3章

プラン


 翌日の朝のホームルームにて。


「えー、突然だが、家庭の事情により転校にすることになったそうだ」


 担任の先生から、そう言われ、クラス内が途端にざわつく。

 それもそのはず。いきなり転校したのは、遠藤さんだった。かくいう僕もかなり驚いた。

 しかし、家庭の事情と言っているが、この突然の転校にはきっと倉田さん、そして彼女のお父さんが大いに関係しているのだと僕は思った。

 そして、またどこかで彼に会いそうな気がして、僕は少しだけ不安を覚えるのだった。














 ♦︎













「うーん……」


 二時間目の授業が終わった瞬間、僕はポケットから携帯を取り出して、表示されている画面を見ながら、唸る。朝からずっとこんな調子だ。


「どうしたの?なんかずっと難しい顔してるけど?」


 そんな僕を見て、藤堂さんが話しかけてきた。


「あ、うん。実はどこに行けばいいか迷ってて……」


 言いながら、携帯に表示されている画面を見せる。


「どこに?って、ああ、なるほど……」


 携帯の画面を見た瞬間、藤堂さんは少し気まずそうな顔をした。

 僕が見せたのはデートにオススメ!と書かれていた記事だった。

 しかし、肝心の候補が多くて、どこに行けばいいか迷ってしまっているのである。


「ああ、いや、別に自慢しようとかそういうわけじゃなくて……」


「ふふふ。わかってるって。それにしてもまだデートとかした事ないんだ?」


 言いながら、隣の空いてるイスに藤堂さんは座った。


「う、うん……実は彼女のことも、まだあんまりよく知らなくて……だから、どこかに出かけて色々知れたらなぁって思ってるんだけど、肝心のどこにいくか、迷ってて……」


 それより、デートって響きは少し胸にくるものがあるな……

 男女が二人きりで出かければ、それはもうデートなのかな……

 いやいや、まだ僕と倉田さんはそういう間柄じゃないし、あんまり気負いすぎないようにしよう。


「そうなんだ。うーん、そしたらさ、倉田さんの好きなものとかは?」


「好きなもの……」


 はて、なんだろうか……

 全然出てこないぞ……


「うん。何かしらない?」


「好きなもの、好きなもの……あ、ネコかな……」


 家でご飯を作る時は、いつも同じデザインのネコがあしらわれたエプロンを付けている。だから、きっとネコ好きなのだと思う。

 じゃなかったら、付けないだろうし、そもそも買わないだろう。


「ネコか。そしたらネコカフェとかは?ぴったりだと思うけど」


「ネコカフェか……」


 藤堂さんのアドバイスで僕は携帯で近くにそういうカフェがあるかどうか調べた。


「あ、最近オープンしたのがあるらしい」


 携帯の情報によれば、近くの大型ショッピングモールについ最近オープンしたらしい。

 学校からも歩いて行ける距離なので、学校終わりに行くこともできそうだ。


「お、ちょうどいいんじゃない?行ってきたら?」


「うん。そうしようかな。ありがとう。色々アドバイスくれて」


「ううん。アドバイスって程じゃないよ」


 言いながら、藤堂さんは少し照れたように笑った。そして、そのタイミングで次の授業が始まるチャイムが鳴った。


「あ、授業始まるね。じゃあね」


 そして、藤堂さんは自分の席に戻っていった。

 藤堂さんのおかげで、どこに行くか決まった。問題はいつ行くかだが、思い立ったが、吉日だよね。となれば、早速、今日声をかけてみようかな。


 僕は携帯をポケットにしまいつつ、そう決めるのだった。

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