第6話

そんなんじゃトロール倒せねーぞ!」

どうやってあんな大きな声を出しているのだろうか。

僕は人型のモンスターと戦いながら暑苦しさを感じていた。

最初は洞窟だから涼しいと思っていたけどボルグのせいで気温が上がってきてしまっているのだ。

僕だけかなって思っていたけどどうやらモンスターたちも感じているようで大量の汗をかいていた。

普段はそんなんじゃないんだけど修行を見ているときとかにそうなってしまう。

貴族の血が流れていることを知ってから6日くらいは森の中にあるダンジョンで鍛えていたけれど普通にスライムやコウモリ型のモンスターを倒せるようになってからこっちに移動してきたんだ。

まだ移動して1日目だけどね。

森の中にあるダンジョンで鍛えているときはあまりオーラらしきものを全く感じることができなかった。

だけどここに来てからなんか体がだるいなって感じてボルグに相談したら無意識に体から青色のオーラが少しずつだけど出てきているらしい。

僕はただ体がだるいだけで自分では確認できない。

それにしてもだるいなって思っていたんだけど今僕が身に着けているものは引き出すだけではなくてオーラを吸収する役目があるとまた新しい情報がボルグから知った。

なんかボルグって説明が足りないよね。

まとめるとオーラを強制的に引き出してそれを吸収することができる道具ってことになるね。

ボルグは「この道具はオーラを出すコツをつかむには最適だ」と言っていたからそうなのだろう。

けど仕組みを知ってかなりごり押しな道具であることはボルグの性格に似ていると思う。

やっぱり冒険者ってそういう人が多いのかな。

モンスターたちは道具のせいで遅くなっている僕のことをボコボコにしてくる。

森の中にあるダンジョンと違って人型が多く生息している洞窟のため知恵がある攻撃をしてくるからこちらのダメージが大きい。

(あいつらばっかり武器使ってずるいよずるいよ!)

僕は素手なのにモンスターたちはニヤニヤして武器を使ってくる。

木の棒がほとんどだがそれが痛くてしょうがない。

特にゴブリンはニヤニヤしているからむかつくよ。

集団で攻撃しちゃいけないって習わなかったのか!

こっちも一発は当てたいと攻撃をして見事1体のゴブリンを吹き飛ばすことができた。

あれ?なんかただ殴っただけなのに過剰にゴブリンにダメージが入っているような気がする。

「いいぞ、普通の拳よりもオーラが出ている拳のほうが何倍も痛いぞ!」

(オーラって滅茶苦茶強いじゃないか!)

今まで魔法が使えなかったことがコンプレックスだった僕はうれしくて気が緩みゴブリンの攻撃をもろに受けた。

痛いのなんのって思ったんだけどさっきより痛覚を感じなかった。

もしかして僕の体強化されてるのかな。

僕はとりあえず反撃に出てみるが体の動きが鈍いからかまったく人型モンスターに当たらない。

でもこちらも体が強化されているからか受けるダメージが少ない。

やばいなんか疲れてきた。

「早く倒さねーと意識が吹っ飛んじまうぞ!」

時間が経つにつれて体全体の筋肉が重くパンチするのもかなり意識しないとできなくなってきた。

いつもだったら食欲が湧いてきてもおかしくない時間帯なのにもかかわらず僕がまったくお腹すいておらずご飯なんて食べなくてもいいかもって思い始めていた。

「ここまでが限界だな」

動くことさえできなくなってき始めたのをボルグが見極めて僕のことを救出してくれた。

意識はあるものの動けないので家に帰るときはボルグにおんぶしてもらう形になった。

ポップは相変わらずダンジョンで爆睡しているところをボルグの大声で起こされている。高機能な目覚ましだよね。

疲れがひどかったせいかお風呂入った後にご飯を食べることなく自分の部屋で寝てしまい夜ご飯はいつもより3時間ぐらい遅い時刻になった。

僕の寝ている横で何も運動をしていないポップが堂々と横になっていた。

「オーラが出てるんだから相手に攻撃を当てることに集中しろ!」

次に日も洞窟のダンジョンでボルグの大声が響き渡る。

勘弁してほしいくらいの声量だよ。昨日と比べて少しオーラが出ていても体が楽だ。

昨日よりかはだるさも薄いしこれならゴブリンを倒せるんじゃないかな。

(なんでー昨日の2倍くらいいるんだけど!)

