企み
それぞれ適当なドリンクを注文し、席に座る。
僕の隣は倉田さん、向かい側に桐谷さん、その隣に香澄ちゃんという具合だ。
他のお客さんからは、女の子をはべらせている男にでも見えるのだろうか……
店内に入った時から、やたら視線が気になる。
まぁ、確かに美少女だらけだし、そうなるよね……
「それにしても、二人はいつのまに仲良くなったの?」
席につき、コーヒーをすすりながら、倉田さんがそんなことを聞いてきた。
「あ、うん。実はたまたま香澄ちゃんが引越しの買い出しをしているところに出くわしてさ。それで大変そうだからって手伝ったんだよ」
「そうだったの。それにしても、よく一人暮らしが認められたわね……」
少し驚いた様子の倉田さん。
一人暮らしするのってそんなにハードルが高いものなのだろうか。
いや、きっと、それは香澄ちゃんの家系が関係している気がする。
「実は、お父様から許可をいただきまして……」
言いづらそうに香澄ちゃんは口を開いた。
「お父様って香澄ちゃんの?」
「いえ、お嬢様のです」
「あ……」
やっぱり、思った通りだったか。
ということは倉田さんのお父さんってことだよね……
「香澄のことはなるべく自分の目の届く範囲に今まで置いておいたはずなんだけどね……あの人も何を考えているのやら……」
窓から外を見ながら、倉田さんはそう言った。
ぼんやりとどこか明後日の方角を見ているように見えた。
確かに今までの行動や言動を考えたら、そう思うのも仕方がない。現に僕の中では、要注意人物だからな。
「そうだよね……」
あのお父さん、やっぱり何を考えているのかわからないな……
まぁ香澄ちゃんを自由にさせたことには間違いないだろうけど、あの人のことだから、きっと色々考えてやっているんだろう……
気をつけて行動していかないとな……
僕は心の中で今一度、気を引き締めながら、運ばれてきたオレンジジュースに口をつけるのだった。
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