4章
ドキドキ
「ん、なんだこれ……?」
週末。
僕は近くのコンビニでみんなが飲めそうなジュースを買った後、マンションに戻った。
その途中、郵便受けに郵便が来てないか確認していたのだが、その中に封筒に入った郵便が届いていた。
裏を見ても差出人が書いていない。
いや、そもそも切手すら張られていない。
ということは、直接ここに入れたってことだよね……?
そのことを思った途端にこの封筒が怪しさ満点に見えてくる。
と、とりあえず、みんなのところに持って行こう……
まぁ最悪、桐谷さんがいればなんとかしてくれそうだし……
完全に他力本願だが、この際勘弁してほしい。
僕はその郵便とジュースが入った袋を持ちながら、エレベーターを上がり、そして玄関のドアを開ける。
「ただいま……」
言いながら、靴を脱ぎ、リビングの方へと向かう。
「おかえりなさい」
リビングにはリラックスした様子の倉田さんと桐谷さんが何やら雑誌を読んでいた。
その様子が新鮮で僕は少し驚いた。
「あ、あのさ、今、郵便受けを見てきたんだけど、こんなものが入ってて……」
僕はゆっくりと手に持っていた封筒をテーブルの上に置いた。
「これって……」
言いながら、倉田さんはその封筒を手に取ると、次の瞬間、上の部分を手でちぎり出した。
「ええええ!?そんないきなり……!」
も、もし爆弾とかだったらどうするんだよ……!?
まぁ薄いからその線は無いかもしれないけど、もしかしたらということもある……
それに確認もせずにちぎり出すなんて……
「ああ、大丈夫よ、これ、父からだから」
しかし、倉田さんは僕の心を読んだようにそう言った。
え、お父さんから……?
「ほら」
そして、倉田さんは封筒の中身を取り出して、僕に見せてきた。
「え、これってプールのチケット……?」
倉田さんが取り出したそれはプールのチケットだった。
ただし、プレオープンご招待と書いている。
「父はまぁそれなりに業界では有名人だから、こういうのがよく届くのよ。私も母と行ってたりしたわ。今回は私たちで行けってことね」
「な、なんだ、プールのチケットか……」
僕はほっと一安心して、イスにどかっと座った。
「え……?ああ、差出人が書いてないからなんだろうと思ったんでしょ?」
「う、うん……実は……」
「私も初めて見た時は少し怖かったわ。でも、後で父の悪趣味だってわかってね」
「悪趣味……」
まぁ確かに褒められた趣味では無いよな……
しかし、実の娘にここまで言われるなんて少しかわいそうになってしまう。
「それにしてもプール……」
倉田さんはチケットを眺めながら、そう言った。
「どうしたの?」
「え……ああ、いえ。なんでもないわ。それじゃあ、せっかく送ってくれたんし、来週から行けるみたいだし、行きましょうか」
「そうだね」
こうして、僕たちはお父さんの送ってくれたプール施設に行くことになった。
って待てよ、プールってことは、水着……だよね……?
やばい、なんかドキドキしてきた。
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