第5話

ギルドで依頼をこなすようになってから2週間経ち僕は学校が終わったので帰路についていた。

ギルドに入ってから充実した毎日を過ごせている。

家にある貯金箱にはかなりお金がたまってきていた。

メンチカツ何個分だろうか。

今日も早くたくさんの依頼こなさないとね。

商店街を歩くだけでもいろいろな人たちから声をかけられたり何かをもらったりしている。

弁当屋さんからよく昼ご飯をもらうことが多くなった。

まだぎっくり腰が治らなくて依頼をこなすようになってから毎日僕が弁当を運んでいる。

町の人からの人気が高かいからやっぱりみんな注文したくなっちゃうよね。

僕もメンチカツほどとはいかなくてもとても気に入っている。

ママのご飯には勝てないけどね。

(すごい重そうだけど大丈夫かな)

僕は急いで近くに駆け寄る。

たくさんの重い荷物を持っている老夫婦がかなり大変そうだ。

「あのー僕がお持ちしましょうか」

「おー!ローグ君じゃないか、大丈夫だよ、もうちょっとで商店街につくし」

「ありがとーね、冒険者になるときはいつでも店によってちょうだい」

「わかりました、何か困っていることがあったら言ってくださいね」

どうやら僕の助けは不要だったようだ。

なんか見覚えがあるなって思ったら商店街に店を構えている人たちだった。

武器の手作りもしているらしくパリストン支部の冒険者たちにはかなり人気があるんだよ。

腕も確かみたいだしギルドの近くにあるから冒険者は寄るよね。

僕は「じゃ行きますね」と声をかけて歩き出す。

歩き出して3分くらいしてから悲鳴が聞こえてきた。

僕はさっきの老夫婦だってすぐに気が付いて走って戻るとそこには緑色で巨大な生物がいた。

(うそでしょ、パリストンは危険なモンスターが出ないことで有名なのに!)

大きさは2~3メートルありものすごく巨大だ。

多分トロールだと思う。

Dランクモンスターで人を食べちゃうって有名だ。

なんでそんなモンスターがここに。

ゆっくりとゆっくりと武器屋の老夫婦近づいている。

二人は腰を抜かしてしまったのか動けなくなっている。

(やるしかない!僕が行くしかないんだ!)

怖くて足が震えるけどこの場に僕しかいないから。

助けられるのは僕しかいないから。気づいたら僕は走っていた。

トロールの元へ知っていた。

「ローグ君ダメだ!わしらはいいから逃げなさい!」

僕はトロールの意識を動ける僕に向けようとトロールの足元に行き力いっぱい殴りつけた。

するとこっちにトロールは視線を向けた。

僕は急いで離れるべく僕は逃げた。

トロールも僕を追いかけてくる。

「怖いよーもうおしっこちびりそうだよ」

後ろからドスドスと足音が聞こえてくる絶対捕まったら殺されてしまうと確信があるからこそ必死に必死に走り続ける。

なんか風のうわさで聞いたけど人は強敵に追われているときに本来の足の速さが出るって。

多分今だよね!

どうしよう、このまま商店街に突入してもいいのだろうか。

どうにかギルドの人に助けてほしいけど、ほかの人を巻き込んでしまう形になってしまう。


かなり武器屋の老夫婦とかなり距離が取れただろうって頭に浮かんだ瞬間僕は地面に転がった。

「嘘でしょ、なんでこんなに大きな石が転がってるんだよ!」

起き上がろうとするとトロールが追いついてきて僕を見下ろす。

よだれを垂らしながら僕を餌のように見て。

恐怖でしかなかった。

あの武器屋の老夫婦が動けなくなってしまったのもうなずける。

怖いよ。

怖いよ。

怖くて涙があふれてきた。

(このまま死ぬなんて嫌だよ、誰か助けて!)