人型モンスターたちがうじゃうじゃと湧いてきている。

モンスターたちはみんな楽しそうにしているのはどうしてだろうか。

モンスターたちを気絶させたりしているだけで殺すなんてことはしていないから昨日闘ったやつらがいた。

何となくゴブリンや人型モンスターたちの顔の違いを少しだけ間程度だけど見分けることができることがびっくりなことに今わかった。

昨日闘ったゴブリンの1匹がほかのモンスターたちと何やら手話やゴブリン語なのかわからないけど話しているようだった。

挙句の果てには戦おうとはせずに地面に木の棒で何かを描いている。

モンスターたちはうんうんとうなずきながらこちらを見る絶対何かたくらんでるでしょ。僕が思うに作戦会議をしているんじゃないか。

でも面白いよね。だってモンスターたちにも言語っていうものがあるみたいだから。

僕が感心したように人型モンスターたちの会話を見ていると多分昨日闘ったゴブリンの1匹が武器を持たずこちらに来て何か伝えようとしている。

ごめんね、僕ゴブリン語ってわからないよね。

困ってしまっていると頭の中に「お前は俺たちを殺さないから、ちょうどいい経験値稼ぎになる、だから沢山の仲間を強化するためにいっぱい連れてきていいか?」とテレパシーが飛んできた。

僕はゴブリンの言葉を理解できるようになったのかなと思っていると後ろから豚の鳴き声が聞こえた。

瞬時にポップと目を合わせる。

そういうことか!

なんかわからないけどポップがゴブリンの言ってることを翻訳して伝えてくれていたんだと。

確かに人間じゃないポップならわかるかもしれないよね。

「わかったよ、これからよろしくね」

ゴブリンは独特な鳴き声を上げる。

多分通じたんだと思う。

昨日闘ったゴブリンは仲間たちのところまで戻り武器を手に取る。

そして一斉にこちらに攻撃し始めた。

ちょっと急じゃない!

僕も急いで構えをとる。

(とんでもない数だよ、これじゃー体が慣れたって関係ないんじゃない)

相手に着実に当てるような軽いパンチや蹴りで応戦しているけどいかんせんモンスターたちの数が多すぎてどうにもならない。

オーラが出ているからかドンドン吹き飛ばすことができるけど、浅い傷しかダメージを与えられないためモンスターたちはすぐにむくりと立ちこちらに戻ってきてしまう。

「多すぎて、きりがないんだけど!」

「どんどん相手を倒していけ、しっかしゴブリンと仲良くなるのは異常だな!」

永遠にきりがないよ。

人型モンスターたちはなんでそこまで経験値を欲するのかわからないけど一つだけ言える。

集団で一人を攻撃しちゃいけないって習わなかったのかな!

