道案内
満腹感に加え、寝不足により、絶え間ない眠気に襲われながら、なんとか午後の授業も乗り超え、待ちに待った放課後。
クラスがガヤガヤと騒ぎ出す中、僕はいつものように、カバンを手にし、足早に教室を出る。
というのも、今日は一人で帰ることになったのだ。なんでも、倉田さん、桐谷さんが倉田さんのお父さんに家に来るように呼ばれたらしい。一体、何の用件なんだろうかと思わずにはいられなかった。帰ったら聞いてみようか。
そんなことを思いながら、下駄箱に靴に履き替え、学校を出た。
「あ、違う……」
学校を出てすぐに僕は慌てて、歩いてきた道を戻っていった。
つい、いつもの癖で自宅に帰ろうとしてしまった。
まぁ帰っても問題はないんだけど、理由もないのに帰ろうものなら、あのお父さんに何言われるか、わからないからな……
どこかから、見ているんじゃないかと思ってるし。
そう思うと、倉田さんと桐谷さんは大丈夫だろうかと、少し不安になってきた。遠藤さんは今日学校休みだったし、もしかしたらそのことを言われたりしているんじゃ……
桐谷さんが手に当てた缶ジュースで手の骨が折れたとか、大袈裟に考えすぎかもしれないけど、やっかいな事になんなきゃいいな……
色々なことが一気に頭をよぎり、不安に駆られながら、道を歩いていた時。
「あの……」
前方から声をかけられる。
しかし、考え事をしていたので、最初は僕に話しかけているとは、気づかずにそのまま歩みを進めていた。
「あの……!」
僕が気づかなかったので、今度は少し大きめな声が聞こえてきたので、慌てて顔を上げた。
すると、目の前に女の子が立っていた。
灰色のパーカーに黒いスカートにタイツ、髪はセミロングで、ぱっちりとした目、背は僕の胸元くらいなので、160cmあるかないかという感じだった。
かなりかわいい部類だと思う。
結構タイプかも……って、何考えてんだ。
「すいません、道を聞きたいんですけど……」
僕がバカなことを考えていると、遠慮がちに女の子はそう言ってきた。
そんな中、僕は少しだけ違和感を感じた。
なんか、女の子にしては声が低いような……
まぁハスキーな女の子も沢山いるし、考えすぎか。
「あ、はい……えっと、どこですか……?」
「ここなんですけど……」
言いながら、携帯で地図を見せられる。
そこには僕が通う高校の名前が映し出されていた。
「あ、えっと、この先の道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右に曲がれば見えてきますよ」
僕はジェスチャーを交えて、説明する。
「そうなんですね。ありがとうございます。実は方向音痴で……地図を見ても、イマイチ分からなくて……」
はははと恥ずかしそうに笑う女の子。
ううん、なんともかわいいな……
桐谷さんとは違ったかわいさが……って、なんでここに桐谷さんが出てくるんだよ……!
「ご親切にありがとうございました。それじゃ、失礼します」
僕が変なことを考えている間に女の子は丁寧にペコリと頭を下げて、そのまま教えた道を進んでいった。
同学年くらいに見えたけど、転校生とかかな?
でも、こんな時期に転校なんて中々ないと思うけどな……
まぁ、特に気にすることでもないか。
もし、転校生ならそれでもいいしね。
僕は女の子の姿が見えなくなった後、マンションまでの道を歩いていくのだった。
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