突然黒い肌の人がトロールに回転しながら蹴りをかます。

ものすごい威力でトロールは吹き飛んでいった。

「大丈夫だ、ヒーローが来たぞ!」

安心するような笑みを浮かべている黒い男は僕がギルドに入る理由となったボルグさんだった。

僕のことを助けてくれたのだ。

無意識のうちに「かっこいい!」と声に出してしまう。

「そうだろ」ってボルグさんは嬉しそうにする。

「ほら涙を拭いて帰るぞ、今日はお前の家にお邪魔することになってるからな」

ボルグさんは僕のことを立たせる。

あまりにボルグさんがかっこよかったから固まっていたのだ。

何かに憧れるってこういうことなんだなったボルグさんの回転蹴りを思い出しながら思う。

僕もあんな技を出せるようになりたいな。

「さっき、ローグが武器屋の人たちを助けるために動いているのが遠めで見えたからな、そのなんだ・・・・・・・・・お前の活躍に免じて弟子にしてやるよ」

「本当ですか!僕もかっこいい冒険者になりたいです」

ボルグさんは頭をかきながら顔を赤くする。

なんか照れているみたいだ。でもこれで僕はもっと人助けをする力をつけられるぞ。

きっとさっきの僕みたいに助けを求めている人たちがいるはずだから。

僕は冒険者が戦う姿を始めてみたけどかっこよかった。

なんかあれだけ強いとロマンがあるよね。

それから僕は自分の家に入りボルグさんと手を洗ったりして席に着いた。

何か大切な話があるみたいだ。

「実はローグがギルドに入ってるのここ2日くらいで知ったのよ」

「そうなの!まさかばれてるなんて」

「当たり前じゃない、いつもと違ってあんだけ汗だくになって帰ってきたらわかるわよ」

「そっか。僕あまり外に出たことないし自分から汗なんか流したいなんて思ってなかったし」

やっぱり隠し事って難しいね。

昔から運動するどころか家に帰ってきたら買い物以外外に出ないから、汗だくに帰ってくるようになった時点でおかしいと思うよね。

隠せるはずなかった。それからボルグさんと一緒にママがパーティーを組んでいたことに驚きだった。

もしかしたら最初からママの名前を出していたらすぐに体を鍛えてくれたのかな。

でも冒険者のカッコよさを知れたからこれはこれでいいのかな色々話を聞かされて僕はふっとお父さんのことが気になってしまった。

ちょうどママがご飯作りに行ったタイミングで小声で聞いてみる。

「あのー僕のお父さんのこと知ってますか?」

「知ってるが、あいつはくそだから会わないほうがいいぞ」

「そうなんですか、なんかどうしても会ってみたくて」

「あーー、子供としてみればそうだろうが、俺がお前のことを面倒見てやるんだからこれからは寂しくならないさ」

あまりパパっていい人ではないのだろうか。

ボルグさんはなんか平気で心に来ること言うよね。

話してる最中とか恥ずかしいこととか表情を変えずに口にしてたし。

「そんな話よりもな、おいしそうな魚やお肉を知り合いからたくさんもらったからよ、きっとマリーが美味しく作ってくれるはずだ」

僕は急いで席を立ちキッチンへ向かう。

そこにはたくさんの魚やお肉それにキノコなど、ご馳走のもとになるものばかりがたくさん置いてある。

今日のご飯は期待できるね。

僕はご飯がまだできてないのに満足して席に戻った。

楽しみで仕方がない。

「それで、お前は何の職業につきたいんだよ」

「魔法が使えないから今のところは武闘家一択しかないよ」

「そうか、俺も武闘家だからお前にはぴったりだな!」

「そうなの、相性ピッタリだ」

魔法が使えない僕が慣れる職業は限られてきてしまう。

だいたいは武闘家か戦士かどっちかだろうけど僕は何となく前者のほうが向いてる気がする。

ボルグさんも武闘家だから色々なことを聞くことができると思う。

「よし、明日からトレーニング開始するか」

「そうですね、楽しみだな」

明日が待ち遠しくて仕方がなくなった。

これからボルグさんみたいに華麗な技を身に着けたいな。

それから時間が経過して料理ができてみんなでご飯を食べている最中にボルグさんが「そういえばトロールのことで怪我とか大丈夫だよな」と口にしたことでママの怒りが爆発した。

