疲労

 お母さんが帰った後、僕はテーブルイスに座ったまま、ぼーっとテレビを見ていた。


 それにしても遅いな……


 淹れたばかりのコーヒーをすすりながら、チラッとリビングにかかった時計を見てみる。

 間も無く、夜の6時になる。

 しかし、未だに倉田さんと桐谷さんからは連絡がない。

 そろそろ帰ってきてもいいと思うんだけど……

 用事が長引いているのだろうか。


 そんなことを思っていると、ガチャっと玄関のドアが開く音が聞こえてきた。

 どうやら、帰ってきたようだ。


「ただいまー」


 リビングへ入るドアを開けながら、倉田さんの声が聞こえてくる。


「おかえり。遅かったね?」


「え、ええ。ちょっと色々あってね……」


 僕の問いに、何故か倉田さんはばつが悪そうだった。

 なんだろう……

 言いにくいことでもあるのかな……


「こちらにも色々とあるんだ。それにお嬢は疲れているから、代わりにこれを買ってきたぞ」


 桐谷さんはそう言って、袋に入った何かをテーブルの上に置いた。

 袋から見るに、ファーストフード店のハンバーガーのセットのようだった。


「あ、ああ、ありがとう……」


 二人の感じからして、これ以上は聞けない感じがするし、あまり掘り下げないでおこう……

 袋から中身を取り出しながら、僕はそう思った。


「あら、誰か来ていたの?」


 すると、台所の流しに使ったカップが置いてあったので、倉田さんはそう聞いてきた。


「あ、うん。倉田さんのお母さんがね……」


「そう、母が……やっぱり来たのね……」


 倉田さんはそう言って、カップを見つめていた。

 やっぱりってことは来ると思っていたってことだよね。だから、あのお母さんが好きな紅茶を買っていたんだ。


「すごく倉田さんのこと、心配してたよ。それに何かあれば力になるって言ってくれたから」


「それはありがたいわね。母は私以上に父の暴走を近くで見ていたから、こんなことになってしまって、少し落ち込んでいてね。だから、あなたに会いにきたのかもね」


「僕としても会えてよかったよ。色々と聞けたからさ」


「なら、よかったわ。さ、ご飯にしましょ。色々動いて疲れちゃったわ」


 そう言って、倉田さんは洗面所に向かい、手を洗いにいった。


 ん、動いて疲れちゃった……?

 出歩いたって意味かな……

 そんな歩き回る用事だったのだろうか。

 まぁ、あまり気にすることないか。

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