第81話 幼馴染のために料理に挑戦した件
俺たちが婚約者になって、数日経ったある日。
「今日は、俺が昼作るよ」
前々から、ミユにいつものようにご飯を作ってもらっていたから、たまにはご飯の一つでも作りたくなったのだ。
「無理しなくていいのに」
「別に無理じゃなくて、ちょっと作ってみたかっただけだって」
普段作ってもらっているから、たまには代わりに作ってもいいだろう。
「じゃあ、お願いするね。何にするの?」
「それが問題だよな。作れるもの多くないし。冷蔵庫見るぞ?」
冷蔵庫を開けて、使える食材が無いか観察する。すると、キャベツにもやし、豚肉、それに焼きそばの麺と、ちょうど手軽な料理にいい食材が揃っていた。
「思いついたんだけど、焼きそばでいいか?」
「ふふ。簡単に作れるもんね。じゃ、楽しみにしてる」
なんだか、生暖かい視線で見つめられている気がする。こいつに比べたら、俺の料理の腕なんて月とスッポンだから仕方ないけど。
というわけで、手早く作ってしまうことにする。まずは、フライパンに油をなじませて、それからキャベツを投入して、しばらくかき混ぜる。キャベツは水分がほとんどだから、どんどん容積が縮んていく。キャベツがしんなりしたところで、もやしを投入。
野菜に火が通ったら、豚バラ肉を投入。それから、塩コショウを振って、かきまぜながら、肉が固くなりすぎない内に焼きそばを投入。あとは、添付のソースを入れて、ソースを十分に絡めて一丁上がり。
「ほい、できたぞ」
「結構、よく出来てるね。美味しそうだよ」
「いや、おまえに比べればイマイチだけど」
野菜炒め+焼きそばなら失敗はしないだろうと思ってのチョイスだけど、ミユの作る料理には及ばないだろう。
「「いただきまーす」」
その言葉とともに、焼きそばを食べ始める俺たち。うん。悪くない。
「とりあえず、食えるものにはなったな」
少し不安だったけど、これなら大丈夫だ。
「そんなに心配しなくても、とっても美味しいよ」
ミユは満足げだが、どうしても俺の腕だとミユに見劣りしてしまう。
「そうかね。なんとか、食えるレベルだと思うんだけど……」
なおも俺は言い募ろうとするが、
「私が美味しいって言ってるんだから、素直に受け取ってほしいな?」
ニコニコと俺を見つめるミユ。
「そうだな。ありがとう」
褒め言葉を素直に受け取れないのはよくないな。
「それに、ちゃんと塩気抑えてくれてるでしょ?」
とミユ。しっかりばれてたか。
「あ、まあな。お前は控えめな方が好きだろうと思ったし」
「そういう気遣いがポイント高いよ」
「これ以上ポイント上がったら、どうなるんだ?」
ちょっと聞いてみたくなった。
「こういう風にしちゃう」
ぎゅっと後ろから抱きつかれる。といっても、身体の暖かさや香りを感じて、素直に気持ち良いと感じられる。
「ちょっと幸せかも」
「良かった」
そうして、ちょっといちゃいちゃしながら昼食を食べ終えたのだった。
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