寄り道

 学校終わり。


「♪」


 僕達は商店街をぶらついていた。

 僕達というのは、倉田さん、桐谷さん、僕、そして、ものすごくご機嫌な香澄ちゃんの四人だ。


 というのも、香澄ちゃんから僕達に一緒に帰りたいとお誘いがあり、こうして商店街の方まで来て、寄り道しているわけである。


 しかし、周りから見たらすごい光景だよな……

 だって、ぱっと見、三人の女の子を連れて歩いてるように見えるわけだもんな……

 実際は二対二なわけなんだけど……

 いや、本当に未だにこの子が男だなんて、信じられないよ……


「ただ、ブラブラ歩くのもつまらないし、どこかでお茶でもしない?」


 すると、僕の後ろを歩いている倉田さんが声を上げた。


「あ、いいですね!いきたいです!」


 それを聞いて、僕の右隣にいる香澄ちゃんが元気よく返事をした。


「それにしてもこんな風に寄り道するなんて、憧れだったので楽しいです」


「え、寄り道が?」


 比較的、普通な、ありきたりな光景だと思うけど……


「桐谷の家系はね、色々と厳しいのよ。今でこそ、色々自由にできているけど、高校に入るまでは、かなり制限があったのよ」


「そ、そうなんだ……って、もしかして香澄ちゃんも色々修行とかしてたの?」


「いえ、僕はそこまでは……舞衣ちゃんが年長者ということもあって、色々引き受けてくれてたので」


 舞衣……って、ああ、桐谷さんのことか。

 うーん、一般的な意見で言えば、桐谷さんは女の子で香澄ちゃんは男の子なんだから、香澄ちゃんに任せる気もするけどな……

 まぁそういう差別が嫌で、桐谷さんは色々頑張ってきたわけなんだろうけど。

 でも、この香澄ちゃんのか弱い感じを見れば、納得のいく部分は大きいな。

 だって、ちゃん付けの方がしっくり来るくらいだもん。


「ねぇ、ここでいいんじゃない?」


 僕がそんなことを考えていると、倉田さんが声をかけてきた。

 その声で顔を上げると、僕達の隣には有名なチェーン店の喫茶店があった。


「ああ、そうだね。ここに入ろうか」


 そうして、僕達は喫茶店の中へ入っていくのだった。

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