第10話
「いい加減に起きろブヒ!」
「痛い~~~~~~~~~~~~~~!?」
突然襲ってきた痛みに目を覚まし、周りを確認した。
ジンタやリサさんとママが楽しそうに会話している。
あれ、そういえば僕生きてるよね。
「お前俺様を無視するなブヒよ」
「そうだ、なんで僕は生きているよね?」
「何を言ってるブヒ、生きてるに決まっているブヒよ」
ポップはどこか呆れたように返した後リビングから出て行った。
階段を上る音がしているから僕の部屋に行ったのかな。
昨日激痛が走った後から記憶がないけどもしかして僕なんか持病的な物を持っているなんてことなのかな。
そう考えるとすごい怖いんだけど。
僕が一人青ざめているとポップが「早く椅子に座るブヒ」と声をかけてくる。
僕はそれに従って席に着く。
なんでジンタがいるんだろうかって怪我がないじゃないか。
「あれ、なんで怪我無いの?」
「マリーさんに直してもらったんだぜ、お前も怪我治っているだろ」
僕は急いで服を脱いで自分の怪我がちゃんとあるかじろじろと見るがなかった。あれ、あのトロールに付けられた傷がない。
「そんな馬鹿な!」と必死に傷を探している僕に周りの人たちが大きな笑いを立てる。
なんで笑っているのか僕にはわからなくてしょぼんとしてしまう。
「私ね、魔法を使えるようになったのよ、だから2人とも私が治療したの」
「そうなんだね、何が起こったかわからなくて混乱しちゃったよ」
何時から使えるようになったのか気になって聞いてみたら昨日突然魔法が使えるようになったらしい。
いいな、羨ましいな。
ママが魔法使えるようになったのを知らなかったからかなり動揺しちゃったよ。
でもあんな大怪我だったのにすぐに治っちゃうなんてすごいよね。
リサさんはママが出したであろう紅茶を口にくわえた後そわそわしだし「実はジンタをバネット総合学園に入れたいと思っていまして」と話し始めた。
どうやらリサさんはジンタをバネット総合学園に入れたいと考えてるみたいだ。
僕も入りたいと思っていたから一緒に入学できるかもしれない仲間ができる可能性に頬を緩めていた。
だけどママはかなり厳しい顔をしながら「ジンタ君の髪色のことは大丈夫なの?」とリサさんに聞く。
ジンタは何のことやらわかっていなかったけどリサさんは苦い笑みを浮かべた。
「ええ、どうせジンタやローグ君が有名になれば、ばれることだしね」
「そうね、私なんて後継ぎ問題で揺れているところに息子を向かわせるのだからお互いに」
ジンタは貴族の血が流れているからいろいろ問題があるのかもしれない。
僕は少し内容が分かったけどジンタはこちらを見てなんか納得いかなかったのか機嫌が悪そうに髪色のことをリサさんに聞いた。
リサさんは渋々な感じで説明する。自分の父がパリストン家出身で貴族の血が流れていることを知ったジンタはかなり驚愕していたが自分の髪が他の人とは違うことを気にしていたみたいで納得がいったようだった。その後ジンタは「なんで言ってくれなかったんだよ」とかなりすねていた。
「僕も一応貴族の血が流れているんだよ」
「そうなのか、こことは違う地方の貴族とかなのか」
「バネット総合学園の学園長は僕の祖父にあたる人らしいよ」
「マジかよ、面接官に出てきたら絶対気まずくなるだろ」
「あー考えてなかったよ、できれば当たりたくないな」
もし面接で当たることを考えて絶対僕の青髪見たらなんか言ってくるよ。
優しい人ならいいけど怖い人だったらどうしよう。
ママからもあまりいい話を聞かないしどういう人なのかも想像つかない。
とても不安になる。
「そういえば、ギルドの情報だとドットさんはここ10年くらいでかなり丸くなったらしいよ」
「そうなの、私が出て行ってから反省したのかしらね」
「体系にも表れているらしくて、王都でイケメンなことを知られていたなのに」
「あんなに見た目は大事だと言ってたのにどうしてしまったのでしょう」
「もっと自分の父親なんだから心配したほうがいいと思うよ」
「大丈夫よ、私がいなくても妹や母が面倒見てくれるから」
