第80話 両親への報告
「そういえばさ、お互い親に報告した方がいいよな」
婚約者になった翌日の昼。結婚は、まだまだ先とはいえ、さすがに報告くらいしておいた方が良さそうだ。
「リュウ君のところは、「あれ、まだだったの?」なんて言いそう」
クスクスと笑いながら言うミユ。
「あー、どうだろ。こないだ、母さんにせっつかれたばかりだしな……」
「そういえば、そうだったね~」
あの時に、そういえば婚約について少し話したんだったな。
「あれから、1か月も経ってないんだよなあ」
「早いよね」
「ミユのところは、どうだ?」
あんまり心配なさそうだけど。
「うーん……大丈夫、かな」
「だよな」
そもそも、お隣さんになる時点でも特に反対はなかったと聞くし。
「じゃあ、まずはリュウ君からね」
「了解」
高遠家に電話する。しばらくして、
「あら、どうしたの?何かあったの?」
「いや、そうじゃないんだけど。ミユと婚約したから、報告にな」
どうにも改まって報告するとなると、落ち着かない。
「あらあら。ようやく、というわけね。お母さん、嬉しいわ」
ところで、と。
「プロポーズの言葉は何だったのかしら」
「それは勘弁してくれ。恥ずかしい」
「いいじゃないの~」
「それはそのうちな。父さんはいる?」
「今、仕事ででかけてるわよ」
そういえば、そうだった。
「じゃ、父さんにも伝えといてくれる?」
「わかったわ。あの人だから、何かグチグチ言いそうだけど」
「その辺は言いくるめといてくれ」
「わかったわ。それじゃ、お幸せに。年末は、帰ってくるでしょ?」
「ああ、たぶん、な」
「じゃあ、その時に、ちゃんとお祝いしましょう」
「むずがゆいんだけど。頼む」
母さんは終始嬉しそうだった。まあ、婚約を焚き付けたのも母さんだしな。
「どうだった?」
電話を終えると、ミユがたずねてきた。
「何事もなく、あっさり。年末、お祝いするってさ」
「婚約者として、おじさんとおばさんに挨拶……かな?」
「まあ、そんなところだろうな」
「ちょっと、楽しみだね」
婚約者として、俺の両親に挨拶をする様子を想像でもしているんだろうか。
「で、ミユは?」
「私のところも似たような感じ。年末に顔見せに来なさいって」
「じゃあ、そっちは、俺が挨拶する側か」
「お母さん、早く孫の顔がみたいなんて言ってたけど、気にしないでね」
「結婚はともかく、そっちはまだ先だよなあ」
結婚は、籍を入れるだけならなんとでもなるけど、出産はそうは行かない。大学生で、となると、ミユにも負担だろうし、俺も父親になる準備はできていない。
「あ、そうそう。俊さんや都ちゃんにも報告しない?」
「まあ、俊さんには特にお世話になってるしな」
ラインのチャットで、婚約のことを知らせることにした俺たち。
【お二人とも、おめでとうございます。式には呼んでくださいね?】
とは都。
【おお、それはめでたい。今度何か奢ってやろう】
とは俊さん。
「なんか、こうして皆に報告すると、実感が湧いてくるよ」
頬に手を当てて、なんとも嬉しそうにしてやがる。
「せっかくだし、今日は奮発して、ちょっといいところ行かないか?」
豪華レストランとまでは行かないけど、せっかくだし、ちょっと美味しいものでも食べたい気がしてきた。
「リュウ君の奢り?」
「今日くらいはな」
「やった。じゃあ、廻らないお寿司ね」
「おいおい。ちょっとそれは……」
「冗談だよ。廻る方でも、十分」
「じゃあ、ちょっと高級な回転寿司でも行くか」
というわけで、報告はあっさり終わったけど、皆が祝福してくれて何よりだ。
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