それはそのはず。

家に帰ってからすぐに報告しなくてはならないことだったのに僕とボルグさんは忘れてしまって怠ってしまったのだ。

ママの声があまりにも大きかったせいで上で寝ていたポップが急いで下に降りてきた。

最近元気だけど寝ている時間が異常に多くて心配なんだ。

怒られた後すごいママに心配されて何回も抱き着かれた。

少しママも泣いていた。


すべての授業が終わり、ボルグさんと森の中にあるダンジョンに来た。

もちろんポップもついてきたけど、なんか眠たそうにしている。

ダンジョンには1~10までのレベルがあってもちろん僕がいる場所は一番低いレベルだ。1~9レベルのダンジョンはちょくちょく存在しているけどそれ以上は国に一つしかないことがわかっている。

リーゴ先生におすすめされた本に書いてあったのはレベル10のダンジョンには神が作ったとされるオーブが必ず1つ存在するらしい。

みんなそれが欲しくて頑張っているとか。

なんか僕たちの国はたくさん財力を持っているらしくてほかの国々からオーブを発掘させてもらったりお金と交換してもらったりしているんだって。

だから王族の髪は金色なのだろうか。

王族は代々髪の色が金色である。

「お前にはこいつらを装着してもらう」

ボルグさんはたくさんの道具を出してきた。

靴、武闘着の上下、ベルト、リストバンド、ハチマキとなんでこっちに来て出すのかがわからない。

家で渡してくれればすぐに今着ている服を洗いものに出せたじゃないか。

「なんか家で着替えてもよかったと思うんですけど」

「今考えればそうかもしれないが俺が忘れてたから明日からだな。こいつらの性能の話をするが簡単に言って身に着けているだけでオーラを無理やり出させるという優れものだ」

「そうなんですか、でも着けてるだけで出る物なんですか」

すごいいい話なのではないか。

それなら毎日来ていたらオーラが出るなんて。

しかし、ボルグは腕を組みながら首を横に振る。

「そうとは限らない。条件的にはこいつらを着けて筋トレや戦闘を行うことで無意識にオーラを出させる仕組みになって言うが・・・・・・・・・才能がなければ正攻法より超時間がかかるのも事実だ」

「ちょっと待ってくださいよ、着けているだけで効果出ないじゃないですか!それに多分僕には才能がないと思いますよ」

もう全然話が違うよ、着けているだけとか嘘じゃないか。

だからダンジョンに来たんだな。

「そんなの試してみねーと分かんねーだろ、それにお前話し方が固いんだよ!」

「いやでも、なんか年上の人に敬語使わないとぼこぼこにされるって」

「しねーよ、敬語を使うなんざ上司でもあるまいしさん付けもやめろよ、それに俺とお前と仲だろ」

「そうなの、これから敬語はやめるよ」

もう卒業しちゃったけど1つ上のケンカばかりしている子から敬語使わないとぼこぼこにしてやると脅されてから僕は年上にはできるだけ使うようにしていた。

なんかものすごく強い人で面倒くさくてしょうがなかった。

商店街にいるおばちゃんたちとは何となく砕けた言葉で話せていたのは見た目が怖くないこともあったと思う。

ボルグは特にあのいじめっ子に似ているからかもしれない。

「よし、すべて身に着けたら地面に俺が置いた臭い袋を持って少し離れたところに行け」

僕は急いで武闘着やらなんちゃらに着替えて臭い袋を手に持ちボルグと距離が離れたところに行く。

すると臭いにつられてなのかわからないけどたくさんのモンスターたちがぞろぞろと姿を見せだし始めた。

スライムやコウモリ型のモンスターなど小型で踏みつぶすことができそうな小生物が集まった。

目線が何となく手に持っている匂い袋に向かっていることに気付く。

(この袋からなんか臭いが出てるのかな)

僕の鼻には何も感じない。

無臭なのだ。

でもモンスターが集まっているってことは多分僕たちにはわからなくても彼らにはわかるのだろう。

「この数を相手にするのはかなりきついよ」

いきなり襲い掛かってきたモンスターたちに僕は意表を突かれ反応が遅れてしまった。

僕はとっさにスライムに拳を当てることができたけどそのほかのモンスターたちに攻撃されて微妙に痛い。

(足元ばっかり攻撃されるからあざができちゃうかも)

