二章 めぐる因果
やはりこうなる
「そう、君の家に連れて行ってくれ」
少し頬を赤らめながら先輩が俺に近寄ってくる。
ただでさえ先輩はとても美人だから、こんな表情で近づかれるとたまったもんじゃない。
白い髪が風をはらんでふわりとなびき、風によって運ばれた香りが俺の鼻をくすぐる。この場にいたら俺の理性はあとどれくらい正常に機能してくれるんだろうか。
「いいだろう? 君にとっても何ら損はない。だ、か、ら、ね?」
じりじりと後ろに追いやられてついには壁際へと誘導される。
更に先輩は両手を壁に抑えて俺の逃げ道を……なんで俺、壁ドンされてるの?
壁ドンって男子が女子にする印象というかイメージがあるのだが最近ではその逆も存在するのか?
でも、あれだな。先輩俺よりも背が小さいからアンバランスが否めない。同じくらいの身長だったらこれはかなりやばいのかもしれない。
……って、魅惑的ではあるが今はそんな妄想に浸っている余裕はない。
「いや、そうはいっても」
「いいじゃないか、私にも看病を、もとい弱った花音ちゃんを愛でさせてくれよ」
まぁ、大方こんなもんだと思ったよ。
朝教室に来た時も興味があったようだし、何だか昨日のうちに随分と仲良くなっていたからな。
そして何よりこうなってしまっている以上断ると色々と面倒くさい。今まで断ったことはないのだが、何となく断れない。冗談抜きに何をされるか分かったもんじゃない。
「……別に構わないんですけど、面倒事になるのだけは勘弁ですからね」
嘘をつけないのか何なのかこの人の言葉には本音が全面的に出てくる。今回は後半部分のところが特に気になるところ。
変なことにならないといいんだけど……。
「やったー!」
ぴょんぴょんと跳ね回るらしくもない先輩を見ているといつの間にか自分の頬が緩んでいた。
慌てて左手で口元を隠すがどうやら手遅れだったようだ。
「なんだなんだ? 私を見てニヤニヤと?」
唐突に先輩が振り返る。そうして再び急接近すると俺の頬をツンツンとつつく。
こういうスキンシップが多くの男子を
「い、いや、なんでもないですよ」
「ふぅ~ん、まぁ、そういうことにしといてあげる。ちなみに何持っていけばいい?」
「ん? 何か持ってくるんですか?」
俺の疑問に先輩が首をかしげる。
「ん? だってお見舞いでしょ。なんか持っていくんじゃないの?」
いや、まぁ普通はそうなんだろうけど。
あいつ幽霊だぞ? 果たしてお見舞いの品とかいるのか、というかそもそも……。
「もとはといえば自業自得なんで適当なもので十分です」
どうせ何もしなくても勝手に飛び回っていることだろうさ。正直なところ幽霊を心配するだけ無駄な気がする。
この時の俺はまだ知る由もなかった。
花音が体調を崩したことに重大な意味があったということに……。
出会いはいつも唐突に 翠恋 暁 @Taroyan
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