第三者
「それでね、クラスの子がそんなこと言うもんだから、もうパニックになっちゃって……」
「それは災難だったね」
学校までの道中、僕は倉田さんとの談笑を楽しんでいた。この前とは違い、色々と話せている。まぁこの程度の会話なら、他の誰かに見られても、仲の良い男女って感じかな。
そんなことを思っていた時だった。
「あれ、奏多君?」
後ろから聞こえてきた声に、僕は歩みを止めて振り返った。
「
「隣にいるのって、隣のクラスの倉田さん……だよね。仲良かったんだ……?」
「ああ、まぁね……」
僕は頭をかきながら、乾いた笑みを浮かべた。
僕に声をかけてきたのは、同じクラスの藤堂
「なんか奏多君って、あんまり他の女子と仲良くしてるところ見たことないから、少し驚いちゃったよ」
はははと軽く笑う藤堂さん。
それを見ていた倉田さんは、突然ぐいっと僕の腕を引っ張り、自分の腕と交差させてくる。
「私達、実は付き合ってるの」
そして、そんなことを言ってきた。
「え、ちょっ……!」
僕は突然の行動に慌てふためいてしまう。
そして、何やら柔らかい何かが僕の肘のところに当たっている……!
「あ……そ、そうなんだ……」
もちろん、その光景を見ていた藤堂さんも呆気に取られていた。
「じゃ、邪魔しちゃ悪いから先行くね……」
そして、そう言って、足早に僕達の横を通り過ぎ、先に行ってしまった。
「い、いきなり何するのさ……」
「噂を広めるにはこうするのが一番かと思ってね」
言いながら、僕と交差させていた腕を外す。
「噂……?」
「ええ、嘆かわしいことに未だに私の所にはそういう類の話とかが来るのよ。だから、第三者に見られて、こう言った方が効果的かと思ってね」
倉田さんは、はぁとため息を一つ吐いた。
「あ、そうなんだ……」
だったら、こうやりたいって予め、言ってほしかったな……
しかし、見られた……いや、見せつけたと言った方がいいか……
とにかく、見せつけたのがよりにもよって、藤堂さんだなんて……
まぁ彼女のことだから、言いふらすようなことはしないと思うけど、人脈が広いから、もしかしたらということもあり得る。
逆恨みのようなことが起きなきゃいいんだけど……
僕はまた一つ不安材料が増えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます