影
午前の授業も終わり、昼休み。
僕は昨日同様、倉田さんと屋上でご飯を食べている。
ただし、昨日と違い、廊下で待ち合わせてから、屋上へと向かった。
まぁ、この方法でも周りは、かなりざわついていたけど……
そりゃ、そうだよね。明らかにお弁当って分かるもの、持ってるんだから。しかも、女の子だけが。
それにしても、クラスメイトから倉田さんと付き合っているのかと聞かれることはなかった。やはり、藤堂さんは周りに言いふらしたりはしていないようだ。それはものすごく助かると心底思った。
「うん。今日もすごく美味しい!」
僕は口に運んだ一口サイズのハンバーグを噛み締めながら、言う。肉の旨味はもちろんのこと、かかっているタレも絶品だ、こりゃ。
きっといいお肉使ってるんだろうな。ご飯がモリモリと進む。
「よかった。そう言ってもらえると作った甲斐があるわ」
倉田さんはふふふと微笑んだ。
かわいいな。それに笑い方がすごく上品だ。
「あ、そういえば、今日の放課後も空いてるかしら?」
「え、うん。空いてるけど……」
僕は口に入れていたご飯を急いで、飲み込むとそう返事をした。
なんだろう。もしかして、またご飯作りに来るのかな……
「よかった。実は行きたい雑貨屋さんがあってね。それに付き合ってほしくて」
「あ、そうなんだ……」
ご飯を作りに来るわけではないのか……
ホッとしたような、残念なような、微妙なところだな。
「ん……?」
「どうしたの?」
「いや……」
その時、僕は何処からか見られている気がして、辺りをキョロキョロと見回した。
屋上には僕と倉田さん以外いないし、気のせいだよね……
第一、見回しても人の姿は見えないし。
♦︎
そして、放課後になった。
チャイムが鳴った途端、ポケットに入れていた携帯が震えた。
何だと思い、ポケットから出すと、新規のメッセージを受信していた。差出人は倉田さん。
そこには短文で「先生に所用で呼ばれたから、玄関で少し待っててほしい」と書かれていた。
と、いうわけで僕は教室を出て、階段を降り、下駄箱で靴に履き替えようとした。
「ん?」
下駄箱を開けると、何やら紙切れが中から落ちてきた。僕はそれを拾い上げた。
そして、そこには。
「少しお話ししたいことがあります。今日の放課後、体育館裏で待っています」と達筆な字で書かれていた。
「こ……!」
興奮のあまり、漏れ出しそうになった声を必死に押し殺す。
こ、これはいわゆるラブレターというやつか……!?
今時、こんなことをする子がいるなんて……
ああ、やばい、なんか緊張してきた……
で、でもこの場合、どうすればいいのか……
一応、倉田さんとは付き合っている(フリ)なわけだし、断るべきだよね……
なんか、とても惜しいことをしているような気が……
まぁ仕方ないか。
僕はため息を一つ吐いた後、ドキドキと鼓動を刻む心臓を抑えながら、体育館裏へと向かうのだった。
「……」
相手の子はまだ来てないのかな……
体育館裏に来た僕はキョロキョロと辺りを見渡す。
「来たか……」
すると、後ろからそんな声が聞こえてきたので、僕は振り向いた。
あれ、でも、今の明らかに男の声だよね……?
そんなことを思いながら、振り向くと、案の定、そこには男子生徒が立っていた。
「ノコノコと来やがって。余裕ってわけかよ」
その男子生徒は何故かイラついた様子でこちらを睨んでくる。
というか、彼は同じクラスの遠藤さんじゃないか……?
勉強もスポーツもできるチート野郎だって、周りから言われてる。だから、必然的にさん付けしている。個人的にだけど。
しかも、そこそこ顔が良いから女子にもモテている。羨ましい人物だ。
なんで、彼がここに……?
「え……僕、なにかしたっけ……?」
「うるせぇ!いくぞ!」
しかし、話を聞く様子もなく、遠藤さんはいきなり握り拳を作って、襲いかかってきた。
まさかのバトルパート突入!?
いやいや、僕の戦闘力皆無なんだけど!?
そんなことを思っていても、まっすぐに向かってくる拳。
やばい、殴られる。痛いのは嫌なんだよ……ぎゅっと目を瞑りながら、そう思った時だった。
「……」
ドサっという音と共に遠藤さんは地面に倒れてしまった。
「えっ……」
僕はゆっくりと目を開ける。
するとそこには、別の男子生徒が立っていた。
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