真相に向けて
夜の七時を過ぎた頃。
僕達はショッピングモールの中で買ったファーストフード店のハンバーガーとドリンクの入った袋を持ちながら、マンションへ帰る道を歩いていた。
ショッピングモールからマンションまでは歩いて十分ほどの距離だったので、その近さに僕は少し驚いた。これだったら、行きたい時に行けるなと思った。まぁそういう時があるか、分からないけど。
「すっかり遅くなっちゃったわね」
「だね。でも、楽しかったよね」
「そうね。みんな可愛かったわ」
言いながら、ネコカフェにいた時の事を思い出しているのか、倉田さんは少し微笑んだ。
その顔がすごく可愛くて、僕は思わず見惚れてしまった。
「また行きましょうね……って、どうしたの?」
僕がジッと顔を見つめていたので、倉田さんは首を傾げた。
「い、いや!なんでもない!あ、そ、それより桐谷さんは家にいるのかな?」
僕はなんとか話題を変えようとして、そう聞いた。かわいくて見惚れてたなんて、言えないからな……
まだそんな度胸は残念ながら、僕にはまだない。
「いえ、多分近くにいると思うわ。けれど、私達が服を着替えない限り、近くには来ないと思うわよ」
「え、服を?なんで……?」
「まぁそのうち分かると思うわ。それより、帰ったらちゃんとブラシでブレザーとズボン、綺麗にしてね?毛がたくさん付いてるから」
「あ、うん。そうだね」
言いながら、僕は制服に目を向けると、あちこちにネコ達の毛が付いていた。これを綺麗にするのは中々骨が折れそうだ……
今度から、ネコカフェに行く時はブレザーは脱いでいかないとな……
あれ、待てよ。服をってことは、ネコの毛がダメってことなのかな。ということは、桐谷さんはネコアレルギーとか?
なんだ。案外、簡単な理由だったんだな。
♦︎
買ってきた夕飯を食べ終え、僕は自分の部屋でノートパソコンを開いていた。
検索名を打ち込み、該当のホームページを見てみる。
そして、院長紹介と書いてある項目をクリックする。
そこには倉田さんのお父さんが写っていた。
僕が見ているのは、お分かりの通り、病院のホームページだった。
院長ということはそこで働く医者であれば、面識はあるだろう。
院長とその下で働く医者か……
やはり、ただの偶然ではなかったようだ。
僕は携帯を取り出すと、手早くメッセージを二人に向けて送った。二人というのは、もちろん、父さんと母さんのことだ。
時間がある時に聞きたいことがある。と打って送信して。
おそらく、すぐに返事は来ないだろうし、時間が取れるか不明だが、送っておいた。
それにしても、倉田さんのお父さんは一体、何を考えているのだろうか。
これが全部、僕の考えすぎとかだったら良いんだけどな……
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