「疲れた、体が急激にだるくなってきたよ」

体が疲れてきて昨日のだるさがぶり返してきた。

もうヘロヘロだよ。

僕の動きが鈍り始めたのを人型モンスターたちは察したのか攻撃するのをやめてぞろぞろと帰って行った。

なんだか優しい奴らだったな。

戦いが終わった僕はボルグのもとに近寄る。

「あいつらはあいつらなりに意思があるんだな」

ボルグはゴブリンたちが帰って行ったほうを眺めながら「うーん」とうなっていた。

どうしたのだろうか、何か思うことがあったのだろうか。

それから3日間は同じことの繰り返しをしていた。

自分で言うのもあれだけど成果が出ていると思う。

だるさを抑えることもできているし、何となくだけど体の動きが軽くなったような気がする。

だからと言って人型モンスターたちを圧倒できるかと言ったらそうでもなかった。

僕と戦っているうちにモンスターたちの戦闘力も上昇しているのかこちらの動きと互角に渡り合っていた。

もちろん僕は1人なのに対してあちらは数十体もいたけど。

モンスターたちも強くなるんだって感じられた。

人型モンスターだからかかなり学習能力が上がっていてブーメランみたいな武器を持ち出してきたときには驚かされた。

だって僕素手だよ。

遠距離の攻撃なんてずるいじゃないか。

多分近づいたらかなわないから距離を離してこちらの攻撃を届かないところで攻撃をしようという発想だろうけど。

ボルグとポップはなんかその様子を見てゲラゲラと笑っていたのが印象的だった。

知恵が使えるモンスターの恐ろしさを体験したよ。

こういう時に魔法が使えたらって思う。

「今日は道具なしで戦ってもらう」

「いや待って、着てきちゃったんだけど、それもっと早く言おうよ!」

「大丈夫だ、着替えはちゃんと持ってきているぞ」

「いやいやいや、そういう問題じゃないからね!」

何でそういうこと家とか前もって言わないのかな。

僕はしょうがないからもともと自分が持っていた服に着替えた。

なんか視線を感じると思ったら鼻を伸ばした人型モンスターたちが見ていた。

なんで僕の着替えをぱちくりと目を開けて観察してるのかな。

すごい恥ずかしいのだけど。

多分胸のあたりを布で隠してるから雌なんじゃないかなって思う。

「お前モンスターにモテるのか、女の子にモテるってことはいいことだぞ」

「なんか、あまりうれしくないんだけど」

ボルグは面白そうにからかってくる。

モテるんだったら人間の女性がいいなって思うんだけど、今のところ商店街のおばちゃんたちと人型モンスターにしか好かれてないんだよね。

ポップならモンスターと結婚できるんじゃないかって考えていたら目が合って勘弁してくれって訴えてきた。

じゃ誰と結婚するんだろ。

「よし今日は自分で意識してオーラを出すトレーニングをするぞ」

「意識するってどうするの?」

「俺が持ってきた道具のおかげででオーラの通り道はできてるから後はここで目をつぶりながら出ろって念じれば出ると思うぞ」

「戦わないんだね、人型モンスターたちはもうスタンバイしてるけどいいの?」

「そこはポップの仕事だよな」

ポップはなんで俺が損ことしなきゃならないって感じでため息を吐きながら人型モンスターたちがたくさんいるところに入って行き、何か話をし始めた。

僕は何の話をしているのだろうかって思ったらポップを含めた人型モンスターたちが仲間同士で戦い始めた。

(ポップは何やってんの!絶対危ないじゃん)

心配しているとポップは隅により座り始めた。

僕はモンスターたちの状況がわからないままでいると「自分たちで軽く戦って経験値を稼ぐらしいと」と頭にテレパシーが入ってきた。

なるほどポップはそうなるようにうまく仕向けたのかな。

ボルグに言われたとおりに目をつぶってオーラが出るように念じてみるが中々でないで時間が過ぎて行ってしまう。

「念じてるばかりじゃなくて体の内にある変な感覚があるはずだからそれをうまくつかむことを意識して」

「それ先行ってよ、どっからどうやっても確実に念じているだけじゃダメじゃん!」

ボルグは遅すぎる助言で自分の中にある変な感覚を探してみる。

目をつぶっているのに体の中を通っている線みたいなものが見える。

線には色がついていて半分が僕の髪色みたいな青だけど、もう半分は金色をしている。

何となく感じることができた僕はそいつを掴むように意識してオーラが出るように念じた。

「スゲーじゃねーか、オーラに関してはローグは天才で間違いねーな」

「なんか、糸みたいなのが見えたんだけど」

「あー後で大事になってくるけど今は気にしないでいいぞ」

「そうなんだ、なんか青色と金色だったから」

「やっぱりか、お前絶対金色の糸を掴もうとするなよ」

僕が理由を聞いても金色の糸のことは何も答えてくれなかった。

どうしてなのだろう。

オーラを出すときは必ず青色の糸を掴むように意識しなきゃいけないらしい。

その後自分でオーラを出しながら壁を殴らされたのだけど案の定痛かった。

なんでそんなことしたかってオーラを自らで出しながら体を動かすためらしい。

いや洞窟の壁がすしへこんでたけど僕の手もそれだけダメージが来てるからね。

こんなことやってないで早く回転蹴りを覚えたい限りだ。

今日の修業が終り、ボルグが明日は休みにしとくからと伝えられた。

「お前明日何があるのか忘れたのか?」

「何かあったかな、学校がある以外に思いつかないんだけど」

ボルグは呆れたようにして言うけど本気で何か大事なことがあるのだろうか。

何か忘れている気がするけど思い出せない。それよりもご飯が先だよね。



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