第83話 閑話 - 製本作業
俺たちの所属するByte編集部は、年数回、不定期で雑誌を刊行するのが仕事の一つだ。主な対象読者は計算機学部生で、計算機学部棟に平積みにしておくのが通例だ。
そして、2学期がもうすぐ始まろうという9月も下旬の今、恒例の製本作業にとりかかっていた。製本といっても大したものではなくて、マスターとなる原稿をセットして、リゾグラフという機械で大量のコピーを作った後は、部員総出で、手作業でホッチキスで止めるくらいだ。
とはいえ、100ページ近い冊子を綴じようとすると結構大変なのだ。というのも、編集部横のラウンジにページごとに紙をたばねて、部員皆がぐるぐる回って、きちんと1ページから最後のページまでまとめる必要があるのだ。
というわけで、その製本作業をしているのだけど―
「今回、ページ数多いからしんどい……」
学内の冊子なので部数は400部くらいだけど、部員10名が作業をしたとして、1人辺り40回くらい回らないといけない。しかも、1周するのに100枚の紙を順番に積み重ねていく必要がある。
「ちょっと、目が回ってきそうだよね」
なんて言いながら、相変わらず涼しい顔をしているミユ。
「何周したっけ?」
「まだ10周くらいじゃないかな」
うへえ。あと、30周か。だるい。
「部室にも、自動的に製本してくれる機械とかあればなあ……」
自然と愚痴りたくなる。
「さすがに、こっちじゃ予算でないな」
カズさんが答える。
「いくらくらいするんでしょう?」
「そうだな……数十万以上はするだろうな」
同じく、製本作業でぐるぐる回っている
まあ、だるいけど、仕方がない。ひたすら、ぐるぐるぐるぐる回り続ける。この辺りの効率は個人差があって、俺なんかはゆっくりなので、後ろから追い越されたりするし、逆に素早いミユはどんどん回っていく。
そんな、だるい作業が約1時間続いた後。
「よっし。できたー!」
ラウンジにうず高く冊子の山が築かれる。
「お疲れ様」
ミユが労いの言葉をかけてくれる。
「そっちこそな」
「私は、そんなに疲れてないし」
相変わらずケロリとしてやがる。
「よし。飯行こうぜ、飯」
作業が終わった途端、カズさんが提案する。確かに、お腹が空いてきた。
「行きましょう。いいですね!」
「行きたいです!」
揃って賛成する俺たち。
「俊さん、車頼めるか?」
「おっけー、カズ。お安い御用だ」
というわけで、お昼ごはんを食べに行くことになった。
たまにだからいいんだけど、疲れた。そんな事を実感するのだった。
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