それから数分くらいしても僕はなかなかモンスターたちを撃退することができないどころか1匹も倒すことができないでいた。

それにしびれを切らしたボルグが動き出した。

「ここは最弱のダンジョンだぞ、何苦戦してんだ!」

ボルグの声が響き渡る。

なんて言う声の大きさなんだ、鼓膜が破れてしまう。

しょうがないじゃないか、今までモンスターとほとんど戦ったことないし、こんなに数がいたら大変だよ。

僕の周りにはたくさんのモンスターたちが攻撃を仕掛けようとしている。

一匹ならケンカさえもしたことがないくらいの僕でも倒せるぐらいだけど10匹もいたらさすがに無茶だと思うんだけど。

さっきからモンスターたちがちょろちょろと逃げてこっちの攻撃が当たらないし。

逆に当てられるしで僕はイライラしてしまっている。

「もっと力を抜いて軽く殴るようにして攻撃するんだ!」

ボルグからのアドバイスを参考にとにかくモンスターたちに弱くてもいいから当てるように徹する。

力をこめないで向かってきた1匹のコウモリ型のモンスターにぶつける。

痛そうにしながらコウモリ型のモンスターは僕から距離を離した。

「ようやく当てられたよ!」

僕は当てられたことに喜びを感じる。

力をいっぱい攻撃するのではなくまずはモンスターたちに命中するような早くて軽いものにするべきであることに気が付いた。

それでもモンスターたちに痛い攻撃をすることができたとしても気絶させるところまでには至らない。

無限ループのように戦闘が続くのだ。

「集中力が切れてきているぞ、まだまだ夜ご飯まで時間があるぞ」

なんということだ。

こんなにもくたくたで時間が長く感じられるのに、夜ご飯が遠いなんてありえないよ。

息を切らせながら胃の気持ち悪さを感じた。

お腹すくと感じるものと同じものだった。

「帰りたいよ、早くご飯も食べたいよ!」

「ならさっさとモンスターたちを倒して来いよ!」

畜生。ご飯の妬みは強いんだからな。

僕はすぐにでもご飯を食べたいと動きに切れを増していく。

僕の目にはご飯しか映っていない。早く食べなきゃ。デブの本性を丸出しでモンスターたちに立ち向かっていく。

拳ばかりではなくて蹴りを使ってみる。

広範囲に当てることを意識して。

すると足元にいるモンスターたちを一気に蹴散らすことができた。

さっきから可愛い見た目とは裏腹にぶよぶよとした粘着質な液体を出して動きにくくしていたから気を取られてコウモリ型のモンスターに切り傷にもならないが噛まれていた。

ちょっと痛い程度だけどチリも積もれば山になると同じで何回も同じような場所に噛まれれば少しずつ傷ができていく。

「なんだありゃ、さっきより全然動きがいいじゃねーか」

無我夢中で体を動かしていく。

アッと我に帰ったらあれほどいたモンスターたちがみんな伸びていた。

息切れがすごくて思考が追いつかないけどご飯が近くに来ていることはわかった。

「よーし帰るか、ってお前はいつまで寝てるんだよ!」

ボルグのもとに向かうとポップを起こそうとしていた。

何のために来たんだと怒っているボルグはわざとポップの耳元で「いい加減に起きろ!」と大声で叫ぶ。

豚特有の鳴き声で「ぶひーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」と驚きながらボルグのことをにらみつける。

なんかポップの目を見ていると何となく強そうな気がした。

ボルグは「お前見た目に寄らず強いな!」とポップの頭をなでる。

すごい嫌そうなんだけど。

「とりあえず帰ろうぜ、おいしい飯が待ってるぞ」

「早く帰ってママのご飯が食べたいよ」

家に帰り僕はお風呂や色々なことを済ませて家族全員で席についてご飯を食べ始めたけど昨日に続き今日もボルグいるのだろう。

「ねーなんで、今日もボルグは僕たちと一緒にご飯食べているの?」

「それはなー朝昼晩は俺もここでご飯食べることになったからだ」

「そうなんだ、なんかボルグ嬉しそうだね」

ボルグは頭に手を置き「そうかぁ~」と顔を赤くしながら照れている。なんか隣に座っているママのほうをちょろちょろ見ている姿は僕の学校でもよくある好きな人に目線が行ってしまう男の子見たいだ。

僕の隣に座っているポップから「あの男マリーを狙っているぞ」と伝わってくる。

やっぱりそういうことなのかな。

「そういえばボルグはこのご飯の材料をよく集めてるわね、かなり高いでしょ」

「パリストンにある市場で働いている兄貴からたくさん余ったもの貰えるからな」

「それはお得じゃない、兄弟仲良しっていいわね」

「まぁまぁだな、俺を見てればわかると思うが、男二人して血の気が多いから飲みに行くとちょっとしたことで殴り合いのけんかになるんだよ」

「いいじゃない、ケンカするほど仲がいいっていうし」

ママもボルグと話していて楽しそう。

なんだか2人楽しくしているのを見ているとこっちもハッピーな気持ちになるよね。

みんなでご飯食べるのって楽しいかもしれない。

学校では一人でご飯食べていることが多かったから、寂しかったし。

「そういえば、俺の兄貴の息子がお前の学校に卒業したけど通ってたらしいぞ、ちょうど1年前ぐらいに」

僕は一瞬でお腹が痛くなってくる。

絶対あの人しかいないと思いながら「バレット君とか」と口にしてみる。

ボルグは「知ってんのか!」と少し興奮しているみたいだけど僕からしたら関わると勝手に周りがケンカ状態になる要注意人物だ。

よくつるむ中っていうより一方的つるまれるっていうほうがあっていると思う。

バレット君は悪い人ではないんだけどすぐに手が出ちゃうのが難点だ。

出会いは4階に上がるために使用する階段でバレット君が一人で弁当を食べてたんだけどすごくおいしそうで、僕は無意識に「あ~おいしそうだなー」とつい漏らしてしまったのがきっかけだった。