なんか僕、ドットさんの事心配になってきたぞ。
多分話的にドットさんは不健康な生活をしているのかもしれない。
理由はわからないけどもしかしたらママと関係あるのかな。
リサさんもこの話題を楽しそうに話していた。
そんな2人の様子に僕は苦笑いを浮かべる。
ママに妹がいるってことはもしかしたら従兄弟がいるってことだよね。
できればあってみたいな。
「そういえばバネット総合学園の仕組みを説明してなかったわね」
リサさんは「もちろん知りたいわ」と興味津々な様子だった。
もちろんこれから入学するかもしれない学園だから僕とジンタも気になるところである。総合学園って名前なのだから僕たちの学校とは多分仕組みが違うよね。
「冒険職を中心に色々な職業に成るための育成学校っていうのが簡単な紹介になるわね、それからね、S級パーティーを輩出することを目指しているから、1年生の1学期のうちに好きな人とパーティーを組んで課題をクリアしていくのも私は魅力的だと思っているわ」
それから事細かく説明される。
冒険職のために代表的に、魔法科、接近型の職業がメインの近距離科、中距離科、長距離科の4つに分類される。
さらには戦闘場がたくさんあったりして施設が充実しているらしく、月に一回程度に武術の大会や魔法の大会などもあるらしい。
初めて知ったことだけど王都にはそれぞれ4貴族が仕切っている地区があってバネット家が仕切っている地区にあるらしい。
王都の事情を知らなかったからすべて王様が管理しているもんだと思っていた。
僕たちはママバネット総合学園の話を聞いてジンタやリサさんは「そんな大きな学校なんだと」と驚いていた。
僕もかなりびっくりしたけど、第一に面白そうだなって思えた。
だってこんな沢山学科がある中でパーティーが組めるなんて楽しいに決まっている。
ジンタも同じでニタニタしながら「俺にぴったりだぜ」と期待していた。
「そういえば、寮とかはあったりするんですか?」
「あるにはあるのだけど、私は王都のバネット地区にここより少し大きいぐらいの家を念のために買ったのよ」
「そうなの!?王都で一軒家って言ったらお金を持っている商人や貴族の人しか住めないのよ!」
「うちってもしかして金持ちなの?」
「そうに決まってるだろう!?ローグの家だって一般人じゃ到底手が出せない家なんだぜ」
「そうなんだ、みんなより豪華の物って弁当ぐらいだと思ってた」
ジンタは呆れたようにこっちを見てくる。
僕の家ってそこまで豪華な家だとは思っていなかった。
でもママがたくさんお金を稼げるくらい凄い人だったのは知っているから、ジンタが言っていることは正しいのかな。
弁当だけがみんなに買っている唯一の部分かなって思っていたけど。
友達がいなかったから中々人の家とか見る機会があまり少なかったから気づかなかった。リサさんがまたまたそわそわし始めて「私の息子もそこに住まわせてくれないかな」と聞いた。
少し遠慮している部分が見て取れる。
ママはニコニコしながらいいですよと返した。
その返事を聞いてかなり安心したような表情を浮かべた。
「別に俺は寮でもいいけど」
「私が稼いでいるお金ではかなりきついのよ」
ジンタはどれくらいかかるのか気になったみたいでママに質問した。
ママは最低でもこれくらいかかると寮にかかるお金ではなかったけど授業料を口にした。
それにジンタは口を開けたままになってしまっている。
僕もそこら辺の私立の学校と比較して高いことをジンタに説明してもらったことでビックリしてしまった。
リサさんもうんうんとうなずきながら深刻そうな表情を浮かべていた。
「そういえば入試があるから勉強しなきゃダメよ2人とも」
だいたい私立の学校には入学試験が付き物だったりする。
学校の特色に合わせて試験内容が変わってくるから注意しなきゃいけないところだよね。
成績はいいほうだと僕は思っているから少し安心できるけどジンタは魔法技術以外はからっきし努力しようとしないからまずいかもしれない。
ジンタもリサさんからの視線を感じて鈍い顔をしている。
やっぱり自覚しているよね。
