反応
とりあえず、朝ごはんを食べ終え、倉田さん、桐谷さんと共に家事をどう分担するか、テーブルイスに座り、話し合いをする。
「まずはご飯だけど、これは僕も練習をすれば作れると思うんだ」
「まぁそうね。またスクランブルエッグにならないようにね」
言いながら、倉田さんは苦笑を浮かべた。
「いや、まぁそれは本当にごめん……でも、今はネットとかで調べれば、作り方とか載ってるしさ、できると思うんだ。そりゃ倉田さんほど上手くはできないと思うけど……」
「いえ、そういうのは気持ちが大事だと思うわ。うん、そうね。それじゃあ、月、水、金の朝ごはんと土曜日の晩御飯を頼んでもいいかしら?」
「う、うん!もちろん!」
「ふふ、ありがとう。それじゃあ、次は洗濯はどうしましょうか」
「お嬢。それは私が」
「あら、あなたが?」
「ええ、洗濯くらいどうってことありません。それに干すのは慣れてますから」
干すのは慣れてるってどういう意味だろう……
しかし、それは聞く勇気は僕にはなかった。
「そういうことなら、洗濯は桐谷に任せようかしら。じゃあ次は掃除かしらね。自分達の部屋は自分達でするとして、リビングなんかはどうする?」
「週替わりでやればいいんじゃないかな?平日学校だから、中々できないと思うし、土日のどっちからにやればいいかなって思うんだけど」
「確かにそうね。じゃあ、お風呂掃除なんかも週替わりでいいかしら?」
「うん。とりあえず明日からの一週間は僕が担当するから、その次は桐谷さん、その次は倉田さん、でまた僕って感じで回して行こうよ」
「わかったわ。それじゃあ、3人で力を合わせて頑張っていきましょう」
倉田さんはそう言って、小さく微笑んだ。
僕はその笑みを見て、提案をして良かったと思った。しかし、口で言うだけじゃダメだ。きちんと行動も伴わないと。
僕はまず、最低限の朝ごはんを作れるようにならないとな……
幸い、今日は休みだ。特に予定もないし、ネットで色々と検索してみよう。
♦︎
「これは確かに美味しそうだな……」
僕は携帯で色々と動画を見ながら、部屋で一人言のように呟いていた。
そろそろお昼の十二時になろうかという頃。
かれこれ、二時間近くは動画を見ていた。
基本的な朝ごはんの作り方から、世界の朝ごはん、ひいてはプロが作るかなり凝った朝ごはんなんかの動画を見つけたりして、結構面白かった。
さすがにすぐには作れないが、倉田さんに協力してもらえれば、作れたりするんじゃないかと思う。
最も、それは僕が基本的なことができるようになってからだと思っているけれど。
「ちょっといいか?」
僕がそんなことを考えていると、部屋がノックされた。声の主は桐谷さんだ。
「どうぞ?」
何の用だと思いながら、返事をすると、ゆっくりとドアが開く。
そこには長袖にジーパン姿の桐谷さんが。
相変わらず、細いな……
ラフな格好なのに、どこかビシッとしている。
「どうしたの?」
「ああ、いや……その、礼を言うのを忘れていたからな……」
少し恥ずかしそうに桐谷さんは言った。
「礼?」
「そのお嬢のことだ。私はすぐそばにいるにも関わらず、体調のことに気がつかなかった。これでは護衛失格だ」
「近くにいても、分からないことだってあると思うから仕方ないよ。幸い、今回は大事には至らずに済んだしさ、みんなで家事も分担することになったし、これから気をつけていこうよ」
「奏多……うん、そうだな。まずは私にできることをしようと思う」
「うん。頑張っていこうよ」
そう言って、僕はニカっと笑ってみせた。
「……!」
しかし、何故か僕の顔を見て、桐谷さんは慌てたように顔を隠すとそのまま部屋の前から去ってしまった。
あれ……
なんだろう、今の反応……
くしゃみでも出そうになったのか。
って、そんなわけないよな。
でも、何だろう、今の反応……
すごく気になるな……
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