌と相まって、とても似合っている。
おまけにこれでもかと桐谷さんのスタイルを強調している。
引き締まっているところはしまっており、出ているところはしっかりと出ている。
まさに眼福としか言いようがなかった。
まさか、倉田さんと同じでビキニを着ているなんてな……
てっきりスク水で着てくるのかと……
いや、それはそれでありな気がする……って何、考えてんだよ……!
「よかったわね。桐谷の水着姿が拝めて」
すると、後ろに立っていた倉田さんがニッコリと微笑む。
しかし、全く笑っている感じがしない。
むしろ、怒っている気がする。
なんか圧が身体から出ている気がするんだけど……
ま、もしかして、なんか怒ってる……?
「何か飲むでしょ?買ってくるわね」
そう言って、倉田さんは悪魔の微笑みを浮かべたまま、近くの売店へと向かっていった。
な、なんで怒ってるんだ……?
僕が桐谷さんの水着姿を褒めたから?
でも、倉田さんのことだって褒めたし、別に悪いことは言ってないと思うんだけど……
「おい……」
「え……?」
そんな僕に桐谷さんが話しかけてきた。
「その、気を付けろよ……?」
「え、う、うん……」
気を付けろ。その言葉の意味がなんとなく分かり、僕は頷くのだった。
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