ジンタは「俺が本気出せば余裕だぜ」って言っているけどホントに大丈夫かな。僕絶対だめだと思おうけど。
「あんたはちゃんと勉強しなきゃダメなのよ!」
「ローグくらいならすぐ超えられるぜ・・・・・・・・多分」
「まったく自信ないじゃんか!」
マリーがふふふと笑いながら「勉強教えてあげればいいじゃない」と僕に行ってくる。
僕も教えたいけどジンタが納得してくれないとおもう。
そんなこと思っていたらジンタがこちらにアイコンタクトしてきた。
えっなに僕に教えてほしいの。なんか今までのジンタじゃないじゃないか。
どうしてしまったのか。
「僕と勉強をしようか」
「ローグがどうしてもって言うなら付き合ってやるぜ」
なんでそんなに偉そうなの。
素直に教えてくださいって言えばいいのに。
僕が教えるのにジンタがこっちに教えてくれるみたいな形になった。
リサさんは「あんたが教えてもらうんでしょうが」とジンタの頭に拳骨をかました。
とても痛そうだった。
色々話すことが終り次の日を迎えるとほうジンタは朝から大きな鞄を持ってうちに来た。
僕は学校行こうとしていたけどトロールの件でしばらくの間休校になったらしくて、丁度のタイミングでブザーを鳴らしたジンタに止められた。
「よし、俺は頭が良くなるまで家に帰らない!」
「どうしてそんなことになったの?」
「あのくそババァーが俺に「あんた受からなかったらギルドに入れないから」って言ってきたんだ、どうしても引くわけにはいかねー!」
結構あるあるだよねそれ。
リサさんはどうしてもジンタに受かってもらいたいみたい。
ジンタが頑張るって言ってるんだから僕も努力しないといけないね。
僕たちはさっそくリビングで教材を広げてどの教科から手を付けるのか話し始めた。
「かなりあるけどどれに手を付けたい」
「魔法技術一択だろ」
「それジンタが得意な科目じゃん、僕は最初に魔法科学に手を付けたほうがいいと思うな」
ジンタは嫌そうな顔をしながらうなずく。
どんだけ勉強嫌いなんだよ。
僕は心の中で突っ込みながら学校で配られている4年生から6年生までの教材を開く。
僕たちが行ってる学校は4~6年生までの教材が同じになってるから、ものすごい分厚い。
持ち運びが大変で学校にいる子たちはみんな教室のロッカーにいつも置いている。
僕は体を鍛えてからは家にいちいち持って帰っているけど太っていた時はまず鞄に詰めたら持てなかったくらいだった。
昨日ママにどこまでの範囲が出るのかを聞いたら魔法教科と普通教科の5教科の教科書4年生から6年生までが出ると言っていた。
だって秋に入試で今は夏前だからもう時間がないよ。
ちょっとピンチ。
とりあえず勉強に取り掛かった僕たちは15分間集中して魔法科科学の説明文の読んでいくがジンタが途中で「俺には無理だ」とへばってしまった。
「もうちょっと頑張ろうよ、まだ15分しか経ってないじゃないか」
「内容はわかるけどつまらないぜ、覚えるのがめんどくさすぎる」
ジンタはもともと頭が悪くないのは知っているから勉強がめんどくさいだけだと僕は思う。
どうやったらやる気出してくれるのかなと考えているとママが洗面台から出てきた。
「なら、1時間勉強したら冒険者になるためのトレーニングを挟むっていいんじゃないかしら」
ジンタの目に活力が戻ってきて「それならやる」と口にした。
確かにジンタは冒険者になることが夢だから自分が好きなこと勉強の合間には挟むのはいい手段だと思う。
ずっと勉強しなければいけないのもつかれてしまうしこれからそうしよう。
「よし、ママの言ったとおりにしよう」
「これなら俺も頑張れるぜ!」
僕たちはポテトチップスの山を食べながら1時間必死に勉強した後、家の中で筋トレをしたり、ちょくちょく遊んだりしながらサイクルを回していく。
必死に頑張り続けて勉強をしている時間の合計が6時間超えたあたりで僕の集中力が途切れてしまった。
気が付くと午後の6時過ぎになっていた。
「僕もう疲れたよ、ジンタは疲れないの?」
「まだまだこれからだぜ、好きなことを合間に挟んで勉強してるから楽しいぜ」
