第13話
「この報告書はないだろ、赤トロールが現れた時点で何かおかしいだろ」
「僕も中央ギルドが何か隠しているんじゃないかと思うよ」
パリストン支部のギルドに最近冒険者に復帰したボルグとリーゴがハンバーガーを食べながら険しい顔で報告書を眺めている。
この報告書は中央ギルドから贈られたものだがその内容には2人は納得していなかった。ローグが戦った赤トロールについてのことが載っているがあろうことか群れを確認できなかったと書いてあった。
2人はそんなはずないだろうと納得がいかないのである。
2人はもともとSランク冒険者であったことから豊富な経験を有している。
そのため報告書に真実が載っていないことがすぐにわかった。
そもそもパリストン地方に人を襲うようなモンスターがいないことで有名である。
それなのに平気な顔して人間を食べるトロールが複数出現するなんて非常事態に他ならない。
ハンバーガーのつまみに頼んでいたコーラとポテトが届く。
それをがっつきながらコーラをボルグは流し込んでいく。
「このタイミングで俺とリーゴがパーティーを組んでよかったぜ、赤トロールが出て時点で群れがかなりいるはず、中央ギルドの連中は何を考えているんだ・・・・・・それにあいつ等とも連絡を取れねーのは、やっぱしおかしいじゃねーか」
「たぶん、中央ギルドのやつらは何か脅しをかけている可能性がある、だから後輩たちや先輩方と連絡を取れないのではないかと思っている」
「そうだよな、もともと王都にいた偉大なる冒険者たちはほとんどがここ14年の間に死んでいるからね、そのことも僕は怪しんでいるけど」
14年前までS級冒険者はもっとたくさんいたがそのほとんどが死亡してしまっている。
王を守る立場にいた赤の部隊と死んでしまった冒険者たちは魔国の怪しい動きを止めるために派遣され帰ってこぬものになってしまった。
遺体を回収したいと死んでいったとされる家族たちの申し出があったもの敵国にまで取りに行くのが危険だと却下されてしまった。
だがそれを疑う輩はこの国に現状マリーとリーゴだけとなっている。
マリーはポップから打ち明けられたことにより、リーゴは先代の王がおかしくなってしまっていたことを理由に疑っていたのである。
王様があるとき変わってしまったと一時期噂されていたことから当時相当若かったリーゴは過去に当時の王がしていた政策と死ぬ直前までに行っていたこと比べて明らかに違いがあることに気が付いた。
王の変わりようは例えば国民を大事にする考えから気に食わない物を捨てていく思考に移行していることがあげられるだろう。
残念ながら王様がすべて仕切っているものだから国民はみんな流されていくままである。だからリーゴは自分の意見をはっきりと表に出したことがなかった。
「このことに関しては俺たちが速くS級冒険者に戻ってから検索するしかないだろう、それよりもローグのやつのスピード昇格の事どう思うよ」
ボルグはむしゃむしゃとハンバーガーを口に運びながら1本のポテトを片手に持つ。
リーゴはため息をつきながらハンバーガーの他に頼んでいたチキンナゲットをくちに運ぶ。
「ローグ君の件は、かなり深刻だと思うよ」
「お前が言ってる申告の内容は?」
「わからないのかい、あまりにも早く昇進してしまうとローグ君自体が目立ってしまう、そうなると王家の血が流れていることがばれる可能性が高まることを僕は深刻だと思っている」
「そうだな、マリーがあいつと結ばれなかったのはそれが関与している可能性があヨナ」
「確実に関与しているでしょ、財力で言ったらバネットと肩を並べるルーファス家だよ、可能性の域は出ているでしょ」
「なるほどな、魔法が使えないからとかは大臣のただの建前ってことか」
ボルグはリーゴが頼んだチキンナゲットを勝手に手に取りハンバーグを包んでいた紙についているソースをすくうようにして塗り食べる。
リーゴは昔から変わってないなと思いながらチキンナゲットに頼んでおいたマスタードをつけた。
周りの人達はどれだけ食べるのだとギョッとした目で観察していた。
「次何食べる、ピザか麺類もいいよな、ラーメン、スパゲッティー、そば、うどんとかさ」
「そうだね、僕は大盛りのカルボナーラが食べたい気分だからスパゲッティーかな」
ボルグはギルドの食べ物を運ぶ担当の人に「カルボナーラ超大盛2人前で!」と大きな声で注文した。
まだ残っているポテトを寂しい口に2人は放り込む。
普段だったら無限に食べられる胃はしていないが冒険者に復帰したことによって、戦闘の勘を取り戻したいと考えた2人はパリストン最大のダンジョンを攻略してきたのである。
中ダンジョンでBランクモンスターがぞろぞろといる中を2人は汗水流しながら進んでいったのだから食欲が増すに決まっている。
もともと2人ともがS級冒険者だったときは毎日お店の人を困らせるほど食べていた。
店としてはお金を儲けることができるが料理を作るのに在庫がなくなってしまうため酷いと昼間で営業終了になる。
そのことから王都にある2人の行きつけの店は来る日に合わせて大量の食材を発注していた。
「そういえば、だいだい勇者の剣を抜ける物が王になるって話あるだろ・・・・・・王子には抜けないらしいぜ」
