疑問


 あれから、どれぐらい時間が経ったのだろうか。僕が携帯で色々と調べていると。


「ただいまー」


 玄関のドアがガチャっと開いたかと思うと、そんな声が聞こえてくる。

 どうやら、倉田さん達が帰ってきたようだ。僕は慌てて、カバンの中に携帯をしまう。


「あら、ここにいたのね」


 リビングを開けてすぐに僕の姿が目に入ったので、倉田さんはそう言った。


「おかえり。お父さんにはどんな用事で呼ばれたの?」


 当然、お父さんはここにいたのだから、話はできていないはずなのだが、敢えてこう聞いた。この方が自然だと思えたからだ。


「それが自分から呼び出したくせに、いなくてね。すぐに帰ろうと思ったのだけれど、母にこの生活は大丈夫かとか色々聞かれて、話してるうちに思いの外、時間がかかってしまったわ」


 言いながら、部屋にかかっている時計に目を向ける。

 僕もそれにつられて、目を向けると学校が終わってからまもなく二時間は経とうとしていた。どうやら、一時間ほど、携帯で調べ物をしていたようだ。


 それにしても、今の倉田さんの発言に少し疑問を覚える。

 何かタイミングが良過ぎないか……?

 お父さんは僕と話をするためにここにきた。倉田さんと桐谷さんを遠ざけて。

 当然、二人はお父さんがいないとわかると、帰ろうとした。そこを倉田さんのお母さんが引き止めた。果たして、これは偶然だろうか?

 色々と考えすぎだろうか……?

 しかし、倉田さんのお母さんは話を聞く限りは、許嫁の件には反対していたようだ。

 だからこそ、お父さんを説得してくれた。

 にも関わらず、そんな協力するようなことをするだろうか?


「どうしたの、そんな難しい顔して」


 すると、倉田さんが目の前にずいっと顔を寄せてきたので僕は思わず、目を見開いてしまう。近い……そして、かわいい……


「え、そんな顔してたかな……?」


「ええ、眉間にすごいシワ寄ってたわよ」


「そ、そっか……いや、昨日夜更かししちゃって、寝不足で少し疲れただけだよ」


 言いながら、イスから立ち上がる。


「着替えて、少し横になってくるね」


 そして、足早にリビングから出ていった。


「すぐに晩御飯の支度するけど、大丈夫?」


「ああ、うん。大丈夫だよ、ありがとう」


 さて、部屋でもう少し調べ物するかな。

 それにしても、気になる事がまた少し増えたな……

 僕は自分の部屋へ入ると、ドアを閉め、ベッドの上に横になる。


 やはり、倉田さんのお母さんに会ってみたい。

 しかし、わざわざ倉田さんの家に行く勇気はないし……

 というか、この前、家に行った時ってお母さんいなかったよね。

 家にはいたけど、単に出てこなかっただけかな?

 うーん、考えれば考えるほど、色々と疑問に思ってしまうな……

 とりあえず、会ってみたいんだけど、どうしようかな。倉田さんに言ってみようか。

 しかし、なんて言う?

 お母さんに会いたいから会わせて。なんてストレート過ぎて、絶対びっくりするよね。

 いや、この際だから、本当のことを伝えたいってことにして会ってみるか?

 それなら変じゃないし、自然だと思う。

 よし、タイミングを見て、言ってみよう。

 しかし、どんどんとおかしな事になっていくな……

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