「嘘でしょ~どんだけ勉強する体力があるんだよ!」
以外にもジンタは集中力や忍耐力が僕よりもあるようで平気そうにケロッとしている。
それとは真逆に僕はゲッソリとしていた。
今まで一日1時間~2時間毎日続けていればそれなりに点数をとれたから長い時間勉強したことがなかった。
今の僕にとってここまでが限界のラインだと思う。
「そういえば、学校が始まるまで俺ここで泊まっていいか?」
「いいけど、そんなに大きなケンカしたの?」
「違うぜ、俺は学校が始まった時に全て100点取るために決まってるだろ」
「リサさんのことで対抗心燃やしてるよ」
「そうだぜ、俺は勉強も完全にできる男になってあのくそババァーを黙らしてやるんだ!」
ジンタは負けず嫌いだからなのかリサさんに勉強をできるようになった所を見せたいみたい。
ジンタからリサさんに負けたくないって強い意志を感じる。
でも家で勉強しても同じじゃないのか。
気になって聞いてみると「誰かと一緒に勉強したほうが見張られてる感じがあって勉強がはかどるんだぜ」と返してきた。
なるほど。
確かに家よりかは授業中のほうが集中できるのと同じ原理だね。
僕も家で勉強するよりかは先生が見張っている環境で勉強したほうがはかどるもんね。ママとポップにはジンタからお世話になりますと伝えていた。
ママは嬉しそうだったけどポップは「睡眠の邪魔だけはするなよ」と穏やかな顔を浮かべていた。
人型になってからもそうだけどずっとベッドでしかも僕ので寝ているから、こちらの寝床が限られてくるんだよね。
「ジンタのベットをどうしよう」
「そうね、今日丁度ベットを注文したから明日には来るはずよ」
「なんて用意周到なんだ!」
もうすでにベッドを頼んでいたみたい。
あれ、ジンタがうちに泊まりに来る予定なんてなかったはずだけど。
もしかして僕の部屋に置くとかはないよね。
空き部屋があるからそこを多分お客様用にするんのかな。
今日のところは勉強を切り上げて、最近購入した本を読んでいた。
商店街の本屋をのぞいていたら面白そうな本を2冊見つけてママに買ってもらった。
2冊の題名は、モンスター大百科、冒険職になるための試験対策、どこでもあるような本ではあったけど冒険者になろうと思っている僕にとってはとても興味をそそられた。
モンスター大百科よりも冒険職になるための試験対策を僕とジンタはぺらぺらとページをめくりながら眺めていた。
「知らなかったぜ、自分が成りたい職業に成るために試験が必要なんだな」
「そうだね、武闘家なんてどうやっても筆記試験とか必要ないじゃん」
冒険職の中にはいろいろな種類があるけどどれもこれも成るためには筆記と実技の試験を受けなければならないと本に書いてあった。
僕からしてみれば武闘家とか実技だけでいいと思うけど。
「嘘だろ、これから俺たちが進む学園で習うこと丸々出るのかよ」
「う~ん、これ絶対試験に落ちる人沢山いるでしょ」
試験対策のために参考書が売られているらしいけどその内容が大変だった。
参考書にはバネットおよび訓練校で習うすべての科目が収録されていると記されているから相当受かるのが困難なことがうかがえる。
ジンタは嫌そうな顔をしだした。僕も勉強がすごい好きってわけでもないから、ため息が出てしまう。
ママに授業割を聞いてみるともっとしんどくなった。
朝の8時から午後の4時まで3年間授業を受けなければならないという衝撃的な事実に僕とジンタはショックを受けた。
「そんなに長く学校で勉強してたら溶けちまうぜ」
「僕も今のうちに長い時間勉強するのに慣れとかなきゃいけないな」
「休み時間5分とか地獄かよ」
「教科書の準備や水飲むぐらいしかできないよね」
授業との合間時間が5分しかないことに僕たちはがっかりする。
ほとんど何もできずに終ってしまうような休み時間なんて本当に休息をとる時間なのか。
疑問に思えてくる。
本格的に勉強をする体力を身に付けなきゃいけない。
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