「それは本当かい?まずいね、ローグ君に血が流れていることが知られれば政治上の道具にされてもおかしくないし、悪い方向に行けば殺される可能性がある」
「それはまずいな、あいつは俺の弟子だぜ、あいつが殺されでもしたら俺は犯罪者になっちまうかもしれない」
「それだけはまずいよ、ローグ君が無事に最後まで成長してくれればいいけど、そうならなかったら厄介ごとに巻き込まれるし本気のお前を僕は止められないよ」
「ならそうなる前に、俺たちでローグやジンタを強化しねーとな」
カルボナーラが席に到着していったん話が中断される。
麺類はすぐに伸びてしまうため話をせず、ホークとスプーンを使って食べていく。
大き目のスプーンの上で麺をホークにくるくると巻きつける動作は子供っぽいと思われがちだが2人にとってそれがスパゲッティーのおいしい食べ方である。
だいたいの人はスプーンなんて使わずに食べるのが普通でありその逆はおこちゃまと言う風習がある。
2人は全く下らんと否定している。
特にリーゴはスプーンを使うことに品を感じてさえいる。2人が食べているカルボナーラは主にゆでた太めのパスタに卵の卵黄と少しの卵白、そしてパルメザンチーズ、あらびきこしょうで作ったソースと一緒にボウルで混ぜ合わせて作るのが主流である。
ボルグはソースにすこし火が入っているほうが好みで温めてフライパンで一瞬パスタと混ぜるのが好み。
現在2人が食べているものは主流のほうなのでもう少し火が通っていてほしいなとボルグは感じていた。
生クリームを入れたいという人と入れるのは邪道であると感じている人がいることで有名な一品である。
「リーゴはクリームを入れて食べたいと思うか」
「そのままのほうが好みだね」
「奇遇だな、俺もなんだよ」
「なんで抜けないのか、もしかしたら予言の子はローグかもしれない」
「雷の魔法が使えないのにそれはねーだろ」
「マリーみたいに呪いの作用で魔法が使えないだけで本当は適性があるとか」
「そうか!マリーの息子なんだから魔法の才能がなきゃ変だもんな!」
「ボルグ静かにしてくれ、マリーさんのことになると興奮する癖を無くしたほうがいい」
カルボナーラを食べ終えもう2人はお腹いっぱいになったところでまた話が盛り上がった。
15年前にとある予言がなされていた。
本人は行方不明になってしまったが内容が内容だったとされている。
肝心の内容は「次代の勇者は人間の常識を打ち破るだろう」というものだったが本人に直接聞いたのは少数人だったため本当はどうだったのかはわからないまま。
1番有力だとされているのは暗殺だとされた。
だが何故殺されてしまったのかアリバイもなければ骨も残ってないのにわかる物なのか。
この国は検索1年間見つからなければ死んでいるとみなされている。
何が予言との関係性があるのではないかと今でも議論になるほど話題である。
結構ミステリアスで一般人の中では何とか説ではないのかと話し合い簡単に言えば娯楽に使われるようなものになった。
「僕は一回本人に会って予言を聞いてみたいところなんだよ、もしかしたら隠されたものがあるかもしれないし」
「それは難しい話だな、もう死んでいる可能性が高いのにどうやって俺たちの手で見つけるんだ、生きていたとしてもこんなに身を隠している時点で捕まえるのはかなり骨が折れるぞ」
「僕はすべての物をできれば自分で知りたいんだ。本はいいものだけどあれは間接的に理解しているに過ぎない。とにかく予言を僕のこの耳で聞きたい!」
「わかったわかった、お前は頭がかなり切れるからな方針は任せる」
これからの冒険者活動に消えた預言者の探索が方針に加わった。
探求心が旺盛で色々なことを知りたがるためチームの方針や経験そして発想力に優れているため方針を決めて利するのはリーゴがいいとボルグは考えている。
リーゴは自分がリーダーを務めるA級パーティーに所属していたが方針や指令はすべて副リーダー決めていた。
だがボルグはそれが非常にもったいないとマリーと同じチームにいながら不満があった。
ずっとお前が指令を出して方針を出したほうがいいのにと日々感じていたのである。
それもそのはずで、もともと2人でパーティーを組んでいた時はリーゴのおかげで最少年の中央ギルド所属になることができたとボルグは強く感じていた。
リーゴは生真面目であるが普通の人は違う行動をとることで有名だった。
だから異端児扱いされたりリーゴがいるチームの司令塔を交代するように厳しく上から言われたりした。
「リーゴは前のチームで本当に自分の手で動かさなくてよかったのかよ」
「ああ、よかったに決まってるでしょ、それに僕は何があったとしてもあのパーティーは仲間だと思ってるしね」
「まぁーそういうと思った、だが俺たちの敵に回るようなことになってみろ、その時は容赦できねー」
「それは理解しているけど、それなら中央ギルドのいきりすぎている頭を叩き切るだけだね」
「それもそうだな、全部悪いのは中央ギルドだからな」
この2人が冒険者になることで喜んでいる人々はたくさんいるが料理人からしたら地獄の日々が始まることとなってしまうのであった。
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