母
月曜日。
学校が終わると、僕は一人でマンションまでの道を歩いていた。
いつも三人で帰ってくるが、今日は倉田さんと桐谷さんは用事があるとかで遅く帰ってくるそうだ。
そういえば、前にもこんな感じあったよね……
用事というのは、倉田さんのお父さん絡みなのではないかと思ってしまう。
まさか、帰ったらまたお父さんが中にいる……なんて、ことは避けたいけれど……
そんなことを思いながら、僕はエレベーターを上がり、玄関の前に向かう。
「……」
すると、そこには、こ綺麗な女性が立っていた。
玄関の前でじっと立ち尽くしている。
な、なんだろう……
セールスってわけではなさそうだし……
いや、そもそもここはオートロックのはずだ。
訪問者はまずは部屋番号を押して、インターホンを鳴らさないといけないはずだ。
と、なるとあの女性は……?
「あら……?」
「あ……」
僕がそんなことを考えていると、視線に気づいたのか女性はこちらを見てきた。
そして、僕の顔を見た途端にニコッと微笑み、歩み寄ってきた。
「初めまして。あなたが奏多君……よね?」
「え……あ、はい、そうですけど……」
なんで、僕の名前を……?
そんな僕の疑問を消すように女性は言葉を続けた。
「いきなり、ごめんなさいね。
「え……ってことは……?」
「ええ、明里の母です」
「あ、ああ……そうでしたか……」
で、でも倉田さんのお母さんがここに何の用なんだろう……
でも、このままここで話すのもあれだし……
「ここで立ち話もなんですから、とりあえず中に入りますか……?」
「ええ、ありがとう。気が利くのね」
そう言って、お母さんはニコッと微笑んだ。
当たり前なんだけど、倉田さんのお母さんだから、やっぱり美人だよな……
倉田さんの容姿はお母さん譲りだというのがよくわかる。
それにしても、倉田さんのお母さん……
一体、幾つなんだろうか……
おそらく40歳は超えているだろうとは思うが、ものすごく若々しく見える。
いやいや、待て。そんなことはどうでもいい。
僕個人としては、お母さんには一度会って話しをしてみたいと思っていたんだ。
倉田さんのお父さん、つまりこの人からしたら主人というわけだが、その主人が娘に対して行っていることをどう思っているのか。
ひいては、僕や桐谷さん、香澄ちゃん、多くの人を巻き込んでいることをどう思っているのか。
その辺りのことを聞いてみたかったんだ。
唯一、許婚の件を反対して人だとは倉田さんから聞いているから、味方だとは思うが……
とにかく、ここに来てくれてよかった。
僕はそう思いながら、玄関のカギを開け、お母さんと共に中へと入っていった。
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