それから毎日僕を見かけるとバレット君はこちらに絡みに来るようになった。

気が結構合うし、真っすぐなところも結構魅力的だなって思うんだけどすぐケンカをするから結果的に人助けが趣味な僕としてはなんとか気性が荒いところを直してほしかった。

お互いに友達と言える人物がいなく学校が好きではなかった。

だから昼休みとかはボードゲームとかをやっていた。

毎回僕が勝ちそうになるとわざとボードをひっくり返そうとするけど。

かなり負けず嫌いなのがわかるよね。

学校だけの付き合いだったから今何しているのか知らないけど。

ママやボルグにその話をしたら凄くうれしそうだった。

ママは学校生活のことでリサさんからいじめられていることを知ってから心配していたみたいで、安心したような顔をしている。

いや、もう学校にいないから関係ないからね。

ボルグはバレット君のことがかなり心配しているみたいだった。

やっぱりバレット君はクラスでうまくやれてなかったみたいで、家に帰ってもあまり浮かない顔をしているときがあったとか。

そうだよね。ズバズバダメだと思うことをすべてストレートに口にしちゃうからね。

自分の意見を曲げようともしないし、芯があって僕はいいと思うけどそのせいで生徒どころか先生からも嫌がられていた。

バレット君と4階の階段でご飯食べているときによく担任が面倒くさいことをすべて押し付けてくるんだって言っていたから関係がかなり悪かったのも知っていたよ。

「そうかそうか、あいつも友達がいたんだな」

「そういえば、バレット君ってどこの学校行ったの?」

「マリーの親父が学園長を務めるバネット総合学園に確か実技では首席で入ったんだぜ、すごいだろ」

ボルグはバレットのことを誇らしげに僕に言うがその隣に座っているママからとんでもないくらい冷えた視線を送られていた。

誰もがアッ地雷だってわかるような表情をママはしている。

ボルグはなんかバレット君と似ている気がする。

ポップは悪魔のような顔になっている。ボルグの起こし方に怒っているのだろう。

絶対さっきの起こし方で怒っているよ。

「私まだ冒険者だったこと以外話してないのよね」

「そうなの・・・・・・・・・・・・・しまった!?」

ボルグは汗をだらだらとかきながら、やってしまったという様子になる。

多分バネット総合学園の話をまだママから聞いてなかったから、なんかあるのかもしれない。

それに当たり前の話だけど僕におじいちゃんがいたのか。

会ってみたいな。

マリーはため息をつき、スープを口にくわえてから事情を語り始めた。

ママは王都の貴族出身でパパの名前は伏せていたけど、僕がお腹にいるときにケンカしてしまって、ボルグの実家がのどかで住みやすいと聞いてここに引っ越してきたとのことらしい。

(そんな壮絶なことがあったのか、おじいちゃんに会いたいと思っていたけど我慢しよう)

ママは「過ぎた話はいいのよ」と寂しそうに笑みを作る。

なんか僕のせいでママが寂しい思いをしているのかもしれない。

ママの隣に座っているボルグは相槌をしてなんかいい案が浮かんだとばかりに口を開く。

「ローグをバネット総合学園に行かせればいいじゃないか、ローグは青髪だしすぐに気が付いて何らかの反応を示してくれるだろうし」

そうか、僕がおじいちゃんを見てくればいいのか。

ボルグの意見に一理あるかもって思ったけどもしかしてバネット家はみんな青髪なのかな。

そう思ってボルグに聞いてみるとやはりそうだった。

ボルグと僕は結構乗り気になっているけどママはそうではなかった。

「それがだめなのよ、私が一人っ子だったから確実に跡取りがいないのよ」

どういうことだろうか。

ママが言ってることがわからずにいた僕にボルグが「お前が連れて行かれるかもしれないってことだな」と教えてくれた。

僕を跡取りに考える可能性があるだなんて考えもつかなかったよ。

僕なんかが跡取りだなんて田舎育ちなのに。

きっと食べるマナーも通用しないし話し方も直されてしまうかもしれない。

なんか今の生活が壊れちゃうのは嫌だな。

「大丈夫だ、俺とリーゴの野郎を巻き込んで王都に一緒についていくからよ」

「なんかすごい心配だけど、学校だから連れて行かれたりして」

「そんなことがあったら、俺がバネット家に突入してお前を助け出す!」

「いやいやいや、それまずいでしょ!大事になりかねないよ!」

僕とボルグの会話を聞いていたママが元気になっていく。

でもそれよりものすごいボルグさんのごり押し思考にびっくりだよ。

このままじゃ王都でボルグが犯罪者になっちゃうよ。

「でも、ギルドの人に聞いた話ではあまり私の家は大きく動いてないみたいだから危険な状況になりにくいかもしれないわ」

「そうだぞ、王都で力を持ってる連中なんだからここにいることぐらいすぐにわかるだろう」

マリーとボルグはお互いに首をうんうんと縦に振っている。

さっきの下り何だったの!

絶対いらないじゃないか。なんか疲れてきちゃうよ。

まだまだ大量に残っているご飯を食べながらその後、貴族の話が主体となった。

どうやら髪色でわかるらしい。

でも例外がいるからだいたいは特権魔法だとかで判断するらしいけど。

「お前に身近な貴族って言ったら俺たちの土地の主でもあるパリストンだな、髪が赤いのが特徴なんだ」

僕の頭にジンタが浮かぶ。

そうだ学校で髪の毛の色が目立つのは僕とジンタしかいなかった。

ほかはみんなくるだったり少し茶色だったりするぐらいだ。

びっくりしてしまってスープを吐き出してしまう。

「お前汚いぞ、皿の中だからいいものの、その反応からしてなんか思い当たる節でもあんのか」

「ジンタの髪色が赤だったから」

「なに!マジか。パリストンは今後継者がいないことで悩んでいることは有名な話だ、もしかしたら中で何かあったんじゃないのか」

「そうなのね、今度リサさんとここでお茶会をしようと思ってたから少し聞いてみようかしら」

ジンタは僕と同じ貴族の血が流れているのかな。

そうだとすれば仲間ってことになるね。

ジンタに関して何か忘れているような気がするけど思い出せないから別にいいや。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る