忍者

「大丈夫か?」


「え、あ、うん……ありがとう……」


 僕はとりあえずお礼を言う。

 助けてくれた……んだよね?

 でも、一体遠藤さんに何したんだろう。

 死んでる……なんてことないよね……?

 それにしても、綺麗な顔した男の子だな……

 髪も背中の辺りで、結ぶくらい長いみたいだし、手足もすらっとしてて、色白でまるで女の子みたいだ。最もこんなこと、本人には言えないけど。


「お嬢の相手になったんだから、今後もこういう輩が来るぞ。気をつけろ」


「え、お嬢……?」


 それって、もしかして……

 ってか、なんでそんな呼び方を……?

 まさか、舎弟とか?

 いや、まさかなー。


「それじゃあな」


 僕がそんなことを思っていると、言葉少なげに彼は去って行こうとした。


「あ、ちょっと待ってよ!全然、話が掴めないんだけど……!」


 僕は慌てて、駆け寄る。

 それにせめて、名前くらい教えて欲しい。


「また近いうちにな。それにお嬢を待たせているぞ」


 そう言って、彼は下駄箱のある方に目をやった。


「え、あ……!」


 僕はそちらに目を向け、すぐに視線を元に戻したが、その時にはもう彼の姿はそこにはなかった。


「誰だったんだろう……」


 制服を着ていたから、間違いなく生徒の誰かなんだろうけど……

 見たことない顔だったな……

 もし、見かけてたら絶対覚えてるしな。あんな美形な男の子。


「って、それより、倉田さんだ!」


 僕は慌てて、駆け出し、下駄箱へと急ぐのだった。














 ♦︎












「なるほど。そんなことがあったのね」


 学校を出て、雑貨屋までの道中、倉田さんに先ほど何があったか、説明する。


「それはきっと桐谷きりやね。まぁ簡単に言うと、父が寄越したガードマンみたいなものよ。私と同じクラスにいるわ」


「ガードマン……」


 まるで漫画だな……

 僕達とほとんど年齢は変わらないはずなのに、あんな落ち着いた思春期真っ只中の男子がいるだろうか。おまけになんか強そうな感じだったし。まぁガードマン任されるくらいだから、強いんだろうけど。ってか、ガードマンって……

 倉田さん、ガチの社長令嬢じゃん。


「多分、今もどこかで私達のこと見てるわよ」


「えっ!?」


 僕は慌てて周りを見渡した。

 しかし、当たり前だが、声も姿もない。


「素人の私達じゃ見つけるなんて無理よ。何か危険が迫った時に姿を見せるくらいなんだから」


「まるで忍者だね……」


 隠密行動が基本。なのかな……

 もしかして、本当に忍者の末裔だったりして……


「まぁまた会うかもしれないから、その時にでも挨拶しましょ」


「そうだね……って、あ、もしかして、この前、見られているかもしれないって言ってたのって、もしかして、桐谷さんのこと?」


「ご名答」


「妙に納得したよ……」


 だから、一人になれる時以外はフリをしてくれってことだったのか。

 桐谷さんか。名前はわかったけど、まだお礼が言えてない。あ、そういえば、体育館裏に遠藤さん、放置したままだけど、大丈夫かな。

 まぁそのうち、起きて帰るよね。

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