負担

「本当に驚かせないでよ……」


「別に意地悪したわけではない……」


「まぁ、何事もなくてよかったんだけどさ……」


 僕はため息を吐きながら、床にへたり込んだ。


 そんな僕の横にはベッドですやすやと眠る倉田さんが。


 というのも、桐谷さんからの電話は倉田さんが風邪にかかったという至って平凡なものだった。

 中々、起きてこないから様子を見に行ったら、高熱でうんうん唸っていたらしく、桐谷さんは気が動転してしまい、慌てて僕に電話してきたというオチだった。

 とりあえず、薬局でスポーツ飲料と風邪薬を買い、おかゆを作り、それと一緒に薬を飲んでもらったところ、先ほど倉田さんは眠りについた。

 恐らく、ただの風邪だと思うので、ゆっくり寝てもらえれば、すぐに良くなるだろう。それにしても人騒がせというか、なんというか……

 全力疾走で帰ってきたから脇腹が痛いよ……


「そういえば、桐谷さんはご飯食べたの?」


「一食くらい抜いても問題はない」


「いやいや……うーん、この様子じゃ、晩御飯を作ってもらうわけにはいかないから、何か食べられるものをまとめて買ってくるよ。桐谷さんは隣にいてあげて」


「わ、わかった……」


 僕はそう言ってから、床から立ち上がり、財布片手にマンションを出ていく。


 そして、スーパーまでの道を歩きながら思う。


 倉田さんが体調を崩したのは僕達の面倒をずっと見ていたからなんじゃないか?

 家事のほとんどを任せて、本人は嫌がる素振りもなかった。

 それに甘えて、沢山のことをやってもらって……

 毎朝、僕達のお弁当のために早起きして休まる時間なんてほとんどなかったんじゃ……

 今更、後悔しても仕方ないのだが、どうしても考えてしまう。

 倉田さんの体調が戻ったら、きちんと話し合わないとな。

 三人で生活していく以上、大切なことだから。

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