再会
週末。僕は一人、マンションを出てショッピングモールへとやってきていた。
大型の本屋に入り、ファッション雑誌を手に取って、中を見てみる。
しかし、元々、ファッションに知識のない僕が読んでも、どのコーデがどうとか、人気があるとかよくわからなかった。
結局、何冊か読んでみるものの、どれもこれもピンと来るものはなく、仕方なく本屋を後にする。
何故、突然こんなことをしているのかと言うと、僕はかねてからファッションセンスがない。
服は着れればそれでいい程度に思っていた。というのも、誰かと出かけることなんて中学になってからほとんどなかったし、見てくれなんて気にしていなかった。が、ここ最近、誰かと出かけることがよくある。
幸いにも制服で出かけることもあるので、助かっているのだが、今後私服で、特に倉田さんと出かける時、隣を歩いていても恥ずかしくない格好にしておきたいのだ。だからこそ、こうして慣れないファッション雑誌を読んだりしているのである。
「はぁ、どうしようかな……」
僕は近くのベンチに座り、ため息を吐いた。
ネットで調べてもよくわからないから、雑誌を買いに来たんだが、それもダメとなると、後は洋服屋に直接行ってみようか……
しかし、行ってもどれを買えばいいかわからないしな……
秘技、あのマネキンが着てる一式下さい方式もあるが、それはだいぶ恥ずかしいから、最後に取っておくことにする。
倉田さんに聞いたら、色々と教えてくれそうだし、いい話のネタになりそうだが、逆にこんなにセンスないの?と引かれる可能性もあるから、悩ましいところなんだよな……
桐谷さんはそういうのに興味なさそうだし、となると、藤堂さんに相談してみようかな。
そんなことを思いながら、ベンチに座りながら、ぼーっとしていると、大きな荷物を抱えている人物が目の前を通り過ぎた。
「はぁはぁ……」
息を切らせながら、段ボールに包まれた荷物を両手に持ちながら、歩いている。
随分、重そうだ。
チラッと見た感じだが、女の子に見えた。
誰か手伝ってくれる人はいなかったのだろうか。
「あ……!」
と、その時、うまく足が上がらなかったのか、床につまずいてしまい、両手が塞がっていたため、そのまま倒れてしまう。
幸いにも、行き交う人はほとんどいなかった場所だったため、誰かにぶつかってしまうという二次災害はなかった。
僕はベンチから立ち上がると、急いでそこに駆け寄った。
「大丈夫ですか……って……」
僕は倒れた人物の顔を見て、少し驚いた。
「は、はい、大丈夫です……って、あ……」
かくいう彼女も僕の顔を見て、目を見開き、驚いた様子だった。
倒れた女の子はつい先日、僕に道を訪ねてきた女の子だったのだ。
よく見れば、この前と同じ服装だった。
「奇遇だね、また会うなんて」
言いながら、倒れてしまった段ボールの箱を持ち上げる。
ん、結局重いな……
これは、女の子が運ぶには結構体力いるだろうな……
「ですね。びっくりしました」
はははと笑いながら、立ち上がり、服に着いたホコリを払う。
「それにしても、随分重い荷物を運んでるんだね。これは一体?」
「あ、はい。実はこの街に引っ越してきまして、それで生活に必要なものを買ってきたところなんです」
「引っ越し……ってことは、もしかしてこの前、高校までの道を尋ねてきたってことは……」
「はい。編入するので、手続きなどを少し」
「そうだったんだね。って、もしかして、一人暮らしなの?」
僕は床にゆっくりと置いた段ボールの箱などに目を向けた。
レンジにケトル、ドライヤーなどを購入したようだったが、その誰もが一人暮らし向けのものに見えたのだ。
「あ、はい。親元から離れて、暮らすことになりまして……」
「そうなんだ。大変だね」
「いえ、これも自分の決めたことですから」
そう言って、彼女は再び荷物を掴み出した。
「助けていただいてありがとうございました。それじゃ」
ペコっと頭を下げた後、ゆっくりと僕の前から離れていく。
「よかったら運ぶの手伝おうか?」
「え、いえ、そんな大丈夫ですよ……」
「でも、すごく大変そうだし、このまま放っておくことはできないよ」
「あ、ありがとうございます。それじゃ、これを……」
言いながら、渡してきた段ボールの箱を僕は掴み、二人並んで歩いていくのだった。
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