病人と正体
「はぁはぁ……」
翌日の放課後。
僕は息を切らしながら、自宅までの道を急いでいた。
というのも、学校が終わり、ゆっくりと歩きながら帰っていると、突然、大雨が降ってきたのだ。
天気予報では晴天と言っていたため、傘を持っておらず、急いで帰っているところなのだ。ちなみに今日な用があるとかで、倉田さんとは帰ってきてはいない。
こんな時、きっと彼女なら用意がいいから、折りたたみの一つくらい持っているんだろうな……
全く、タイミングが悪い……
「はぁはぁ……」
あと少しで家に着く……
にしても、すごい雨だな。これがゲリラ豪雨ってやつか。家に着いたら、すぐに着替えないと風邪を引くぞ、これは。
そんなことを思いながら、走っていると。
ドシャ!!
近くで何かが地面に落ちた音が聞こえてきた。
「……」
僕は精一杯、動かしていた足を止め、音のした方に顔を向ける。
そこの路地裏から聞こえてきたな……
そこそこ重い物が落ちたような感じだったけど……
ネコか何かが誤って、地面に落ちたのかな。
気になるし、少しだけ覗いてみるか。
そう思い、僕はチラッとだけ覗いてみることにした。
「って、ええ!?」
しかし、そこには予想外に人がうずくまって倒れていた。しかも、うちの制服を着ている。ブレザーにズボンだから、男子生徒のようだ。
「うう……」
倒れている人物は苦しそうに声をあげる。
「だ、大丈夫!?」
僕は急いで駆け出して、近くに駆け寄る。
「って、え……?」
僕は近くに駆け寄ってから、思わず、目を見開いてしまった。
この長い髪の毛、細くて色白な手足……
間違いない。桐谷さんだ。なんで、こんなところに……?
って、そんなことは後だ。とりあえず、助けないと。
「大丈夫、桐谷さん?!」
「か、構うな。一人で大丈夫……」
桐谷さんは僕が差し出そうとした手を跳ね除け、立ち上がろうとするが、途中で力尽きて、再び地面に倒れこんでしまう。
見れば、顔がかなり火照っているように見えた。
僕は桐谷さんの額に手を当ててみた。
「あつ……!」
触って分かるくらいに熱が出ている。しかも、かなり高熱だ。これは急いでなんとかしないと。
「全然大丈夫じゃないから!」
僕はそう言うと、彼をおんぶすることにした。同性だから、これくらいしたって普通だよね。
しかし、僕はおんぶしてから思う。
めちゃくちゃ軽い……
僕も軽い方だと思うけど、それより軽いな……
「や、やめろ……」
桐谷さんはおんぶされることが恥ずかしいのか、後ろから僕の顔をパチパチ叩いてくる。
「やめないよ、こんな身体でほっとけないって!」
僕はそう言うと、彼を背負ったまま、走り出した。
とりあえず、家に連れて行こう。とにかく、濡れた身体をなんとかしないと。
♦︎
「はぁはぁ……」
全速力で走り続け、ようやく家にたどり着いた。
疲れた……
しかし、それ以上に大変なのは桐谷さんなんだ。なんとかしないと。
僕は玄関に入ると、とりあえず彼を一度下ろし、洗面所へと向かった。そして、タオルを数枚、手に取り、戻ってくる。
「とりあえず、濡れた身体を拭くよ」
そう言って、まずは彼の髪をガシガシと拭いていく。
うーん。濡れているからかもしれないけど、めちゃくちゃサラサラだな。顔といい、髪の毛といい、男の子とは思えない。
あらかた拭き終わると、靴を脱がせ、彼の身体を支えながら、リビングへと入る。
その間、桐谷さんの反応はない。どうやら、気を失ってしまっているようだ。全く、なんでこんなことになるまで、外にいたんだろ……
僕はそんなことを思いながら、タオルを何枚か敷いたソファにそっと寝かせる。
いくら拭いたとはいえ、このままだと、身体は冷えたままだし、服を脱がせた方がいいよね。
まぁ同性だし、別に服を脱がせたところで問題はないだろう。
そう思いながら、彼のブレザーを脱がせ、ワイシャツのボタンに手をかけていく。
「……」
ゆっくりとボタンを外していく。
その間、なぜか外す度にものすごい背徳感に襲われていく。
な、なんでこんな気持ちになるんだ……?
男同士じゃないか。もしかして、彼が男の子に見えないから……?
それとも、僕はもしかしてそっちの気が……?
って、それはない!僕が好きなのは女の子だ。それは間違いない。
頭の中で様々なことを考えているうちに、なんとかボタンを外し終え、ワイシャツを脱がせる。
そして、次の瞬間、僕は自分の目を疑った。たまらず、目を見開いてしまう。
「な、なんで……?!」
僕の目の前には、男の子には絶対ないはずの程よく膨らんだ胸があったのだ。
サラシか何かを巻いているが、大きさ故か、膨らみは完全に隠せていなかった。
その下にはキュッと綺麗に引き締まったお腹が。思わず、その細さに目を奪われてしまう。
「ん、んん……?」
その瞬間、目を開ける桐谷さん。
全く、なんてタイミングだ……
神は僕のことが嫌いなのか、そうだろ。
「……」
桐谷さんは今の自分の状態と呆然としている僕の顔を交互に見比べる。
そして、少し経ってから。
「見るなぁぁぁ!!」
顔を真っ赤にしながら、大絶叫と共に慌てて、タオルで身体を隠す。とても甲高い声。男にはとても出せない。
間違いない。彼は女の子だ。
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